December 07, 2011

サイコーだよ! ゆりやん

日本青年館月組「アリスの恋人」

 いやー楽しかった。そして物悲しくて。
 2回見たけど、2回とも、赤の女王に涙した。そして、2回目は、より物悲しさを感じたかな。
 平日夜公演は、客席に若い子が多くて結構楽しい。「帽子屋実はリア充だよね」とかいろいろ聞こえてくるし。でも終わったあとにはあちこちから、「高校生だったね」「高校生だね」の声が……。
 そうなんです。あれだけいろいろ仕掛けて、最後は白の女王(花瀬みずか)に、いろいろ語らせて強引に丸く収めるんだったら(あそこまで強引に丸く収めなくてもよかったと思う。「あなたたちが私たちを覚えている限り、私たちは生き続けるのです」とかそんな感じでいいんじゃ?)、主人公の年齢なんとかしてほしかった。実は、アリスが夢に落っこちるときに時空も越えていて、現実世界で再会すると、少年は、立派な大人になっていましたとさ、めでたしめでたし、とか(それを同じ役者が演じるのはちょっと難しいかもしれないけど、それもまた受けるよね)。
 高校生と社会人って……。ちょっとねー。広げた風呂敷を副組長にたたませたのに、そこはいじらないんだ?って(笑)。
 さらに言うと、物語を書いたノートがクラスメートに見つかって笑い者になるって、まあ、どっちかというと高校生というより中学生レベル……。みりお君のビジュアルだと高校生かな、って感じだけど(いや、さすがに中学生と社会人はマズイよ。犯罪だよ!!)。
 あと、妹が死んじゃったのはいいとして(というか、妹の設定はすごくイイと思う)、お母さんは心を病んで、主人公はお母さんに処方された薬を飲んで覚めない眠りにつくって、睡眠薬自殺図ったってこと??? それもちょっとリアルすぎー。そこまで説明する必要はなかったような……(つまり、ただ「夢から覚めたくなーい!」って願うだけでよかったのでは)。
 いきなり、気になるところから入ってしまいましたが、でも、楽しかった。そして、みんなああいうキャラものってやりやすいのかな?ジェンヌたちがすごく上手かった。特に作り込みの大きい役の生徒たちが。
 この芝居の功労者はなんと言っても、娘役たち。特に、アリス(愛希れいか)、赤の女王(愛風ゆめ)、そして、ポーン(琴音和葉)とドードー(咲妃みゆ)。彼女たちの演技がすべっていなかったことが、この作品の世界を支えていたと思う。もちろん、男役も健闘していた。ナイトメアの星条海斗は当たり役。上手いのは前から知っていたけれど、彼女にぴったりで、悪役に見えて実は傷つきやすい純粋な心を持っている、というかなりオイシイ役。いやー、こんな当たり役にめぐり合えて彼女もジェンヌ冥利に尽きるのでは? そして、個人的にはこの公演で一番受けたのが、帽子屋紫門ゆりや! 今まで爽やか好青年みたいな役が多かったような気がするし(そうでもないかな)、実際いつもいい人オーラ出まくりだし(でもちょっと気弱?)、どうもやや技術に難あり、押し出しも弱い?みたいな印象があったんだけど、こんなにもチャラ男(あのキャラはなんていうカテゴリーなんだろう。萌えキャラにはあまり詳しくないんで……)が上手いとは! 見直した!!サイコ―!ゆりやん。まあ、彼女の帽子屋がおかしいのは、相手役のメガネッ子(これは知ってるゾ)、ドードーの咲妃みゆに負っている部分も大きいと思うけど。そんな咲妃みゆちゃんはまだ、研2なんだ…。ほんとお見事でした。桜一花タイプかな。それにしても、何をやるにもいちいちカッコつける(でも、それが薄っぺらな感じがイイ)帽子屋がおかしくて、2回目の観劇のときは、彼女(紫門ゆりや)が出てくるとそっちばかり見てました。彼女はこの公演で株をかなり上げましたね。ファンも増やしたと思うよ。ま、最初から純愛一直線で、どこが「女狂い」なんだ、と観客はみんなつっこんでたと思うけど。
 で、肝心のルイス・キャロル役・明日海りお君なんだけど、上手くやっていたと思う。まごうことなき主役の美少年オーラは出ているし。でも、ツンデレ(ですよね。今回のこの役は)って、他の役に比べるとやや作り込める部分が少ない、というか、やりようがないというか(それは私がツンデレ好きでないから?)、他の強烈な登場人物に比べると、おいしくなかったかな、と。それに、今気づいたけど、例えば、星条海斗のナイトメアとか、赤の女王(愛風ゆめが快演というか怪演! 彼女新公ヒロインもやっているけど、実は、こういうキャラもの?が得意だったとは。彼女、王道ヒロイン系の役より、こういう方が全然イキイキしてるね)は、心を開いたり、太っ腹なところを見せたりする、いわゆる「おいしい」場面があって、特に赤の女王が、ナイトメアに話しかけるあたりで、いつも私の涙腺はゆるんでしまうんですが……、ルイス・キャロルにはそういう場面がなかったしね……。もちろん、現実に向き合う、という決意をして、アリスと一緒に月に飛び込むところとか、「忘れさせないように」(笑)するところが見せ場なんだろうけど……。あ、そうか、強引にアリスに「忘れさせないように」(笑)するところが、ツンデレ的には萌え~なのかな。
 で、アリスの愛希れいかも予想以上によかった。スカステの「ナウオンステージ」で、彼女だけがファンタスマゴリアの人間ではなく、迷い込んでいる、という違いが難しいと言っていたけど、その違いはなかなかよく出ていたと思う(フツーのかわいいかわいい娘役とはちょっと違う持ち味が上手く働いていた部分もあるのかな)。特に最初の方で、「アリス服」を不思議そうにいじるところとか、他の登場人物(動物もあり?)にあちこちひっぱりまわされるときの動きが、100パーセントファンタジーの女の子じゃなく、戸惑いがちで、腰が引け気味でかつ、オトナな感じとか。今回はとにかくその演技力に感心しちゃったけど、そのほかの技術はもともと問題ないし。手足長くてスタイルいいし、ポスター見たときはええっと思ったメイクも舞台では可愛くなってたし。
 あー1人1人語りたい! 「キャラでぇーす!」の琴音和葉(ポーン)もよかったし…。
 あ、ただ、相対的にちょっと損したかな、というジェンヌも何人かいましたね……。私としては、特に残念だったのが、ヤマネ役の鳳月杏。彼女はちゃんと役としてやることやっていたと思うけど、とにかく寝てばかり、という設定でセリフも少なく、しどころなし……。うーん、ちょっともったいなかったぞー。あと、マーチ・ラビット珠城りょう君は、ちょっとやりづらそうだったかな。狂言回し役で、しかもそれほど強烈なキャラでもなかったから(出番は多いけど)難しかったかも。これは彼女がどうというより演出の問題かもしれないけど、もうちょっと嫌味というかプライドありそうな感じにするとか、個性を出す方向にしたほうがよかったかもね……。彼女、男役の完成度は高いけど、コミカルな役は苦手なのかな……。

 まだまだ語り足りないのですが、明日(ってかもう今日)もお仕事! さあ、現実に向き合うのだ(……っていうメッセージが何度も何度も繰り返されていたけど、ちょっとあからさますぎたような。ま、このへんの加減って難しいけど)。

October 31, 2011

東京国際映画祭まとめ

 今年の東京国際映画祭は、例年になくたくさんの映画を見ることができた。例によって、東アジア映画中心なのだけど。
 数が多かったので、5点満点で点数つけてみました。

  • 金で買えないモノ……4.5
  • 嘆き……4
  • 僕は11歳……3.5
  • 飼育……3.5
  • あの頃、君を追いかけた……3.5
  • 運命の死化粧師……3.5
  • 転山……3.5
  • 夢遊……スリープウォーカー……3
  • 備えあれば……3
  • 海の道……3
  • 白タク……3
  • U.F.O.……2.5
  • 香港四重奏+香港四重奏Ⅱ……2
  • ラジニカーントのロボット……2
  • カリファーの決断……2
  • ボリウッド~究極のラブストーリー……なし
  • 韓国映画の秘密+フィリピン映画への帰還……なし

「転山」と「夢遊」がコンペ部門で、あとは全部アジアの風部門。
「ボリウッド」と「韓国映画&フィリピン映画」は、ドキュメンタリーなので、並べるのもどうかな、と思って評価なし。

October 28, 2011

不覚じゃー

 東京宝塚劇場での作品はずっと見ているのだけど、最近は全国ツアーはめったなことでは行かなくなっていた。今回の花組の場合、それに加えて演目も特に興味をひかなかった。世話物っていうか、こういう青天の時代劇ってあまり好きじゃないのだ。宝塚作品としては。

 しかーし、今回の「小さな花がひらいた」は、見とくべきだった。とにかく、月野姫花の子役が絶品だったようだが(これはほとんどの人が言及しているから、相当なのでしょう)、それと並んで、冴月瑠那の子役もよかった、という声多し。瑠那君、さらにショーでは女装(!)もありとか。瑠那ファンとしては、押さえるべき作品でしたね。くーっ。

 今からなんとかならないかとあれこれ調べてみたけど、比較的近い相模大野はチケットがかなり厳しそうだし、それ以外の公演はちょっと遠すぎ……。

後悔先に立たず(→人生で必要な知恵はすべて宝塚から学んだ)

October 11, 2011

かっこいいぞ! イゴール!

東京宝塚劇場月組「アルジェの男」「Dance Romanesque」-2

 最初に見たときの感想はいろいろあったんだけど、もう2回見ていろいろ考えることあり。まず、初見の時に聞き逃していたみたいでしたが、立場がよくわからない、と私が文句を付けていた明日海りお演じるアンリの軍隊での階級は「伍長」でしたね。伍長と言えば……ってウィキペディアとかで調べちゃいましたが、軍人としては下級。あ、今気づいたけど、プログラムには「下士官」となっていた。伍長は最下級の下士官らしいから、「伍長」というより「下士官」という方がまだ聞こえがいいかな。いずれにしても、侯爵夫人の家の使用人――あ、これまた発見。プログラムには謎の「付人」という説明が……。うーん、召使いより上ってことなのか?とにかく、伍長なら、その後屋敷でお嬢様の身の回りの世話をするのも、まあ納得がいく身分かな。とすると、問題は、総督夫妻に会ったときに、「この間は将軍の葬儀に来ていただいて云々」と将軍の身内かのようにお礼を言うところがむしろ伍長としてどうなの? 伍長って、アルジェリア総督に対して、あんな対等に口がきける立場なのかな? 総督(越乃リュウ様)が「あ、君は将軍付きの……」というようなことを言っていたから、やっぱり将軍に付いて身の回りの世話をしていたんだな、と思うけど、だからと言って、葬儀に参列してくれたことのお礼を言う立場ではないはず。しかも、明日海りおの王子様キャラのせいもあり、総督と対峙している姿が(軍服は下級っぽいにしても)、妙に華やかなことも、見る側の混乱に拍車をかけているような……。あと、侯爵夫人の家にいるときの服装がスーツってのも何か変なんですよね。
 あー、初見のときより客観情報?が集まったけど、やっぱり変です。あの「付人」アンリ。
 あと、スカステで新公の鳳月杏ジャックを見たせいもあり、違和感の正体がよりはっきりしたのが、龍真咲ジャック。なんか、すごんでいるときの発声が変。貫禄出そうとしているのかもしれないけど、チンピラでいいんだから、あの変に低い声にしなくても……。もちろん演じる人によっても役の造形は違ってくると思うけど、彼女がやるんだったら、チャラいチンピラでいいんだと思う。無理に渋い大人の男をやろうとしなくても……。だいたい若い設定なんだし。
 それはそうと、スカステニュースでちらっと(ウソ。何度も見てました)見ただけなんですが、新公・鳳月杏のジャック、カッコよかった!(ここから月組のマイ・ブーム、鳳月杏くんについて)そりゃもちろん、ファンの贔屓目もありますが、色悪がやっぱり似合う。しかも、こんなに書き込みのある役やっているの初めてみた気がする。けっこううまいじゃないですか。お芝居。彼女はこういうちょっと古臭い芝居が似合うタイプなのかもしれませんね。しかし、色気があって暗い感じの男役は貴重ですよ。しかも、開襟イロモノシャツが似合う系統。そして、何度も何度も言っていますが、彼女の場合、ガタイがいいのがいい!! ただ背が高いだけではなく、体ががっしり。いっときやや太って見えて大丈夫か……と思ったけど、今は「がっしり」と言えるぐらいのちょうどいい感じに……(ホッ)。歌と芝居も破たんないし。
 そもそも、この公演で、彼女、爆上げとまでは言わないまでも、何気に扱い急上昇じゃないですか。新公二番手がもちろんその一つ。芝居の本公演のほうは、たいした役はついてないけど、ショーでは、「タリスマン」の場面で、吸血鬼(一応「プラド伯爵」らしい)青樹泉サマの手下(これこそ付人?)を珠城りょうくんと2人で務めているし(黒いサテン?の開襟ブラウスのこの「イゴール」がショーの中ではベストですかね。個人的には)、若手男役9人の場面「月色男子」(K-POP風アイドルグループなんだそうで)に入っているし、何より驚いたのは、フィナーレパレード、煌月爽矢くんと珠城りょうくんと3人でセンター降りしています! 新公主役してないのにセンター降りって珍しくないですか??(今まであまり考えたことなかったけど、最近だと雪組の緒月遠麻みたいな特殊な位置のジェンヌは別として、あとは、新公主役はしてなくても、最低、バウ主演はしているよね……。宙組の十輝いりすとか蓮水ゆうやとか)。しかも、「新公学年で」と考えると、さらに珍しいかも。これはもしかして、新公主演も夢ではないのか!?とファンは妄想。そう思ってみると、スカステで、新公インタビューだけでなく、「リクエスチョン」とかいうコーナーにも登場してるし。頼みます! 新公主演行っちゃいましょう! (これも何度も言っているような気がするけど)爽やか好青年系ばかりではなくて、こういう色気のあるタイプも必要なんですよ(まだまだ色気は足りないけど、いい線行っているでしょ。将来有望)。劇団サマ!!!! と、すっかり「ちなつ押し」モードの私なのでした。

September 22, 2011

敢えて難題に挑む

東京宝塚劇場月組「アルジェの男」「Dance Romanesque」-1

 柴田センセー作品で、大野センセー演出。柴田センセーといえば、数々の名作を生み出した名演出家、そして大野センセーといえば、ときどき話が収集つかなくなるけど、生徒愛・宝塚愛は誰にも負けないし、細かいところまでこだわりが見えて、個人的には期待の若手(若手とはもう言わない?)演出家の一人。なかなかよさそうな組み合わせじゃないかと思ってましたよ、当初は。しかし、初見の感想は、「さえない作品だな」……。もう、私、柴田作品=名作説信じないぞー。いや、「あかねさす紫の花」とか「琥珀色の雨にぬれて」(録画のみ。生の舞台は見たことない)は好きだけど。
 うーん。なにより、ジュリアンの性格付けが中途半端かな。もちろん、霧やん(霧矢大夢)とはガラ違いなのは分かる。女を利用してのし上がる元チンピラ……。そもそも似合わん。でも、それだけの問題じゃないと思う。もちろん、ギラギラ系の男役だったら同じセリフ、演出でももうちょっと悪そうに見えるかもしれないけど、芝居なセリフや状況からして、「のし上がる」とか「ワル」な部分が足りないのではないかと。だって、エリザベートがジュリアンをバカにして、ジュリアンが復讐を誓うところは、それなりの状況とセリフがあったから、ちゃんとジュリアンの炎が見えたもん。しかし、それ以外のところがなんか薄くて……。ジュリアンはただ、受け身で運命に流されいるだけの男のように見えましたね……。
 ワルと言えばこの人、龍真咲演じるジャックは、期待していたほど変ではなかったかな(笑)。まあ、勝手にものすごく期待しちゃっていたけど。彼女の方向性と役の方向性が近いというか、割とフツ―。あーこのヒトはもともといっちゃってるチンピラなんだな、と思えた(笑)。スカピンのショーヴランは、役替わりの明日海りおとかちょっと前にやった柚希礼音という比較対象があったし、革命家なのに、なぜか自己愛に満ちたビジュアル系男というかなり独創的な方向につっ走っていたからな……。そう、スカピンのときみたいに、膝を打って笑ってしまうほどの(もちろんたとえですよ。たとえ)おもしろさはなかった。そういう意味で、ちょっと期待外れで残念だったけど、芝居の中の自分の役割をきちんと把握できるようになったってことだとすれば、それはそれでいいことなのかも。それにしても、彼女は、ああいう堅気でない、開襟のイロモノシャツが似合う男役になりましたね(昔は王子様系じゃないかと思っていたんだけど)。線が細いせいもあって、あくまでチンピラ風。決して親分ではないけど。
 そして、対照的に、燕尾や白タイツが似合う貴公子・明日海りおは、やっぱり堅気の役。元軍人のアンリ・クローデル。ただね……。ちょっとこの役は意味不明だった。将軍の近くにいて、ボランジュ総督とも面識があるくらいの地位の軍人だったら、令嬢アナベルと結婚できないのはまあいいとしても、退役後に将軍のお嬢様のお世話係??(というか、ここいらもちょっと謎で、彼はあの家でどういう地位だったのか? 妙にいい格好して、執事よりエラそうな感じだったけど。使用人というわけではなく、アナベルお嬢様の話し相手?)してるってどうなの? ちょっとあり得ない感じ。たとえば、もっと軍隊での地位を低く、それこそ将軍専属のお世話係(軍人というより軍属?)ぐらいにすれば、除隊後は、目の見えないお嬢様にお仕えする使用人つまり、春琴と佐助の倒錯の世界が開けたと思うんだけど……(ああ、脱線)。あるいは、財産も地位もないから結婚できないけれど、除隊後は自分の仕事そっちのけでしょっちゅうアナベルに会いにやってくるという設定じゃまずかったのか? これはあまり重要なことではないけれど、ちょっと気になりました。あと、ラストシーンまでにアンリがもうちょっとはっきりジュリアンを非難するシーンがあってもよいような気がしたけど、それだと野暮ですかね……。
 花陽みらのアナベル。私はもともと彼女がけっこう好きなんだけど、意外と薄幸な役が似合っていていましたね。無垢な感じもよく出ていたかな。この芝居全体の中で、ジュリアンと彼女のエピソードは話にメリハリをつける意味でも重要だし、うまく機能していたと思う。唐突ではあったけど、彼の野心ギラギラ、強引なところが見られる貴重なシーンだったしね。っていうか、あの作品って、そもそも野心ギラギラな主人公の魅力を堪能するはずのものだよね……。上でも書いたけど、それなのに、野心ギラギラシーンが足りないんだと思う。あらすじにはエリザベートは「野心の炎を隠そうとしないジュリアンを敬遠し」と書いてあったけど、私には野心の炎はそんなに見えなかったなー。エリザベートは単にジュリアンの育ちがいやしいからバカにしてるんだと思ってたけど……。そして、何度も書いてしつこいけど、そもそも、霧矢大夢はもちろん、新公の柴門ゆりやも本来は「野心ギラギラ」タイプじゃなんだよね……。なんでまた難易度の高いことに挑戦してんだ。この公演は(苦手なものを避けてはいけません、克服しましょうってこと?)。ぶつぶつ。
 サビーヌ(蒼乃夕妃)は……。アルジェ時代の鬘と衣装は何のいじめかと……。もちろん、パリ時代との違いを出すためなんだろうけど、あそこまでダサくする必要があるのでしょうか。特に前髪パッツンはナンだ!? パリに行ってからは、衣装も鬘もナイス。もちろん、生腹姿(っていうんですかね。お腹を出したダンサー姿)はかっこよかったです。
 うーん、あと、ジュリアンの秘書仲間として青樹泉が意味ありげに登場してたけど、特に何もなくお気の毒でした。あれは、育ちが悪くて這い上がったジュリアンとの対比なんでしょうが、生まれ育ちを越えて理解しあえる仲間になるにしても、やっぱり裏切るにしても、もうちょっと踏み込んでくれないと……。その後のエピソードもなくただのいい人みたいで中途半端でした。
 あと、よかったのは、花瀬みずかのボランジュ夫人。柴田先生は娘役の書き込みがしっかりしてる、と言われているけど、確かにそうかも。
 

August 22, 2011

蘭蘭……

東京宝塚劇場花組「ファントム」-1

ファントム、それほど好きな作品と思っていなかったんだけど、実際久しぶりに劇場で見てみると、オペラ座やビストロのシーンでは、ダンサー、歌手、スタッフが舞台上に勢揃いしてわやわや楽しいし(ビストロは、宝塚の芝居に欠かせないダンスパーティシーン的な役割?)、ちょこっとだけど、オペラを上演するという場面もあって、宝塚の醍醐味の一つ「主要な役から下級生までいろんな格好でいろいろやってるのを見て楽しむ」をそれなりに享受できる作品でしたね。
しかし、それは主に前半で、後半、オペラ座の地下への逃亡と捕り物、そして人間ドラマがメインになってくると、ちょっと苦しい……。このファントムというお話に入り込めなかったので、正直、後半がやや退屈だったかな。

蘭寿とむは、声もよく出ていたし、ダンスはきびきびしていたけど、やはり、暗い影を背負った永遠のモラトリアム少年みたいなこのエリックという役はちょっと似合わない感じ。まったくなんでこの作品をお披露目にしたんだか(最初からファンの多くが言っていたことですが)。達者な役者と思われているのかもしれないけど、やはり、彼女だって良さを発揮するには作品を選ぶ、ということなのだ。まあ、チケット売れているから作品選択は成功だったということになるのかもしれないけど。

でもって、蘭乃はな
この作品のクリスティーヌは、歌が歌えることはもちろんだが、「小娘感」が重要(だと思う)。再演の桜乃彩音は、確かこれが大劇場お披露目で、歌はかなりアチャーだったけど、小娘感はあった(ほとんど地で?)。初演の花總まりは、すでにベテラン娘役だったけど、ちゃんと芸で小娘になっていたし(ここが花總まりサマの偉大なところでしたね)、歌も作品的に問題ない程度に歌えていた。
今回の蘭乃はなは、その点、小娘感はばっちり。特に、カルロッタに、「農場で育ったの?」と言われるときのかっこうなんて、なんかもっさりしていて、かわいいけど田舎者っぽい!(褒めてます) 別に、クリスティーヌはものすごい美人だったり、オシャレである必要はないのだ。そして、危惧されていた、歌がかなり向上している!! 地声よりも裏声(?)の歌の方が得意なのかな。オペラチックに高音で歌うところとか、なかなかよかった。いや、人間の潜在能力ってすごいな、っていうか、苦手なことも、努力すれば向上するんだな……。(→人生で必要な知恵はすべて宝塚から学んだ)

蘭乃はな蘭寿とむ、この2人はかなり持ち味が近い。健全で、地に足がついた感じ。そういう意味で、この「ファントム」はクリスティーヌは合っていたけど、エリックが合っていなかったね。

August 21, 2011

「誰得」シャンハイ

「シャンハイ」
2010年アメリカ・中国合作
監督:ミカエル・ハフストローム
出演:ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、菊地凛子、渡辺謙

 ものすごく久しぶりにアジア映画について書く(書いてないけど、ちょくちょく見てはいるんですよ)。正確には米中合作だそうですが。俳優陣は豪華。亜州影帝チョウ・ユンファ、コン・リー、世界のケン・ワタナベ、それから、菊地凜子。舞台は魔都上海……。なかなか豪華じゃないですか。
 しかし……
 結論から言うと、中途半端な映画でした。基本的には、西洋人(そして日本人にもある)にある東洋への憧れ、特に、第二次世界大戦中の上海への憧れ(租界、バンド、チャイナドレス……)、エキゾチズムをベースにした映画なんでしょう。そこに愛と戦争からめてみました…っていう。
 とはいえ、一昔前の、一方的なエキゾチズム全開で、日本人がみても「これ、おかしいよね」的なひとりよがりの映画とは違う。あの時代の上海といえば、悪いのは日本軍ってことになるのはある意味当然、定番で、この映画でも日本兵が中国人を殺すシーンはあるけれど、少なくとも、渡辺謙の演じる軍人は悪く描かれていない。

 一応主人公はアメリカ人だけど、チョウ・ユンファ演じる中国人マフィア?もケン・ワタナベ演じる日本人将校も、それなりに見せ場はある。つまり、各方面、それなりに顔を立てているのだ。
 でもね……。「ばかばかしい!」と激怒するほど、荒唐無稽なところはないかもしれないけど、誰がこの映画見て喜ぶのかというと、はなはだ疑問。
 日本人じゃないし、中国人でも香港人でもないでしょう。チョウ・ユンファファンだって、大喜びはしないと思う……。かといって、アメリカ人が喝采を叫ぶとも思えないし。

 これこそほんとの「誰得」???

 国際的なスターがキラ星のごとく並び、「絵になる」上海租界が舞台。確かに、けっこう手堅くて、企画書は通りそう。しかし、いくらヒット要素を並べて、国際的なスターを配置しても、それだけじゃいい映画にはならないんだなー、という見本のような映画。独りよがりでもいいから、ひとつの立場に立った方がドラマとしてはよかったと思う。っていうか、そもそもなんでこんな映画作ろうと思ったのか、聞きたい。
 ま、不思議な作品です。

 そうそう、渡辺謙がハリウッドで確固たる地位を築いたのは喜ばしい、ってことは改めて痛感しましたけど、同様に、国際的知名度のある日本人女優……というと、菊地凜子になってしまうのは、何か間違っている気がする……。彼女は、役を選ぶというか、少なくとも、普通の商業映画のヒロイン、準ヒロインタイプじゃないと思うんですよね……。中国人女優だったら、コン・リー、チャン・ツーイーのような、知名度のあるヒロインタイプの日本人女優がいないんだなー。残念。

 チャン・ツーイーといえば迷作「さゆり」を思い出す。まあ、あれは西洋人の作ったウソの芸者の世界の話で、「勝手に妄想していてもいいから、名作みたいなふれこみで、日本で公開するのはやめて」っていう映画だったわけで、それと比べれば、マシといえばマシなのかも。

August 19, 2011

前のめりのジューン

日本青年館宙組「ヴァレンチノ」-1

青年館で2回見たんですが、
2回目の観劇で、あいだ2日しか空いていないのに、野々すみ花ジューンの変わりようにオドロキました。
出会いのシーンで、ジューンが、なんかものすごく積極的。会場の雰囲気もあったのかもしれないけれど、やはり、回数を経たことでどんどん役にのめりこんでいっているのか、あるいは自分で役作りを変えてみたのか……。もう、最初っからかなり前のめり。この4場の最後の「ジューンって呼んで」というセリフが出るずっと前から、一人でかなり盛り上がっている。……なんか改めて野々すみ花のパワーというか熱というか表現の大きさをヒシヒシと感じました。
大空祐飛ルディーはルディーでいつものように天真爛漫。いや、ドラマシティのときは、「ちょっと若作り……?」と思う部分もなくはなかったけど、なんか若さが自然になったような。祐飛君のトレードマークでもある(違うか)、目の周りの険しさも消え去って……。若い役、すごくいいよ!似合ってる(ファンの欲目か??)! 退団までに、もう一度ぐらい天真爛漫な若い役もみたいな(除く:ファンキー・サンシャインのひまわりの青年S)。クラシコ・イタリアーノで、若いころのシーンも入れちゃうとかどうでしょ。景子先生……。

で、冒頭ちょっと面食らったところもあった肉食ジューンだったけど、ルディーに去られてからは、もちろん頑なに心を閉じるいつものジューン。傷ついて心を閉ざしている姿が、なんとなく見ている方を彼女に肩入れさせちゃうという……。

小池先生がやりたかった、ルディーをもっとオトナにして、ナターシャとの愛と葛藤をがっつり書くプランは賛同しかねますけど、確かに、このお芝居、ジューンとナターシャのバランスが中途半端かも。今のままだと、ヒロイン(ですよね)・ジューンが出てこないシーンがちょっと長すぎるような……。最後を締めるのがジューンだから、ヒロインとしての面目は立っていると思うけど。
一方、ヒロインのライバル、ナターシャなんだけど、今回初めて、彼女が「おとぎ話のお姫様になれなかったから、自分でおとぎ話を作った」(大意)なんて、ニクい歌を歌っているのに気づきまして(歌詞ってあまり真面目に意味を追っていないもので)……。ゴメン、私、あなたのこと誤解してたみたい。彼女の役をもう少し書き込んで、ダブルヒロインにしたら面白いかも……とちょっと考えを変えました。今のままだと、ナターシャは、わがまま、ヒステリックなだけに見えちゃって、あまり同情できないキャラなんですよね。まだナジモヴァ(純矢ちとせが怪演!)の方が、可愛げがあるだけ得といいますか……。
でも、ジューンに比べると彼女の方がつらい経験もいっぱいしたに違いなく、その分地に足ついてる感じだし。うまく書き込めば、彼女は彼女で、つっぱって生きてきた芸術家、でも、すごく孤独、なんて感じになってよいのかもしれません。

あ、最後に一言。あのトートツな悠未ひろ大空祐飛のデュエットダンスは何なんでしょうか?(いや、フツーの喧嘩ダンスならわかりますけど、変に絡んでますよね。キスもあったし) ニジンスキーの真似か?……って、ドラマシティ公演はニジンスキーより前にやってますがな。こういうのを誰得っていうのか??

June 14, 2011

GOOD NEWS

 今まで人事とかニュースにブログではいちいち反応していなかったのですが(もちろん個人的には反応していましたが)、今日(というかもう昨日、13日)のニュースは素晴らしすぎる。

 震災で中止になった「ヴァレンチノ」東京公演実施。ほんと、長生きしているといいことあるんだなhappy01(違うって!)。

 でも、それを夜中まで知らなかった自分、情けないかも。

 さらに、最初に宝塚ニュースの「スター関連」(つまり退団情報)の方を先に見ちゃったので(「公演関連」は沢山あって「ヴァレンチノ実施」が埋もれてたんだもん←ちゃんと見なさい)、「妃宮さくらちゃん退団延期!? 意味わかんない!!」としばらく首をかしげていたのはここだけの秘密。ヴァレンチノ再演の情報って事前にネットなどでチラホラ出ていたそうですが、ぜんぜんっ知りませんでした(疎いな……)。

 ほかのファンの皆様に比べれば、はるかに遅い認知でしたが、いや、本当によかった。喜ばしいことでございます。なんか、まったく期待していなかった贈り物って感じ。今年のお盆の過ごし方は決まったな……。

 さらに、もう一つ、うれしいことが。こっちはそれほどビッグなお知らせじゃないかもしれませんが、月組新公、主な配役発表。鳳月杏くん、2番手役(だよね)おめでとー。期待してるよ!!

 モロモロ、世の中、捨てたもんじゃない、と思った夜でした(嗚呼、人生で必要な知恵はすべて宝塚で学んだ)。

 明日(いや、もう今日だが)は、ちょっとイヤなことがあっても、笑って許してしまいそうな私です(会社の○さん×さん、今がチャンスです。正直に言えば、センセイ、今日は怒らないから……←というのはたぶんウソ

May 22, 2011

その後のレオニード

日本青年館雪組公演「ニジンスキー」-7

 この一週間、まさに「ニジンスキー」にとりつかれていた私。でも、こうやってブログにアップするのはこれで最後かな。最後は映画の話。

 1週間前。11時の「ニジンスキー」を観たあと、興奮さめやらぬ私は、ニジンスキーとかバレエ・リュスのことをインターネットで調べていた。そうしたら、なんとこの日、(「ダンシング・チャップリン」公開記念の)レイトショーで、バレエ・リュスのドキュメンタリー「バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び」(2007年日本公開。DVDは現在売り切れ?)が上映されるじゃないですか。すごい偶然!に驚きつつ、見に行ってしまいました。
 この作品、実は5年ぐらい前の「香港映画祭」で観たんだけど、もう内容忘れちゃったし(字幕なかったし。いや正確に言うと、英語と中国語があったはず)、今観ると面白いんじゃいかな……と期待に胸ふくらませ……。

 この映画は、ニジンスキーのいたころのバレエ・リュスを描いているのではない。ディアギレフの死によって消滅したバレエ・リュスが、復活して、分裂して、戦火を避けて両方ともアメリカに渡り、新大陸にバレエを根付かせ、やがて衰退していく……ってところを追って、その時期にバレエ・リュスに所属し、その後世界各地で活躍したバレリーナたちが当時を語るって内容なのだ。この映画ができたのが2005年。その頃(取材は2000年前後)のインタビューなので、ディアギレフ時代にはまだ踊っていなかった人がほとんど。
 でも、多少は「ニジンスキー」の登場人物ともダブるかも……。以前観たときは、ディアギレフ、ニジンスキー(この二人はさらっと名前のみ)以外は、バランシンぐらいしか人名わからなかったけど、今度はもう少しわかるのでは?と期待しつつ観ました。
 登場人物が多くて大変だったけど、やっぱり面白かった。貴重な当時のフィルムも挿入されているしね(ディアギレフ時代のバレエ・リュスは方針で動画を撮らせなかったけど、その後は撮影もOKだったみたい)。そして、意外にも、「ニジンスキー」の登場人物の中で、この映画に一番多く登場したのは、レオニード・マシーン(宝塚の「ニジンスキー」では真那春人)でした。ニジンスキーが去った後のディアギレフのお気に入りね。

 ニジンスキーが踊るはずだった「ヨゼフの伝説」でデビュー、その後バレエ・リュスのスターとなり振付師としても活躍したレオニード・マシーン。彼は、ディアギレフの死後復活した、バレエ・リュス・ド・モンテカルロに招かれ、芸術監督?として活躍。映画には当時の彼のダンス写真が沢山出てました。彼が踊っているフィルムも少しあったかな。そうそう、映画の中にはニジンスキーの代表作の再演のフィルムもありました。ニジンスキーはもう引退(?)していたけど、この時代には、ニジンスキーのダンスを直接知っているダンサーがたくさんいたわけで……たぶん、オリジナルとそんなに変わっていないんだろうなと……。そういう意味でも興味津々。
 この映画でインタビューされている往年のバレリーナは、2000年のバレエ・リュス同窓会に集まった人たちで、当時だいたい80代。そうすると、1920年前後生まれなので、ニジンスキーと同じ時期に在団した人、というのはさすがにいなかったみたい。その代わり、というか、活躍したのがマシーン時代というダンサーが多かったので、マシーンの写真・話題はたびたび登場(彼自身は1979年死去)。パートナーとして踊っていたプリマもいた。この頃の写真とか映像観ると、芸術監督といいつつ、けっこう後まで自分も出演していた模様。そして、巡業中、彼と妻と犬だけ特別車両で移動とか、なかなかのオレサマぶりだったなどというエピソードが当時の団員によって語られていました。そんなこともあったせいか、最後には、バレエ団の代表?デナムと対立し、辞めていったとか。

 レオニード、君、青年館では、まだピュアな青年だったけど(もちろん、打算的だったのは知ってる)、けっこうやり手だったんだね! しかも、当時は振付師としても成功したんじゃん! それに、お写真を観ると目が大きくてこれは美形さん(ぶっちゃけ、ニジンスキーよりオトコマエだと思いました。少なくとも濃いのは間違いないな)。ウィキペディアによると、1921年にダンサー(女性)との恋愛騒動でバレエ・リュス退団。25年に復帰とありますが……。(その頃にはディアギレフにはもう別の愛人がいたのか……)

 ま、そういうわけで、「バレエ・リュス 踊る喜び 生きる喜び」かなり楽しめました。DVD、レンタル屋にはあるのかな……。

(おまけ情報)
 しかも、レオニード・マシーン本人が出演した映画「赤い靴」(この映画はけっこう有名ですよね。私は観たことないけど)デジタルリマスター版が今夏公開とか。http://www.red-shoes.jpn.com/index.html
 今も、「ダンシング・チャップリン」「ブラックスワン」の2本が公開されているし、今年はバレエ映画強化年なのか……。

«フォーキンの独白?