アジア映画

タレンタイム@東京国際映画祭

う、人生で必要な知恵は宝塚以外からも学んでいるのだ。
ということで、久しぶりの「アジア映画」。
もう閉幕してしまいましたが、第22回東京国際映画祭より。

「タレンタイム」(2009年 マレーシア)
監督:ヤスミン・アフマド

東京国際映画祭サイトの解説はこちら

「タレンタイム」は、今年の7月に急死したヤスミン・アフマド監督の最後の長編。
民族を超える愛、赦し、愛する人の死など、
今までのヤスミン・アフマド作品のテーマが全部入っている感じ。
(……と言いつつ、実は私「タレンタイム」を含め3作しか見ていないけど……)
中でも、一人息子を残し死んでゆく母親(この女優が肝っ玉母さん系でいい!)のエピソードが監督とダブる。

ストーリーは、一応青春群像風。
タレンタイムという発表会というかコンテストに出ることになった
高校生がオーディションから本選までの間に
人生のさまざまな試練を経験していく……というもの。
中心になるのはタレンタイムに出る高校生女1人男3人とその家族たち。
彼らが経験するのは、民族を越える恋、友情と嫉妬、家族の死、などなど、
で、ベタと言えばベタな話。

でも、そこにユーモアと、限りない人間賛歌があるんですよね……。

もう号泣でした。必ずしも号泣イコール名作ではないけれど(号泣しつつ、
ちっ、泣かせツボは抑えているけど、ちょっと安易じゃね? という作品もありますよ。一応)これは、名作、わたし的には、東京国際映画祭ベストワンですね。

去年見ていなかった、前作、「ムアラフ」を今年見ることができたのですが、
「ムアラフ」もすばらしい作品だと思うけれど、
テーマの重要な部分である「赦し」の宗教的な側面が、
ややとっつきにくいのは確かで、その点では、
この「タレンタイム」のほうが作品の幅が広いと言えそう。

いや、「ムアラフ」も本当に魅力的な作品で、
ある意味、より意欲的なのかもしれないけれど。

ヤスミン映画のすばらしいところを一つ、
それは出てくる女性がマトモなところ。
今作品はいつものオーキッドちゃんが主人公ではなく、
ヒロインの比重はそれほど高くないのですが、
ヒロイン以外でも、モダンで教育もあって、古い慣習に縛られないヒロインの母親
(この母親がヤスミン本人に一番近い存在かな)、
死が近いにも関わらずユーモアを失わない、マレー系の男の子のお母さん、
など女性の登場人物がすごく魅力的に描かれている。
ヒロインのボーイフレンド(彼がインド系モスリムで、ここに人種の壁を越える恋が描かれる)のお母さんも重要な役だし……。
いや、男性も存在感がないわけではないし(というか、高校生群像のうち、
ヒロイン以外の3人は男の子ですから、男子比重は結構高い)
子供も大人もいい味出しているんですが。

ヤスミンの新作がもうこれ以上見られないことが本当に残念。
準備中だった作品「わすれなぐさ」はヤスミンの祖母(日本人)がモデルの作品だったということで、これまでの作品とはまた違った彼女の面が見られたのかもしれないと思うにつけ……。

全作品上映の機会を熱望。

ここで、いきなりアン・ホイと比べるのは唐突ですが、
同じアジアの女性の映画監督でも、
私はアン・ホイよりだんぜんヤスミン派なんだなー。

ヤスミンの作品は多民族国家マレーシアに深く根ざした映画であることは
違いないんだけど、同時に
それを越えた普遍的なものがあり、宗教とか民族の状況は違っても、
「これは私たちの(同時代の)物語である」と思える=共感できるんです。
アン・ホイの描く香港は、どっちかと言えば、マレーシアよりは
今の日本に近い社会なのかもしれないけれど、
距離を感じるというか……。うーむ。
問題へのアプローチの仕方の違いなんでしょうね。
これについてはまた。

最後に、状況は違ってもじゅうぶん共感できる、とはいえ、映画を観ると
マレーシアの社会状況について、ヤスミンについて、
もっと知りたくなってしまうわけですが、
「ジャカルタ深読み日記」が大変参考になりました。感謝。
「タレンタイム」で死にゆく肝っ玉母さんを演じた女優さんが実際に
ガンで闘病中……という話が紹介されていたり。

<おまけ>
だめだ……。映画の話久しぶりなせいもあり、何度も書き直しちゃって時間が……。
次は、「キングコングを持ち上げる」だ!と予告して自分にプレッシャーを。

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「ヘルプ・ミー・エロス」@フィルメックス

「ヘルプ・ミー・エロス」(2007年 台湾)

監督:李康生
出演:李康生ほか

 蔡明亮プロデュース、李康生監督作品。長編2作目ということだけど、彼の作品は、私の中では蔡明亮監督作品みたいなもん、と位置づけられている、ので、感想もそういう流れでのものになる。
 最近の蔡明亮作品や李康生の「迷子」(不見)に比べると、意外に内容が暗すぎもせず、ぶっ飛んでもいなかったかな、と。「命の電話」とか「ビンロウ売り」とか割と分かりやすい設定がなされていたし……。と言いつつ、一番印象深かったのは、上映後に行われた李康生(1人で登場)のティーチイン。
 彼のイメージと違い、結構社会派で、かつ、説明好きということが判明した。
 映画監督って、なんでも説明しちゃう理論派?と、「それは観客の皆さんに任せます」とすげない、「映画だけで勝負」派の2つにハッキリ分かれると思うんですよね。
 今まで、何度か彼の出席するティーチインを見てきたけど、彼はそれほど、雄弁という印象がなかったので、あまりしゃべらないかな、と思っていたら、けっこう理論派だったのですよ。
 映画のラストシーンに対し「こういう解釈もある。こういうのも可能」と2パターンか3パターンの解説していたし、「大麻を吸ってセックスするシーンがあったが、あのときは本当に大麻を吸って、本当にセックスしていたのか」という楽しい質問にも、うまく答えていたのにはちょっとびっくり。ちなみに答えは、「私は一度だけ(大麻が合法の)ロッテルダムで吸ったことがある。それ以来吸ったことはない。大麻を吸ったら犯罪だ。ただ、吸ったことがあったからこそ、あのようなシーンが撮れたと思う。皆さんは決して吸わないでください」(大意)。
 あと、「ソーセージとか魚(うなぎ?)とかニョロニョロするものがよく出ていたが」という質問にも、一応、「セックスの象徴です」といようなことは言ってあげるんだけど、その前に「もうあなたは答えをお持ちと思いますが」というような前振りをしたりして、これまた上手いなーという感じだった。
 映画の最後に空から白い紙が降ってくるのだが、これが(はずれ)宝くじだと質問に答えていたが、このへんが地元の人だとわかり易いのかな、などと思ったりした。いや確かにその少し前にシャオカンは宝くじを買っているのだけど……私は「株券か?」などと思っていたし(あ、株券はもう彼のものじゃないのかな?)。そういう点でこの種の映画ってちょっとハードルが高い気がする。いや、私の理解力の問題と言われればそれまでだけど。
 ティーチインの話に戻ると、今回は保護者ナシの登場だったけど、けっこうしっかりしているじゃん、というのが私の感想。どうも、蔡明亮の昔の映画の若かった彼のイメージが強いのかな……。ごめん。シャオカン!

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「出エジプト記」「帰郷」@東京国際

「出エジプト記」(2007年 香港)
監督:パン・ホーチョン
出演:サイモン・ヤム

 監督の人気にびっくり。日本で一作も劇場公開がない、というのは言われてみて、「確かに」と気づく。「イザベラ」なんかよかったのにね(これが一般公開に一番近かったと思うんだけど、違うかな?)。日本では年に一度、東京国際映画祭でしか見られない、風物詩のようになってしまっているぞ……。まあ、それもいいかもしれない。監督としてはビジネスになってほしいだろうけど。
 さて、この映画は、監督が子どもの頃、「どうして女の子はトイレに一緒に行くんだろう」と不思議に思っていたことに発想を得ているそうで、そう聞くと面白いけど、その面白さがあまり映画には出ていなくって、いま一つ。いや、サイモン・ヤムの中年男はよかったです。適度にかっこよく、適度に冴えないところが。

「帰郷」(2007年 中国)
監督:チャン・ヤン
出演:チャオ・ベンシャン ホン・チイウェン

「スパイシー・ラブ・スープ」で中国の都市生活者の右往左往ををユーモア交えて描き、「新しい中国映画の登場だ」と思わせてくれたチャン・ヤン監督。それに続く「心の湯」「胡同のひまわり」がなんだかジジくさくなっていて、「これが若い監督の撮る作品か!?」と私的には文句が出ていたところ。
 この作品は、悲惨な話のはずなのに、ユーモアたっぷりで、「胡同」よりはずっとよかった。やっぱりチャン・ヤンはうまい。けど、「寅さん」みたいな映画でした。面白い、けど、ちょっとローカルすぎ&破綻なさすぎなのでは? いや、本当のローカルである中国人が見たらどう思うかわからないけど、非常にうまく作られている分、オドロキがないというか……。もうちょっと破綻しているというかヒリヒリしているようなところが欲しかったなあ……。泣かせるシーンもコッテリ作ってあってあざとかったし。いや、泣かせていただきましたけどね。
 そんななか、一番のヒットは、胡軍でしょうか。意外にも、いい兄ちゃん役でした。ほかにも場面場面にスターが登場していた模様。私がはっきりわかったのは、夏雨ぐらいでしたが。

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「遠い道のり」@東京国際

東京国際映画祭-1

「遠い道のり」(2007年 台湾)
監督:リン・チンチェ(林靖傑)
出演:グイ・ルンメイ(桂綸鎂)他

 このブログでアジア映画のこと書くのは久しぶりだな……と思ったら、「アジア映画カテゴリ」の最後の記述は、去年の東京国際映画祭! 一年ぶりですね。見てないわけではないんですが。
 初日の20日に見たのは、台湾映画「遠い道のり」のみ。監督と、出演のグイ・ルンメイとモー・ズーイーのティーチ・インがありました。席が遠かったのでグイ・ルンメイを見るためにオペラグラスを使った私。なんか気合十分? いえ、その前に宝塚見てたもんで。そう、この週末は宝塚と東京国際映画祭のダブルヘッダーで忙しいのだ……。

 で、映画ですが、最近の台湾映画によくある「若者群像」系でした。グイ・ルンメイは個性的だし、全体に漂う「青い」感じが清々しいのですが、やや、もの足りない感じも。どうも台湾の若い監督の作風って似てないかしら? 基本的に私は「身の回り」映画、「青い」映画は好きなんですが、数が重なると、さすがに新鮮味が……。私が歳をとったせいもあるかも。若さの魅力だけで押すのはもういいや、というか(いえ、別に雑な作りというわけではないですよ)。どうも最近の台湾映画は作風が似ていて、監督は誰が誰だか区別がつかないような気がします。それほど沢山見ているわけじゃないけど。そういう意味で、同じ台湾と言っても、蔡明亮とかエドワード・ヤン(追悼…)とか初期の侯孝賢は個性的だったよなあ、と。比べるまでもないですが。
「遠い道のり」に戻ると、この映画は台湾東部の景色と自然の音が魅力的でした。とはいえ、海岸沿いを旅する話は、「アジア海洋映画祭イン幕張」で見た、「練習曲」がそうだったよな……(あれは自転車で台湾一周だけど)。 ああ、いけないいけない。
 でも、グイ・ルンメイのようなありがちな「美人」じゃない女優さんはぜひこれからも活躍してほしいものだと思いました。彼女を見出した「藍色夏恋」の監督はエライ。
 ちなみに、生グイ・ルンメイは(オペラグラスでも見ましたが、会場に入るときに、すれ違ったのだよ!)、さすがにというか当然ながら明らかに美人さんでした。映画だと、得がたい雰囲気はあるけど(褒めてます)、特に美人ってカテゴリーの人には見えないんですが。個性派女優を生で見ると普通に美人で驚くことってよくありますが、彼女もそうでした。

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「浜辺の女」(於東京国際)

東京国際映画祭-2

「父子」の感想しか書かないうちに東京国際映画祭は閉幕してしまった。私が今年映画祭で観た映画8本の中で一番よかったかな、と思うこの「父子」は最優秀アジア映画賞と最優秀芸術貢献賞を受賞しましたが、「父子」の次によかった、いやどっちが好きかといわれればこちらの方が好みかもしれないのはこの「浜辺の女」なのです。

「浜辺の女」(2006年 韓国)

監督:ホン・サンス
出演:コ・ヒョンジョン、キム・スンウ、キム・テウほか

 いつか、「韓国映画におけるダメ男映画の系譜―ホン・サンスとその継承者たち―」という文章を書いてみたい。それくらいホン・サンスに代表される韓国ダメ男映画は興味ある対象。
 ダメ男映画といっても、例えば、「男はつらいよ」というような映画と、ホン・サンスのダメ男映画は全然違う。ホン・サンスのダメ男映画は、決してお笑いではない。そして、ダメ男は実はけっこうイケメンのことが多い(これ重要)。筋はいろいろだが、だいたい、ダメダメだけどなぜか女にもてる男がだらだらとセックスし、ご飯を食べ、またセックスするだけでたいして大事件もおきない、全編を言いようのない「情けなさ」が覆う映画である。
 新作「浜辺の女」もこのダメ男映画の原則に当てはまっているけれど、ここ数年の彼の作品の中では(「気まぐれな唇」「女は男の未来だ」)、一番よかったのではないかと思う。それは、ひとえに、ヒロイン、コ・ヒョンジュンの存在のせいだ。以下つづく

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「父子」(於東京国際)

東京国際映画祭-1

釜山国際映画祭で見た映画について全然書かないうちに、東京国際映画祭が始まってしまいました。この前にも数本見たのですが、これは見たばかりの作品。

「父子」(2006年 香港)

監督:パトリック・タム
出演:アーロン・クォック、チャーリー・ヤンほか

 香港ニューウェーブの伝説の旗手、ウォン・カーウァイの師匠、17年ぶりの新作!!!!なのである。ついでに言うと、主演が香港アイドル四天王の1人アーロン・クォックというのも話題。
 上映会場には、監督と助演女優が現れて、舞台挨拶。しかし、空白の17年の間に大学で教鞭をとっていた監督は、「挨拶」のレベルを越えてしゃべるしゃべる。「上映前にこれ以上しゃべるのはやめてくれ……」と誰もが思ったあたりで、観客の皆さんの見方を強制するものではないとかなんとか言ってやっと終わる。いいなあ。この説明体質。そして始まった映画の冒頭にも監督の「お言葉」があり、苦笑。
 さて、映画だが、レベル的にはおそらく私が東京国際映画祭で見るアジア映画(っていうかアジア映画しか見ないのだよ)のなかでは、1、2を争う出来かな?と思わせる完成度。まあ、完成度低い作品が多いからねー。特に今年はそんな気も(後日追記:後半に見た作品はみなそれなりに完成度高かったです)。
 すごく古臭いわけでもなく、17年のブランクは感じない。私は画面の美しさが心地よかった。別にきれいな場所ではないし、ものすごくスタイリッシュにとっているわけでもない。しかし、彼らの家の壁の色合いとか、主人公がご飯を食べる安食堂の壁の緑のタイルの薄汚れ具合とか……。美しいのである。
 ちょっと気になったことと言えば、ここぞというときに流れる音楽がクラッシックっぽいもので、私はやや不満。ここでウォン・カーウァイだったら、ラテンとかもう少しポップなものにして盛り上げるだろうに……。その点では、ウォン・カーウァイの映画の方が商業的と言えそう。
 この脚本のもとになったのは、監督がマレーシアで教えていたときの教え子の課題だそうで(脚本にクレジットされていた人がそうなのか?)、プロデューサーは舞台を台湾とか大陸に変えては?と提案したけど、監督は応じなかったと。さらに、「私は、マレーシアのあの熱帯の風土(正確に何ていったか覚えてないのですが……)が好きだし。しかしこれはエキゾチズムではない」と付け加えていたけれど、確かに、あの映画が映し出す(作り出した?)南国マレーシアの風景・雰囲気は不思議な魅力があって、舞台を移したりしなくてよかったと思う。
 と、いろいろ褒めてしまったが、お話が好きかと言われると、正直ちょっと……。アーロン・クォックは熱演しているが、子どもに盗みまでさせるダメ親父の話はやはりどう見ても情けないし、そこから逃げ出す妻は妻で魅力がなくて……。最後も、「結局、離れ離れになって、みんな更正したんだね」というオチみたいで、なんというか、自己投影はできないし、カタルシスも得られない作品でしたね……。「私の個人的体験とは関係ない」というようなことを監督は言っていたけれど、なにか父権に対する強烈な思い入れがあるのかなーと思ってしまいました。

 映画は3時間近い大作。終わって、「これから長~いティーチインか??」と思ったら(監督客席で映画見てたし)、残念ながらなし。冷静に考えれば、映画が終わった時点で深夜の12時半。今日は遅いからティーチインはなし、代わりに舞台挨拶のみでね、ということだったのでしょうが、もったいない。パトリック・タムならすべて説明しつくしてくれたはずなのに。

 おまけ

 エンドクレジットにチン・ハイルー(「ドリアン・ドリアン」の)らしき名前を見かけ、「あれ、どこに出てた?」と思ったのですが、オフィシャルHPを見て、チャーリー・ヤンの店のママ?だったことを知る。全然わからなかった。
 ほかの女優についても言うと……
 チャーリー・ヤンはすっかり「幸薄い女」専門のようになってしまったようで(「香港国際警察」)。若かった頃(「天使の涙」とか)はもっとはつらつとした感じだったのに……。役があまりよくないせもあるけど、精彩を欠く感じ。しかし、幸薄い役は精彩を欠くぐらいがいいのか……。
 今まであまり作品を見たことがなかったのだが、よかったのが、ケリー・リン。

 さらに、キャストについて言えば、アーロンに2役やらせる意味があったのだろうか?

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「おばさんのポストモダン生活」(於釜山国際)

釜山国際映画祭-1

釜山国際映画祭行ってきました。とりあえず、東京国際でやる映画から感想書いてしまうか……。

「おばさんのポストモダン生活」(2006年 中国)

監督:アン・ホイ
出演:スーチン・ガオワー、チョウ・ユンファ、ヴィッキー・チャオほか

 アン・ホイの映画と言えば、思い出すのが、「玉観音」。ほとんど人のいない香港の映画館で見ました。彼女の名作というと、やっぱり「女人、四十」なのかしらん。昔から、名前はビッグだったけれど、いつもいま一つの作品ばかり見ているような気がする……。特に私が香港映画を見出した97年頃以降だと、「??」な作品ばかりだったかも。「千言萬語」とか、「玻璃の城」とか。そうそう、「半生縁」なんて作品も香港に行ったときに見た記憶が……。
 しかし、今回の大陸(上海)を舞台にしたこの作品。彼女の作品にしてはけっこうよかったです。おばさんの甥っ子ってのが語り手っぽく出てくるところが(まあ彼のからみ方があまりに中途半端で成功しているとは思えないけれど)、旧作「上海暇期」に通じるものがありますね。
 大陸で撮るのが彼女にふさわしいとは思えないけど(彼女って香港インテリの典型のようなところもあるから、私としては、香港を撮り続けてほしい)、都会のコメディとしては割に成功していると思う。
 しかし、それよりもなによりも、この映画は、チョウ・ユンファが帰ってきたこと、でしょう。これは、チョウ・ユンファという俳優が香港人が監督の映画(しかも、彼はアン・ホイの代表作の一つ、「傾城之恋」にも出ているし)に出ているというだけでなく、かつての彼の十八番だった、人のいいあんちゃんのユンファが帰ってきたという点だろう。
 はっきりいって、彼のひょうきんぶりは、リアリズム入っている“現代上海の庶民の生活”シーンでは、完全に浮いています。それって映画のアンサンブルとしてどう? とも思いますが、でも、香港映画ファンとしてはうれしいですよね……。この映画はそれにつきるって感じ。とにかく、ヨンファを見るだけでも価値があります!!

(追記)
 確かに浮いていたけど、ヨンファとスーチン・ガオワー(「フルムーン・イン・ニューヨーク」に出てましたね。スタンリー・クワンの)が京劇ごっこをするところは泣けた……。あの映画のハイライトシーンじゃないかと。
 とはいえ、そんな京劇ごっこは一瞬の甘い夢……で、結局帰るのは家族のとこなのか……と、ちょっとがっかりする結末でした(貯金も希望?も失った「おばさん」が帰る鞍山はアン・ホイが生まれた町ですね。ただし彼女は幼少時にマカオをへて香港へ移住)。「負け犬」の末路を見るようで辛かったです。彼女は夫と子どもがいるだけマシだけど。

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「SAYURI」っていったい……。

「SAYURI」
監督:ロブ・マーシャル
出演:チャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、渡辺謙ほか

 久々の映画。と言っても、アジア映画と言っていいのか……。ハリウッド映画だからね。もちろん、出演者はアジア系ばかり。「さゆり」役のチャン・ツィイー、先輩芸者役の、コン・リー、ミシェル・ヨーあたりが(日本人以外では)主だったところ。
 まあ、これは勉強だ、と思って見に行ったんで、期待はしていなかったが、金と時間の無駄」の一言に尽きる。まあ、もともと日本人のための映画じゃないし。あれを期待して見たら、日本人だったら「金返せ」と言いたくなるんじゃないかな。いや、外人でも面白いのかどうかかなり疑問。まあ、途中の花街のセットとか、確かに日本らしいんだけど、何か(撮りかたも?)が日本映画と違っていて、エキゾチックでちょっと面白かったですよ。そもそも、戦前の「芸者」「花街」って私にとっても、もう現実感なんかないので、意外に違和感は少なく、虚構として楽しめました。そう、日本人だから耐えられない、というシーンはそれほど沢山はなかったのです。そりゃ、「はなまち」と書かれたちょうちんとか、着物の着方とか変なところがあったし、やたらみんな髪を下ろしているのも幽霊みたいで??でした。特にコン・リー。
 途中までは、まあそれなりに見てました。でも、なんかどこかで読んだような話の展開だし、何か起きるのかと思ったら、別に何も起きず、最後は「あしながおじさん」で終わっちゃったけど、それでいいのか? みんな納得してんのか??と私は問いたい。
 あのラスト、「それで?」と問いかけたくなる……。

 俳優別
・チャン・ツィイー……もともと彼女はあまり好きじゃないけど、芸者は特に合ってなかったと思いました……。なんていうか、元気いっぱいなんだもん。ミシェル姐さんと一緒に扇持って踊っているシーンなんて、そのまま扇を武器に戦い出しそうでした。
・ミシェル・ヨー……どこへ言ってもミシェル・ヨーって感じで雰囲気は出ていた。メイクも普通だったし、もっとも変でなかった出演者の一人かも。しかし、なんだかひとり現代劇モード?で芝居の中ではやや浮いていたのでは?
・コン・リー……一番失敗しているのがこの人では? 監督ももてあまし気味か? たぶんあまり器用じゃないんだと思う。メイクに失敗しているのかあまりキレイに見えなかったし。いいのか。ナンバーワン芸者だったのに。ついでに言うと、ヘアスタイルと着物の着崩し方が一番変。

あとは、日本人の皆さん
・渡辺謙&役所広司……洋装のせいか、あまりおかしなことにもならず、日本人が見ても別にはずかしくないようなまっとうな役でよかったね、と言いたい。いまひとつはっきりしない役だけど、悪役じゃないし。

・桃井かおり……たぶん、この役はもっとおばあさんがやるはずだったんだろう。前半は、「もともとこうだったろう厳しい置屋のおかみ」だったけど、戦後、たくましく生きているところは、ちょっと桃井かおり仕様になっているのかな、と思いました。もともと脇役仕様であまりおいしくはない。でも、貴重な日本人女優メインキャストの一人をゲットできて、よかったですね。老けメークでがんばっていたけど、桃井かおりがハリウッドで有名だったら、ミシェル・ヨーの役ぐらいできたんじゃないかと思うのでちょっと残念。
・大後寿々花……SAYURIの子ども時代。中国系アメリカ人かなー、でも日本人っぽい顔だよねー日本人がすきそう、と思ったら、日本人でした。なかなかたれ目がかわいくて、かつチャン・ツィイーに似ていてよかったのでは。でも、成長してツィイーに変わったときに、「前のほうがかわいかった」と思ってしまったので実は問題かも。
・舞の海……一番びっくりした出演者。知らなかったもので。

なんというか、この映画の意義は、日本人俳優さんもハリウッドに知られてよかったね。これをきっかけに、別の映画に出られるといいね、ってところでしょうか。

「ゲイシャ映画なんて、アメリカでは好きに公開してもらっていいけど(エキゾチズムってそういうことですよね)、日本でロードショー公開しなくていいですから。ひっそりビデオぐらいがちょうどいいでしょ」と思っていたけど、そもそもアメリカ人など外国の皆さんには面白かったのでしょうか?この映画。


おまけ
そういえば、プレミアかなにかで、インタビューされた渡辺謙が、「日本」と思わず、マーシャル監督の作り上げた世界を見てください、というようなことを言っていて、「苦労しているなあ」と思ったけれど、別に苦しい言い訳じゃなくて、確かに御伽噺だから、それで、いいっか、という気もしますね。
というか、東洋とか日本はどうでもいいけど、話がそもそもつまらんぞ、マーシャル!

追記:基本的にセリフは英語、ってのは別にもういいけれど、ところどころ日本語が使われているのがナゾでした。「おかあさん」とか。あいさつとか。ナゼだ? 英語に訳しにくいところ?

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ジャ・ジャンクー

「世界」

監督:ジャ・ジャンクー
主演:趙濤、成泰■

 実は、今まで、ジャ・ジャンクーの作品って人が言うほどいいのか??と思っていたのです。今までと言っても見たことあるのは、「プラットホーム」と「青の稲妻」ですが。それが、今回は良かったですよ。ごめん、ジャ・ジャンクー、と言いたい。で、どこが今までと違うのか、と考えてみました。
 私が彼の映画がいまひとつだったのは、あまりにも冴えない普通の田舎モノの日常を劇にして見せられてもね……というところにあったのです。そりゃ、田舎でも、景色がきれいとか、すごく昔だとかいうのなら、まだいいのでしょうが、かなり現代に近い中国の埃っぽい街とそこに暮らす若者の悶々とした思いを見せられても……。
 いや、田舎の珍しい風景で観客の注意をひく、という手法もあるとは思いますが、それって、外国で受ける中国映画の典型で、最近ではモンゴルロケの映画などで顕著と思われ、個人的にはもうけっこう……。
 しかし、今作は違いましたね。主人公2人が、田舎者とはいえ、何年か北京に暮らしており、今出てきたばかりのおのぼりさんとは違う、一種、越境した人、というかボーダーにいる人なのです。田舎の人と都市生活者の両方の視点でものを見ているから、アジアの東の端の一都市に住む私としても、共感を持てる部分があるのです。ヒロインの小桃を演じる趙濤も、前作、前々作よりは、現代化していて自我がはっきり見えてきていてよかったし(それにしても、ヒロインのババシャツ、股引姿を見せてくれるとは、さすがジャ・ジャンクー)、太生(タイシュン)役の成泰■のほうは、ジャ・ジャンクー映画の主人公にしては画期的なほど、面構えがよい“田舎者”で満足。やっぱりあれぐらいいい顔(イケメンという意味ではない。主人公らしい面構えといいましょうか。まあ、彼はカッコよく撮ればけっこうイケメンだと思うけど)していないとね、映画の登場人物は。余談ですが、成泰■、「海鮮」の警官役だったとは気づきませんでした。
 この作品には、太生の後輩として、北京に出てきたばかりの出稼ぎ労働者(打工)やその出稼ぎの若者が死んでその処理?で北京に出てきた家族が登場するのだけれど、「プラットホーム」や「青の稲妻」は彼ら、つまりまだ“越境”していない田舎者の映画だったんだよなーと気づきました。それを象徴するように、「プラットホーム」の主人公を演じた王宏偉(小武ですね)は、この映画では、田舎から出てきたばかりの太生と同郷の男性(親戚だっけ?)の役でした。正直言うと、映画では彼とは気づかなかったのですが。←気づいてないことだらけ。
 もう一つ、この映画を面白くしているのは、「世界公園」という設定。このあり得ないけど存在している場所の面白さが、映画に彩を添えていると思う。実は、映画を見るまではもっとショボイ、時代錯誤的なテーマパークだと思っていたのですが、意外と近代的で(ショーもアナクロではなくそれなりに洗練?されてました)、びっくり。この場所を舞台に選んだジャ・ジャンクーの慧眼に拍手。

 というわけで、ジャ・ジャンクーを見直しちゃった「世界」。一番残念だったのは、ときどき挿入されるナゾのアニメシーンです。あれ、いらないと思うが……。
 最後にもう一つ、ロシア女性のエピソードは確かに映画にバリエーションをつけていていいんだけど、できすぎでちょっとウソっぽかったです。もう少し仲良くなる過程を出してほしかった。

追記:監督は、どれぐらい意図的なのか知らないが、観客に対して、かなり親切になってきているみたい。けっこういろんなエピソードを入れて、だれないようにしてくれている。画面も華やかだし。あくまで本人比ですが。

 

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「長恨歌」

東京国際映画祭「長恨歌」

 東京国際映画祭「アジアの風」オープニング作品、スタンリー・クワンの「長恨歌」だが、私が見たのは最終日。
 王安憶という人の小説が原作ということだが、上海を舞台に、歴史に翻弄される人々を描いた映画って何十回も観ている気がする。「宋家の三姉妹」「半生縁」……。あれ、意外と少ないかな。「花の影」はそんなに歴史が出てこなかったかしら。でも、「傾城の恋」も香港が主な舞台だけど、かなり時代背景が近いし……。とにかく既視感のある設定。
 監督が「上海人を理解することにより、発展によって似たような変化と遂げている街の住民である我々は、自分自身のことを知ることができるのだ」(<アジアの風>カタログより)と書いているように、香港人には特に自己投影しやすい設定なのかも。
 その監督によれば、この映画は上海という都市とサミー・チェン演じるチーヤオの映画なのだそうだ。うーん。私はこのヒロイン、サミー・チェンというキャスティングが納得いかなかったです。彼女、ミスコンで胡軍演じる国民党高官に一目ぼれされるほどのオーラがない……。胡軍が行方不明になったあとも、ダニエル・ウーのぼんぼんがまたまた一目ぼれするし、レオン・カーファイはいつも片思いでせっせと世話をやくし、最後は子どものような年齢の青年と……。と男性にはモテるのだが、正直、そこまでの魅力が感じられないのだ……。やはり、もう少し華がある女優じゃないと納得できないですー。
 しかも、彼女はただ運命に翻弄され(男にお世話になりつつ)ているようにしか見えなくてどうも魅力がないんですよね。いや、別にいやな女でもいいんですけど、キャラが立っていないというか。本当の主役は、1人の女性を見守り続けた語り手、レオン・カーファイでは、と思いました。
 サミー・チェンには恨みはないけど、キャスティングミスかなー。
 しゃれた都会派コメディーの主役が多かった彼女としては、新たなるチャレンジだったんでしょうが、やはり彼女には時代ものは無理だったのか?? 
 キャストの話はさておき、ウィリアム・チョンの美術は相変わらず美しく、いいんだけれど……。もう少し不健康な匂いがしてもよかったんじゃないかなーなどと思いましたが、そもそもスタンリー・クワンの作風ってそれほど倒錯したり、不健康だったりするわけじゃないんですよね。いや、耽美的なイメージがあったけど、よく考えてみたら。
 と、不満はいろいろありますが、もちろん、じゅうぶんエンターテインメントしているし、標準点はクリアしているのです。ただ、スタンリー・クワンの作品だから、けっこう期待値が高くなってしまうという。
 ティーチインのあとは、気さくにサインに応じるとても40代後半には見えない監督でした。
 ちなみに、私が一番すきなのは、「ホールド・ユー・タイト」だったりする……。

おまけ:台湾に渡ったのかと思ったら、ブラジルで大農場を経営していた胡軍演じる李主任。ブラジルの大地でランニング一枚で汗する胡軍を想像してしまった。似合いそう……。いや、農場主だからみずから汗することはないんでしょうが。

追記(11月11日):この映画の最大の問題を一言で言うと、サミー・チェンに「デカタンス」が感じられないことですね。それだけで十分。

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「浮気雲」(蔡明亮)

東京国際映画祭「浮気雲」

 監督、李康生、夜桜すもものティーチインあり。監督は、「今日の観客の皆さんはみんなシリアスな顔なのでちょっと驚いた」と言っていましたが、確かに、本当は笑ってみる映画なのでしょう(監督も楽しんでもらいたいと思っているんでしょう)。笑い声が少なかった理由の一つは、夜遅い上映ということもあって、割とおタクな観客が多かったからだと私はみた(私はいったいどうなのか……)。質問も、監督の映画は前から見ています、みたいな人が多かったし。俳優には質問しようとしないし(笑)。
 見終わってみると、オマヌケなミュージカルシーンに象徴されるように確かに笑える映画なんだろうけど、AVなんてあまり見ない私としては、どうも繰り返されるAV撮影シーンは笑えない……(監督は、新しい表現の道を開いてくれた、夜桜すももちゃんとともに、日本のAV業界にも感謝してました。おおお。感謝されています)。男性だったら笑えるのかも。
 それにしても、驚愕のラストシーンだったなあ。台湾随一のインテリ女優(と勝手に命名)、陳湘琪嬢にあんなことするなんて……。私は、この映画の殊勲賞は陳湘琪だと思う。美人女優があんな役やっていいのか……と。
 しかし、今まであまり女性にもてていなかった小康、今度はからみが多いのは仕事だとしても、ちゃんとヒロインとの情熱的なラブシーンもあり、よかったね。というか、女性とがっぷり組んだシーン満載?という意味では、人間同士の距離が今までの作品より近くなっていると思う。それにしても、小康、あの美しい陳湘琪にあんなことするんなんて……。おばさんはびっくりしたよ。出世したね……。

 監督にとっても、「ブレークスルーだ」(英語の通訳さんがそう訳していた)、「私にとって最も困難な作品でした」ということだから、かなりチャレンジングな作品だったようだ。新しい一歩を踏み出したのね。監督。確かに、今までの作品と登場人物のみならずさまざまな状況が連続しているとはいえ、テイストはかなり違う。静に対して動が多い。ここのところ作品がややワンパターンで飽きてきていたけど、それはこの作品には感じなかった。
 というわけで、これからどっちに行くのかちょっと楽しみな蔡監督でした。あと、万年すねた青年のようだった小康もさすがに老けてきていて、その成長ぶりをどう受けてとめていくのかも楽しみ……。
 そうそう、小康は、監督として名前が入っていたことを質問され(質問者はこう言っていたけど、私の記憶では、「蔡明亮 李康生 作品」となっていたような)、「実際僕は監督はしていない。台湾政府の補助金をもらうのに、蔡監督はマレーシア国籍で都合が悪かったので、台湾人の僕が名前を貸した」と名義貸しをばらしていました(笑)。
 最後に、監督、生日快楽!

李小康的blog(本当?)
http://diary.blog.webs-tv.net/lks
陳湘琪は大学の講師でもある。
http://education.tnua.edu.tw/teachers/personal/scchen.htm

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「細い目」

東京国際映画祭「細い目」

 マレーシア映画。多民族国家マレーシアの中国系の男の子とマレー系の女の子の恋物語。
 おもしろいのは、マレー系の女の子が、もともと香港映画好き、金城武好き、ジョン・ウー好きという設定。彼女が妙に広東語のスラングがうまかったり、ジョン・ウーのベストは「男たちの挽歌」、彼がハリウッド行ってからの作品はダメで、「トラボルタよりやっぱチョウ・ユンファよねー」、と言うところなど、香港映画好きには笑えるシーン満載。さらに、中国人の男の子の本名が、李小龍。この監督も相当の香港映画好きと見た。
 さらに、この彼女が、ただかわいいだけの女の子ではなく、口も達者なしっかりした子であるところが、ありがちなラブストーリーと違っていて秀逸、と思っていたら、映画を見たあとで、監督が女性ということに気づく。自立する女の子を描いていたのには納得。しかし、香港映画ファンとは……意外。つまり、香港映画好き、ジョン・ウー好きのマレー系の女の子はそのまんま監督ってこと!? いや男性ならじゅうぶんあり得るとは思ったんですけどね。ブルース・リーに、ジョン・ウーは。
 いや、この作品はユーモアもあり、現代的だし、ついでに言えばおタク心もくすぐるし……と、途中まではかなり評価高かったんだけど(いや、今でも高い方ではあるが)、男の子と現地「黒社会」との関わりのあたりから話がおかしくなってきて、女の子の家族の方は、妙にものわかりよく味方になっちゃうし、あれれれ、と思っていたら、ラストがあっけなくて、納得いかず……。そもそも黒社会が余計だったと思う。もしかして、香港映画ファンとして、広東系の黒社会は絶対描きたかったのかしら……。もっとフツーのハートウォーミングなラブストーリーでよかったと思うなあ。
 最後に、2人の間は英語、そのほか状況によって、マレー語、広東語、福建語などなどが飛び交う様はかなりスリリング、かつ、この多言語状況をうまーく映画で利用している。まあ、母語は違うけど、それでも英語などを使ってなんとか話が通じているのがこの映画だけれど、言葉は通じず、しかし、ウルトラ解決技の筆談で愛まで語っちゃうのが、昨日見た、「月光の下、我思う」だったわけで……(外省人なので台湾語ができない娘の恋人と、内省人で日本の植民地時代の教育しか受けていないので北京語のできない母)、対照的ですね。

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「月光の下、我思う」

東京国際映画祭「月光の下、我思う」

 今年の東京国際映画祭の「アジアパノラマ」では、台湾映画の特集が組まれている。この林正盛監督の作品もその一つ。
 1960年代の台東が舞台。どこか懐かしい(田舎町の景色を目にして、「ああ、やっぱり台湾のほうがほっとするかも」と思ってしまいました。この日は、3本見たけど、「中国」「韓国」「台湾」だったわけで、中国映画って、よくいうとスケールが大きい、というか、大味、なんですよね。歴史のうずに巻き込まれるのもスケールが違う。10億人ほど一緒ですからね。
 その点、台湾って何かちんまりしていて、日本に近いなーと。ま、この映画の場合、それだけじゃなくて、楊貴媚演じる母親は日本暮らしの経験もあって、すんでいる家も障子があってちょっと日本式だし、今でも日常生活に日本語がぽんぽん使われている、という設定なんですけどね。この母と娘と日常がゆったりゆったり描かれていくのだが、恋人から娘へのラブレターを母が開封して読むようになってから、話が思ってもみなかった方向に行ってしまうのでした。最後は、母、娘、恋人の3人が3人とも恋を失って、呆然とし、しかし、母はそれを乗り越え(飲み込み?)、草むしりを始めるところで終わるんですな(なんのこっちゃ)。
 私はこの展開があまりにも唐突で、もう少しそうなりそうな予感を見せて欲しかったような気がしてしまいました。でも、これは、心の奥深くに眠っていた情熱が突然噴出してくることが誰でもある、ってな話なのでしょうか。
 原作は李昴の小説だそうで、小説ならありかな、という気もするけれど、映画はもう少し、そこにはっきり分かる伏線をひいてほしかった気がします。
 ノスタルジー溢れる映画で、過ちが起きると恋人はうろたえて逃げてしまうし、娘はただわけもわからず泣くだけ、という今はなきモラルのもと人々が生きていたころのお話。
 楊貴媚も不思議な女優さんです。オールドミスの役というイメージがあったので、大きな娘のいる母親役には最初びっくりしましたが、最後はやはりまだまだ現役ってことでした。らしいなあ。でも、彼女って女優としてかなり不思議な存在だと思う。あんな女優さん日本にいる?

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「恋愛は狂気の沙汰だ」

東京国際映画祭「恋愛は狂気の沙汰だ」

 夫が働かないため、テレクラでバイトしていた主婦が、夫と別れ、子どもたちとの生活のためにホステスになってたくましく生きていく……。という30年前の演歌のようなストーリー。で、彼女が1人で涙を流すシーンに流れる曲が古くさーくて、まさに30年ぐらい前の感じ。こんな文字にすると古臭いベタベタな話なんだが、ちゃんとファンタジーとして成立している。 私なんて、彼女が好きになるやさしいお客(結局最後には彼もタダの男ってことになって彼女が別れを通告するのだが)が、彼女に「これからは友達(チング)になろう」と言ったときは、涙がツーと流れてきてしまいましたよ。完全に彼女に感情移入してしまっていたなあ。
 主人公が一応、自立した女性に描かれているのは30年前との違いかしら。あと、彼女のボスや同僚のホステスたちがとてもキップのいい女に描かれているところがよろし。もちろん、出てくる男はほとんどどうしようもないヤツばかり。実はこれ、究極のフェミニズム映画かも。

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「ドジョウも魚である」

東京国際映画祭「ドジョウも魚である」

 秋は忙しい。釜山国際映画祭の感想を書かずにいるうちに、東京国際が始まってしまった。私の一本目は、コンペティションの「ドジョウも魚である」。
 私はアジア映画の中では、実は中国映画はそれほど好きではない。で、特に好きでない中国映画のパターンがいくつかあって、その一つは、田舎のぱっとしない庶民の日常が淡々と綴られていくもの。普通の人々の暮らしを見せられてもね、と思ってしまうのだ。あ、ついでにもっとキライなのは、きれいな風景と素朴な人々を出して「田舎の人は純情だ」みたいなやつ。しかも、一部の日本人にそういう「素朴な中国」の映画が人気なのも、勝手なノスタルジーみたいでいや。
 話を戻して、今回の作品は、舞台は現代の北京だけど、登場人物が、打工(出稼ぎ労働者)という極め付きの庶民。ということで、いちおうこじゃれた都市生活者のドラマが好きな私としては(笑)、あまり期待はしていなかったのだけど、これがなかなかよかった。
 出稼ぎ労働者同士で偶然にも同じ「ドジョウ」という名前を持つ男女(男は単身。女には娘2人)が北京の最下層で最初は反発しながらも擬似家族を作ってたくましく生きていく……というストーリー。
 よく考えられた映画だと思う。女が住み込みで働くお金持ちインテリの家庭を登場させているのが好対照だし、全体にメリハリをつけている。はっきり言って、しょぼしょぼの人ばかり出てくる映画なんだけれど、見ていてショボショボはしてこない。人物の描き方が丁寧で、どうみても田舎モノで美しくもない「ドジョウ」二人がちゃんと途中から魅力的な女と男に見えてくる。演出のたまものである。暗くしようと思えばいくらでも暗くできる話だし、事実、けっこう悲惨な現実だらけなのだけど、ユーモアも交えて明るく仕上げている。私はこういう最後は「人間っていいよな」と思えるような話に弱いのですよ。
 もちろん、出稼ぎ労働者という今の中国の象徴的な人々をメインに据えていることで時代性はばっちり(やはり時代性は重要でしょう)。そして、ドジョウというキーワードに結びつく、びちゃびちゃの工事現場、泥だらけになりながらのラブシーン。うーん、ほかにもいろいろあるんだろうけど、非常に計算されている気がするなあ。でも、本当は中国語のドジョウという言葉の意味、ニュアンスがわかるともっと違った意味が出てくるのかも。
 工事現場の昼食時間を上から撮っているカットが印象的。食事を配っているところを中心に物凄い数の人間が群がってわんわん言っている(あ、今気づいた。これもドジョウ?)。
 ちなみにワールドプレミア。

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私はヨン様のファンではない。

「四月の雪」

監督:ホ・ジノ
出演:ペ・ヨンジュン、ソン・イェジン

 私はヨン様ファンではありません。
 でも、ホ・ジノの「八月のクリスマス」と「春の日は過ぎゆく」はかなり好きで、韓国の監督では、キム・ギドクと同じくらいいつも期待しているのです……。
 で、今作は、どうだったかというと……。

 この映画は、芸術とマネーの幸福な結婚、になるはずの作品だったのでしょう。芸術家肌の監督は興行成績の見込めるスターの出演を得て予算を獲得し、テレビでの人気はあるけれど映画の代表作のない俳優は芸術作品に出たという箔をつける……。双方の利害が一致! キムタクがウォン・カーウァイの「2046」に出たときと似てますね。
 もちろんこのへんのいきさつはすべて私の勝手な推測ですが。
 その結果がどうだったかというと……。興行的にはいいのかもしれませんが、作品的にはいまひとつかな……と。ホ・ジノにしては。
 この「四月の雪」がヨン様以外の俳優だったら、という仮定はあまり意味がないように思うので、ヨン様ありきで考えてみると、最大の問題はヒロインの設定では? ヒロインがあまりに受身で、ただただ、運命に流されているだけなんですよね。主婦という設定でもいいけど、もっと葛藤とかドロドロしたものとか見せてほしいな、と。いや、ダンナが不倫相手と事故にあって重態でいろいろ大変だとは思いますが。例えば、別れのクライマックスのシーンも、彼女が、以前2人で入った喫茶店から、ヨン様の泊まるモーテルの部屋を覗いて1人涙する……ってあまりにショボくありませんか……。もう少し盛り上げてほしかった……。
 彼女に全然感情移入できないから、相手役のヨン様のほうもなんだか、優柔不断な煮え切らない男、結局さびしかったから火遊びしただけ?と見えなくもない……。
 これでヨン様ファンはよかったのでしょうか? とにかくヒロインをもう少し魅力的につくってほしかったですね……。その点で演出だけでなく、ヒロインのキャスティングにも疑問。あ、もしかして、ヨン様のギャラが高すぎて他に回らなかったのかな……(失礼)。
(追記:ソン・イェジンって「ラブストーリー」のヒロインだったんですね。あの映画かなり好きだったのですが、忘れていた……。それは失礼しました。でもあの映画では女子高生役だったしなあ……)
 ヨン様についても少し。めがねをとったシーンでよくわかったのですが、顔が幼いんですね(すみません。いままでちゃんと見たことなかったので)。でも、体がご存知ムキムキ。役者としてかなり特徴ある、というか使いづらそうな外見。彼は、映画の中ではコンサートなど舞台の照明監督という設定で、いつもラフな格好をしておまけに冬なので着膨れているのですが、これも彼の体形&童顔を目立たせないための苦肉の策ではないかと推測してしまったほど……(深読みしすぎ……)。というか、スーツとか着ても彼、普通のサラリーマンには見えないですよね……。このへんは監督もいろいろ苦労したのかな……なんて。あ、でも泣くシーンはなかなかよかったですよ。しかも2度も泣かせていたぞ。監督。
 で、最後に余談を。常に「私どうしたらいいの?」ってな不幸顔をしていて、髪はほつれ、ダサい服ばかり着せられているヒロイン、ソン・イェジン嬢、顔は幼いのですが、脱ぐと胸が大きい(笑)。そのアンバランスがちょっと日本の美少女アニメみたい……(何を考えているのだ私は)。そこで気づいたのですが、実はこの主役カップル、顔は幼いが、体は立派(大人)という変な共通点があるんですよね……。これがキャスティングの決め手か??

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ペ・ドゥナ@「リンダ…」

 いつからか思い出せないくらい久しぶりに映画館で、日本映画。それは、もちろん、この「リンダ リンダ リンダ」に、韓国人留学生役でペ・ドゥナが出ているから。
 感想。やはり、歳は隠せない……。彼女が実年齢より若い高校生をやると聞いたときは、「子猫をお願い」とか「ほえる犬は噛まない」の印象が強かったので、平気じゃん、と思ったのですが、この2本ももう4~5年前の映画。やはり、ティーンと並ぶと年齢(撮影時24歳?)は歴然。ちょっと無理があったかな。
 かつ、ペ・ドゥナファンとしては、彼女らしいすっとんきょうなところが見られなかったのが、ちょっと残念。まあ、ストレンジャーというか新参者の留学生という役だからしょうがないのだが。カラオケとか、夜の体育館で、メンバー紹介をするシーンとか楽しいシーンはあったけどね。両方とも1人のシーンだ。男の子に告白されるのはちょっと蛇足と感じたが。
 バンドの他の女の子たちもみんなひたむきな感じでよかった。香椎由宇はずば抜けて美しい。だけど、そういうびっくりするような美人って、実は学校に1人ぐらいはいると思うので全然OK。制服の着崩しかたも決まっていた。いかにも、軽音楽部にいそうなちょっととんがったお姉さん、って感じ。他のメンバーもそれぞれ、「いるよね。こういう子」というリアルな感じがあった(うち、関根史織嬢はホントーのべーシストだったけど)。
 というわけで、女の子映画として見ても、けっこうよかったと思います。元女の子としては。実は、この映画を見た翌日、「スイング・ガールズ」のDVD借りたのだが、私はダンゼン「リンダ リンダ リンダ」だな。

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「同い年の家庭教師」スカパー

「同い年の家庭教師」スカパー

監督:キム・ギョンヒョン
出演:クォン・サンウ、キム・ハヌル

 韓流・シネマフェスティバルで上映した映画をスカパーでやっている。PPVですが、安いし、ビデオのように借りたり返したりする手間もはぶけてありがたい。ま、いくつか特別作品があって視聴料が高く設定されている。この「同い年の家庭教師」もそうで、1300円。
 実は、韓流ドラマはほとんど見ていないので、「天国の階段」でのクォン・サンウ人気は知ってはいても、実感はなく、映画も観たことなかったので、たぶん初クォン・サンウ。
 で、どうだったかというと……。
 うーん、体がいいことはよくわかりました。ちょっとヌーボーとしたところに魅力があるのだろうか……。正直、なんで日本でも人気が出たのかはわかりませんでした。でも、あの役は本人の持ち味に合っていたと思います。もちろん、高校生には全く見えないのだが、それは、2年留年している、という設定でカバー。それにしても、韓国って番長とか不良とか出てくる学園モノ、ヤクザもの、大好きですよね。で、けっこう年のいった俳優に高校生のかっこうとかさせるのも好きな気がする……。
 私としては、抗争がメインコンテンツの不良学生もの、ヤクザものはもともとあまり好きではないので、そういう作品はもうおなかいっぱい。まあ、今回のは一応恋愛がメインコンテンツの不良学生モノだから許すが。
 相手はキム・ハヌル。ああいうキャラの若い女優って貴重だと思うけど、ついこのあいだ、「彼女を信じないでください」を見たばかりなので、ワンパターン演技がちょっと気になりました。本人のせいか監督のせいか。
 留年高校生クォン・サンウの留年した理由とかアメリカ留学中のできごとに何か秘密があってそれがストーリーとからんでくるのかと思ったけど、そこには特になにもなく拍子抜け。よくできているコメディーだけど、確かにロードショーする作品じゃないかも。とはいえ、「彼女を信じないでください」がロードショーでこっちが特別上映のみ(とはいえ、だいぶひっぱってたが)というのはややナゾ。つまり、クォン・サンウのほうが、「彼女を信じないでください」のオオカミ少年カン・ドンウォンより人気あると思うんですがそうでもないのかな。

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「海南雞飯」DVD

「海南雞飯」(ライス・ラプソディー)DVD

監督:畢國智(ケネス・ビィ)
出演:張艾嘉(シルビア・チャン)、甄文達(マーチン・ヤン)
2004年制作、香港=シンガポール合作?

 2004年の東京国際映画祭で「ライス・ラプソディー」として上映された作品(このときは残念ながらチケット買えず)。
 監督は、商業映画デビューの香港のケネス・ビィ。主演が台湾出身のシルビア・チャン、舞台はシンガポール。ついでにいうとエグゼクティブ・プロデューサー?(出品人)の1人がジャッキー・チェンというアジアンインターナショナル映画(ま、主に中華圏だが。音楽は日本から川崎真弘)。
 シルビア・チャンの映画はややぬるいところもあるけれど、女性がしっかり描かれているし、だいたい舞台が現代で登場人物も等身大、変に時代がかっていないところが好み。この映画もそのタイプ。それは彼女が製作顧問(!)だから、というところが大きいような気がするが、もしかしたら、監督自身もそういう傾向なのかもしれない。
 ストーリーをごくかいつまんで説明すると、シルビア演じる珍は女手ひとつで、3人の息子を育て、シンガポール名物海南チキンライスの店をきりもりしているのだが、悩みのたねは、上の2人の息子がゲイということ。3人目の息子だけはなんとか、と期待をかけるのだが……というお話。
 想像どおり、心あたたまる良作。しかし、最大の問題は、シルビアが、海南チキンライス屋の肝っ玉母さんに見えないところ。いくら海南チキンライス屋が繁盛して、いまやレストランという規模に拡張されていても。やっぱり彼女は都会的なインテリ女優だから、この設定には合わないんだなー。もっと迫力ある庶民的な女優じゃないと……。しかし、彼女の知名度および人脈および製作顧問としての貢献?あっての映画なんだろうから、難しいですね。
 まあ、でも、ここは思い切って、彼女は成功したレストランの経営者にして、料理人は別にいることにするか(この役がマーティン・ヤンか?)、なんか別のシンガポールらしい仕事(ってなんだ?)にしたらよかったかも。
 監督は香港人、シルビアは台湾人、もともと俳優ではなく、(アメリカやカナダの?)TVの料理ショーで有名なマーティン・ヤンは広東出身、と、メインの2人はシンガポール人ではないのだけれど、シルビアの息子3人はシンガポールから。この息子たち、悪くないんだけど、やや小粒感あり。
 ギャラが高いのか安いのか知らないけど、シルビア・チャンとかマーティン・ヤンとか特別出演のマギーQとかフランス人女優とかに使うお金があるんだったら、この息子役に香港か台湾のイケメンスターを1人まぜておけば、日本公開の可能性もあったんじゃないかなーと思いますが、どうでしょう? ちょっと残念。
 DVDにはメイキング?がついていて、そこでは、なぜかみんな英語でインタビューに答えている(もちろん字幕はつくが)。これを見ると、カナダ育ちの監督はもちろん、シルビアの英語もなまりがあまりない。そんな彼女も映画のなかでは、がんばって、シンガポールなまりの英語を話しているというわけ。
 言語の話でいえば、そもそも撮影現場では何語が使われていたんだろうか? マーティン・ヤンが最後のクッキングコンテストの会場でエキストラを笑わせているシーンがこのメイキングに入っていたけど、そこでは彼は広東語を使っていた。ってことは、スタジオ撮影は香港なのか? その続きだったか、監督とマーティンがちょっと話すシーンが映っていたが2人とも広東語を使っていた模様。想像するに、監督(香港生まれカナダ育ちらしい)とシルビアは英語、監督とシンガポール人俳優たちも英語、監督とマーティンは広東語?、そしてスタッフはけっこう香港人が多いのかも?? ちなみに、映画の中の役者たちの使用言語は英語(シングリッシュ)と北京語(国語・普通話)です。これが、相手によって使い分けているならわかりやすいのだが、そうでもなくて、同じ家族同士の会話でも両方使われていたりして、ルールは不明。
 ちなみに、監督のケネス・ビィーは往年の香港映画スター、金漢と凌波(といっても私は知らないのですが)の息子で、この両親がシルビア演じる珍に孫自慢をする知り合いの老夫婦役で特別出演しているのでした。このへんは香港人に受けるのかな? いや香港だけではない中華圏のオールド映画ファンにか?

 海南チキンライスは鶏好きにはたまらない料理です。鶏のスープで炊いたジャスミンライスがまたよい。前に、東京の某所のシンガポール料理屋のランチに海南チキンライスがあったので頼んだら、なんとライスが普通のご飯で、かなりがっかりしました。私が日本で一番好きなのは、麻布十番の海南鶏飯食堂のもの。

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「マラソン」

 久々のアジア映画。いや、実は、一本、韓国映画「彼女を信じないでください」を6月に見たんですが、あまり書くこともなかったので、なんとなくうやむやにしていました。
「マラソン」、自閉症の青年が42.195キロを完走するっていう、いかにも「泣かせ」で、あざとそうな作品。で、実際、泣かせていただきましたが、この設定にしては、あざとさは最小限で、かなり好感の持てる仕上がりでした。
 日本で公開される韓国映画も今じゃ玉石混交状態、というかかなり石多し、って感じですが(特にドラマで人気の出た俳優が出ているもの)、これはロードショーも納得の出来。
 主演のげじげじ眉毛がかわいいチョ・スンウ、「春香伝」と「ラブ・ストーリー」しか見たことないのですが、一応、二枚目俳優だったはずなのに、熱演で、すっかりソル・ギョング路線つまりダサい男を演じると、本当にダサく見える性格俳優になっているけど、いいのだろうか……。 このあとの作品でまた普通に二枚目やっていたらおもしろいけど。ちなみに、彼は熱演していたと思うけど、主人公がいつもと違うことをするようなキメのシーンでは、表情が一瞬素に帰る、というか、いつものチョ・スンウに帰るようで、おもしろかったです。「確か、本当はこんな顔だったよね」と気づかされました。それって、厳密に言えば、演技としては、失敗なのかもしれないけど。
 映画のなかでは、飲んだくれのコーチ(演じるイ・ギヨンは韓国の高橋克実とお呼びしたい)の存在が「母子のお涙頂戴劇」じゃない部分を担っていました。あれがなかったらちょっとしんどかったかも。個人的には、後半、もう少しコーチが母子にからんでほしかったですね。なんか家族が簡単に再生しちゃって、「えええ、ちょっと安易では?」と思いました。
 と、小さい文句はいろいろあるものの、基本的に、こういうさりげない作品いいですね。監督は長編第一作ということで、今後に期待したいです。

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「好大一對羊」(Two Great Sheep)-香港国際電影節

香港国際電影節 4月2日 その1
 中国映画。官僚制を風刺する作品ということで、それは確かに分かるのだが、ちょっと見ていてたるい感じがした。冗長というか。しかし、この映画は、途中からDVでの上映になってしまって、後半部分は画質が著しく劣化、で、字幕ボケ気味、という状態で見たので、ちょっと判断材料としてどうなのか、という面はあり。雲南省の田舎が舞台で、主なキャストは素人俳優だそうです。

 監督の劉浩は、「陳默和美婷」(陳默と美婷)という作品を2002年に撮っている。私はこの映画を去年?のこの映画祭?で観たんだけど、中国の都会(北京でしたよね)の底辺に生きる地方出身の男女の物語で、ぜんぜんかっこよくないし、おしゃれでもない話。前の日の「旅程」のところで書いた「中国映画贔屓の法則」によると、これはたとえ舞台が都会とはいえ、内容的に「田舎のリアルな映画」に激しく近い作品で、点が辛くなるはずなんだけど、これが意外によかったんですよね。二人の切なさが伝わってきたというか……。私にもピュアな心が残っているのかと思ってしまいました(笑)。

 そんな理由もあって、期待してみた作品だったのですが、うーん。官僚制批判はいいけれど、さしてドラマもないし、おじいさんと田舎の風景と羊ではなかなか映画はもたない、と思いました。ごめん、羊。
 あ、もちろん、例の法則に照らし合わせれば、これは間違いなく私があまり好きではない「田舎のリアルな話」です。

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「旅程」(passages)-香港国際電影節

香港国際電影節 4月1日 その2
 中国映画。カンヌ映画祭スペシャルメンションだそうです。
 この映画の話はあまりしない。
 私の大陸(中国ね)映画に対する嗜好には一つの傾向があって、それは、「田舎の普通の人々の生活をありのままに描いた作品に辛い」「都市の現代人群像(特にほのぼの系)に甘い」というものである。前者の代表は(ここで神をも恐れず言ってしまおう)、ジャ・ジャンクーの作品(あ、言っちゃった!)。後者の代表は……実はあまりないんですよね。これは台湾映画に多いと思いますが大陸は少ない。うーん。大陸だと、「スパイシー・ラブ・スープ」かな。ちなみにインディーズすぎて分かりにくい映画や、「ドロップアウトして疾走する若者群像」はあまり好きではないのですよ。
 で、この作品は前者の典型のような、地方の若者の苦い青春もの。ちょっと微笑ましいところもあったけど。
 まあ、好き嫌いは別として、こういう作品は誰のためのものなのでしょうか? 中国の人のためのものなのか。いや、ありのままのかっこよくない自分って見せられてもねえ……。じゃあ、外国人のためものものなのか??? ナゾ。
 この、私の中国映画の好みの法則には例外もありまして、その話は後ほど。 

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「餃子:三更之一」-香港国際電影節

香港国際電影節 4月1日 その1
 香港国際映画祭行ってきました。で、最初に見たのがこの作品。監督はフルーツ・チャン。「Three2」のうちの一作ということで、「Three」と同様ホラーなんですね。フルーツ・チャンの怖がらせ方が、まあ、なんというかちょっと悪趣味。この映画を見たときに何人かの日本人と話した限りでは、フルーツ・チャンはその悪趣味(特に生理ネタ)で、悪評が高いようです。しかし、私はけっこう好き。変態監督好きか。いや変態じゃないと思うけど、ちょっと露悪的かな。まあ、生理ネタへには辟易していたけど、確か、「ハリウッド・ホンコン」ではなかったじゃん、と思ったけど、「ハリウッド・ホンコン」もあまり評判がよくなかった。
 で、この映画ですが、もともとホラーがあまり好きではない私ということもあるけど、その怖がらせ方が気持ちのよくないものなので、その点はちょっと……。あと、全体のテーマが陳腐、というところもややもの足りなくはありましたが、全体的には、やはり、うまいぞフルーツ・チャン。ツボは押さえたエンターテインメントになっていたと思う。
 俳優でナンバーワンはなんといっても、白霊!。ド派手スパッツの大陸から来た姐御。ぴったり。と思ったら香港アカデミー賞助演女優賞受賞してました。どうもあまり今までは知られていなかった人みたい。大陸では知られていたのかもしれませんが。
 あと、レオン・カーファイ。またまた、女ったらしの役。いつもこういう役ですね。いいのか、ラ・マンなのに。でも、香港人から見たら、ラ・マンの方が異常事態だったらしいけど。

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Sダイアリー(DVD)

 東京国際映画祭でも上映された韓国映画。英語字幕でDVD鑑賞。うーん。うまくつくってあるけど、かなり小品。テレビドラマのような小ささを感じた。と、言っても、いわゆる韓国ドラマみたいなベタベタのお話、という意味ではありません。現代的で、ユーモアも適度だけど、映画として見せるには何かが足りないような気がする。まず、ヒロインの魅力。あとは、男性をもう少しちゃんと描くとか。なんだろうなあ……。

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故郷の香り

「山の郵便配達」の監督、霍建起(フォ・ジェンチイ)、の作品。香川照之が口のきけない中国人役で登場。ということで、日本の会社も製作にかんでいるようですが、正直言って、「誰が観る映画なんだろう」。いえ、そんなに悪いわけじゃないのですが、ストーリーが今ひとつ盛り上がらず、景色もものすごくきれいというわけでもなく……。香川照之は熱演しているけど、田舎に残る者、教育のないもの象徴のような役のわりには、眼光するどすぎ。
「山の郵便配達」が好きだった日本人向けの映画なのだろうか(私は未見)。だとすると、「山の郵便配達」ファンはこれに満足したかな?

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大統領の理髪師

 韓国映画は、70~80年代を振り返るものが本当に多い。がっぷりとその時代にとりくんだ「ペパーミント・キャンディー」のような作品はもちろんだけど、恋愛映画でも「ラブ・ストーリー」「リメンバー・ミー」、それから、これは何映画というのだろうか「殺人の追憶」もそう。今の若い子が自分の親が若かった頃を知る、というスタンスもよくある。そういう映画が多いのは、韓国がここ2~30年の間に大きく変わったからでしょう。韓国の70~80年代(軍政期)は、夜間外出禁止令、学生運動、ベトナム派兵と時代の小道具が山ほどある……。そして、まだ語られていない描かれていないことも沢山ある、ということでしょうね。
 この作品を一言で言うと、一庶民である、大統領官邸のお膝元の床屋さん(もちろん、ソン・ガンホ様)の体験した「激動の軍政期」を寓話的に描いたもの。正直言って、この寓話が一部行き過ぎているのでは、と思うところもあったけど、全体としてはかなり成功していて、時代を反映しつつ、笑える作品になっていると思う。
(さっき、ものすごく長文で書いたのに、操作を間違えて消してしまったので今日はここまでで……)

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カンフーハッスル

1月10日鑑賞
キャッチコピー「ありえねー」。スポンサーもいろいろついて、製作費もたっぷりなんでしょうが、昔見た、B級香港映画の匂いがぷんぷん。ちゃんとキッチュにできていました。
活躍するスターがベテランカンフースターのおっさんおばさんばかりなのがすごかった。しかも、こぎれいにしようとか、年老いても見た目に気を使い、ということろがなく、かなりリアリズム入ってて、「えっ、そのすだれあたまで出ちゃうの?」って感じ。
しかし、香港映画って、なんだか過去の香港映画(の黄金期)へのオマージュばっかり撮っているような気がしますが、そうでもないかな。この映画は、もちろん、単独でもそれなりに面白いけど、過去との関わりで成立しているでしょ。過去の栄光にすがるのは寂しいなあ。

今回は有名美人女優にブスをやらせるというお決まりの演出がなかったかな(美人に恨みでもあるのかシンチー)。あの、長屋の威勢のいい女の子がそうなのかしら。
台詞は北京語広東語チャンポン。おそらく香港人は広東語をしゃべり、大陸出身者は北京語を話すということなんじゃないだろうか。シンチーは広東語を話し、武術家は人によりいろいろ。でも、これって、香港や大陸ではそれぞれ、広東語、北京語に吹き替えしてしまうのだろうか。と、すると、このバイリンガル(ってほどでもないが)版はどこの国のため? 中国語のわからない国向け?

と、なんだか本筋とは外れたことばかり書いてしましました。エンジョイしましたが、VCDで見るくらいが私にはちょうどよかったかも。どうもこのジャンルにはそんなに思い入れがないので(それを言ったら元も子もないが)。

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東京国際映画祭5日目「独り、待っている」

 映画祭の醍醐味を感じさせてくれる映画だった。終映後の監督と俳優たちのティーチインで、まず、「え、監督ってあの人だったの!」というオドロキがあり(よく解説を読んでいれば推測できたかもしれないけど……)、女優のコン・ベイビーの役柄そのままの飾らなさを見ることもできたし。なによりも、映画のラストのあの有名俳優の特別出演の裏話、しかも、特別出演はほかの出演者にすら秘密になっていたので、昨日の第1回上映(ワールドプレミア)で、それが明らかになって、中国でも報道された、なんて聞くと、司会の襟川クロ氏も言っていたけど、なんか得した気分。
 この映画は、「釜山国際映画祭」でワールドプレミアのはずだったのだけど、キャンセルになっていたので、この東京がワールドプレミア。確か、プログラムディレクターの暉峻創三さんが言っていたけど、「棚ボタ」ワールドプレミア。私たちも「棚ボタラッキー観客」でしたね。
 で、映画のほうはどうだったのか??
 うーん。楽しい映画だけど、話がやや当たり前のような。若者の楽しそうな雰囲気は伝わってくるが、それ以上のものがないかも。上にも書きましたが、なかでは、主人公の「友達」の女の子コン・ベイビーが一番光っていましたね。
 私的には、夏雨は主役としてどうなの?と思ってしまうのだけど、姜文が国民的スターの中国では、いいのかもしれない。正直言ってそのへんはナゾ。
 

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東京国際映画祭1日目「ユー・シュート、アイ・シュート」

 今日(10月23日)から東京国際映画祭が始まった。今年から六本木ヒルズがメイン会場に(渋谷も相変わらず使われているけど)。
 私の1本目は、「アジアの風」オープニング「ガガンボーイ」。ティーチインがあるはずだったのだけど、終わってもしばらく何も起きなかったので、あれ、中止になったのかな、と思っていたら、やっと始まった。これじゃあ、釜山映画祭より手際が悪いぞ、と思う。まあ、初日だから、と言うことはできますが。で、映画は、あまりにもキッチュすぎて私にはちょっと……。
 ヒットだったのが、2本目の「ユー・シュート、アイ・シュート」。これは、香港映画ファンはもちろん、そうでない人も楽しめる快作。「香港映画名物『追加撮影』だ!」なんてセリフ(正確ではありませんが)、ファンは爆笑。監督の新作「ビヨンド・アワ・ケン」がかなり楽しみになってきました。あと、小さなことですが、この映画、日本人ポルノ女優阿部美智子という女の子が出てくるのですが(出番は少ないがいちおうヒロイン? 今ネットで検索したら、演じている樋口明日香嬢は「恋戦、沖縄」にも出ていたとか)、彼女の存在は、「外国映画の中の日本人」としては、かなりまともなものだったと思う。ちゃんと魅力的なキャラになっていたし、日本語のセリフも割ときちんとしていた。まあ、「日本人が香港でポルノ女優をしているという設定そのものがいかがなものか」とか言う人にはダメでしょうが。全体から見れば脇の話ですが、ちょっと気になったもので。

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