役がたくさんある!@君を愛してる
東京宝塚劇場雪組「君を愛してる」「ミロワール」 -1
プログラムによると、木村信司氏は「これまでの作品をすべて忘れ、デビュー以前に立ち戻って自分の仕事をみつめてみたい」んだそうです。この作品で。
私は、「王家に捧ぐ歌」からしか知らないけれど、確かに、この作品は、今まで私が見た木村作品とは違っていた。これまでの不満ポイントがかなり解消されている。
私個人の思う木村作品の不満ポイントとは、「かなり飛躍した政治的・思想的な主義主張をいきなり押し付けてくる」ことと、「役が少ない。主な役以外はみな群衆」の2つだった。
しかし、この作品は、独りよがりの主義主張の押し付けもなかったし(一部に「結婚観」の押し付けが不快と書かれていたけど、私はそれほど気になりませんでした。あのような御伽噺の世界では、「結婚が善」でもまあいいんじゃないかと思うので)、画期的だったのは、下級生の役にもいくつかのグループがあったことです。サーカス団員、芸術家グループ、レヴューの踊り子たち……。
過去の作品にあった、耳をふさぎたくなるような不快な台詞もなく、変な後味の悪さが残ることもなかったのだけど、その代わり、「黒蜥蜴」の春野寿美礼の銀橋歌とか、黒蜥蜴と明智のカーチェイス?のシーンとか、「スサノオ」のミズの「欲しいものを言ってごらん」とか、「問題は多々あるけど、ここはイイ」みたいな瞬間はなかったかもしれない……。まあ、そういう「いい」シーンがすべての木村作品にあったというわけではないけれど。
相変わらずよかったのは、美術。パリの街とかサーカスなので、背景などは割と普通に作っているけど、絵のタッチが安っぽくないし、サーカスの紹介のところの装置など、オシャレ。さすが。
肝心の話の筋については、まあ、いま一つ盛り上がりに欠けるけど、いいかな、と。ただ、サーカス、貴族社会の話に比べて、芸術家仲間の話があまりうまく機能していなかったような……。ステレオタイプかもしれないけど、家庭円満の象徴を、家を飛び出して前衛芸術家になった貴族の弟にやらせるのは、何か間違っている気がしますね。前衛芸術家といえば、安定とか、伝統的な価値観とは相反する生活を送るもの、じゃないんでしょうか。まあ、主人公の弟(クレアント←オヅキ)は前衛芸術家といっても、けっこう売れて生活は安定しているみたいだけど…(あ、もちろん、家庭円満の前衛芸術家をオヅキ君にやらせる、ってのは何かの罰ゲームですか?という話は置いておいて)。
あち、なんだか後ろに行くにしたがってショボくなっていくような印象があったこの話。もう一つだけ細かい話をすると、マルキーズの誕生日に、ジョルジュがプレゼントするものは、もう少しスケールの大きいものか意外なもののほうがいいんじゃないかな……。団員はいつもご飯をつくってもらっているから、今度は作ってあげるってのはまだいいけど、いつもは作ってもらっているわけでもないジョルジュが作っても別にそれほどありがたみがないような。ご飯は作ってもいいけど、「サプライズ」はもっと特別なものじゃないか??? 団員やジョルジュが料理ができない特殊な情況下にあるのに、すごく無理をした、とかいうならまだしも……。
つづく。
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Comments
初めてお邪魔します。
私も初見の時に、何故、緒月氏がジョルジュの弟なのか疑問でした。
そして、愛をはぐぐむ歌を歌ってる事に違和感を。
そうか、平凡な幸せを望むには、非凡な登場人物であるということですね。
すっきりしました。
みんな「ありえない」人たちで・・見るたびに、なんで、浅いの?薄いの?と思ってしまって辛いです。
でも、ショーにハマってしまって、観る機会を増やしています。
Posted by: ひろ | March 03, 2008 at 08:19 PM
コメントありがとうございます。芸術家グループ、変なんですよね。まさか、ノー天気(に見える)で満ち足りている前衛芸術家たちの存在は、芸術がビジネスになっている昨今の情況への皮肉なのだろうか……(笑)。
ワタシもショーは大好きです。いつもあっという間に終わってしまう……。
Posted by: ABE | March 05, 2008 at 01:37 AM