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November 04, 2017

蘭丸くんも通る!

花組 日本青年館公演「はいからさんが通る」-2
お次はこの方。
聖乃あすか(蘭丸)……今公演の新人賞を一人挙げたらもちろん、華優希になりますが、彼女が主演女優賞に繰り上げなら、新人賞はこの人では。下級生男役が演じるとただの女の子になってしまいがちな女方の少年という役(つまり女⇒男⇒女)で、どっちかというとかわいい系の男役である彼女はその危険性がじゅうぶん高かったはずですが、ちゃんと(宝塚的には)男に見えました。彼女声が意外と太くて低いんですよね。さらにメイクも上手い。さらに、メイドのコスプレはちゃんと怪しい女装になっていました(笑)。そして、芝居もけっこう達者。
 実は蘭丸ってかなり出ずっぱりで、3番手の鬼島軍曹(水美舞斗)より、舞台に上がっている時間は長そう、もしかしたら2番手の編集長よりも?というくらい。特に1幕は紅緒と一緒にいる時間が長いので(駆け落ちもするしね)、作品前半で「宝塚版はいからさん」の世界を構築するのにかなり重要な人物(主にコメディ方面で)。実際、ポスターにも入っていたし、フィナーレでもソロあり(最初に見た時はちょっと驚きましたが)。彼女は立派にその任を果たしていたと思います。
 牛五郎(天真みちる)とコンビでいることが多かったけれど、ちゃんと迷コンビになっていたというか(タソと組んで芝居したのはいい経験になったでしょうね)。勘がいいのかな。彼女は以前から美貌で注目されていたけれど、美形なだけじゃない、なかなかの実力派ということがわかりました。今回の蘭丸は女の子っぽい役だから演じやすかったんで、大人の男をちゃんとできるの?という声もあるでしょうが、「邪馬台国」東京新公のクコチヒコは、押し出しがよくて、メイクやかつらも似合っていて、女の子っぽい、ということはありませんでした(って、新公見てることをブログで初告白。いや、本当は感想書こうと思っていたんだけど忙しくて……)。
 では、ここからちょっとだけ新公クコチヒコ語り。
 登場したときに、メイク濃い目でけっこう精悍で、「おお、オンナノコしてない」と思ったのが第一印象。彼女は背がそれほど高くなく、スタイルもすごくいいとはいいがたい(なで肩なのかな?)けれど、クコチヒコの大きめ衣装とロングのかつらがうまくそのへんをカバーしていると思いました。あと、お化粧のせいで、お顔がキキちゃんクコチヒコにかなり似ていて、あ、そうか似た系統のお顔なんだな、と気づきました。
 ただ、新公では、主演の飛龍つかさに比べると、さすがに声がまだできていないし、歌もちょっと安定感がないかな、と思ったのですが、今回の「はいからさん」で発声についてはかなり安定して太い声が出ていたと思います。歌もまあまあかな。やっぱり一回かぎり(ムラと東京合わせても2回)の新公と違って、回数重ねることで慣れてくる部分もあるのでしょうか。
 基本美形で華があるし、見かけと違って声は太く、芝居センスもある、ということで将来が楽しみですね。100期といえば、スター揃いで、娘役は次期宙組娘役トップの星風まどか、同じ花組の娘役には今回のヒロインの華優希のほかに音くり寿もいて、男役では星組の極美慎、月組には風間柚乃などが頭角を現していますね。ちょうど極美慎が男役で初めての新公主演をしたばかりですが、その紹介記事には、同期の有望株として聖乃あすかの名前はあがっていなかったけど(私が見る限り)、今回の蘭丸の好演を見ていると、彼女も100期のスターの中に入れてやって、と思いました。いずれ新公主演はするでしょうけど……。
 聖乃あすか君だけでこんなに長くなってしまったので、これで一本立てました。まあ、でもこの公演は将来、聖乃あすか抜擢公演としても記憶されるものなのではないかな、と思いました。

October 31, 2017

少尉など「はいから」な人々

花組 日本青年館公演「はいからさんが通る」-1
 東京でも見ましたー。チケット難の公演でした。ぜひ、再演したほしいですね。というか、「はいからさん」って博多座とか赤坂ACTとか梅芸で一ヶ月ぐらいやってもいい作品では、と思いましたがいかがでしょう。
 誰もがわかっていることだとは思いますが、基本的に少女漫画は宝塚との相性がいい。そして、ストーリーがしっかりしていて、登場人物のキャラも立っていれば、演出家も物語を宝塚仕様の脚本にすることと演出に集中できていいのかもなどと考えてしまいました……。やはり、ゼロから物語を作るのはけっこう大変だと思うし……。というか、基本的な物語(おはなし)をもっと大事にしてほしい、とかねがね私は思っているんですが。もしかすると昔に比べて観客の宝塚作品の脚本に対する要求レベルが上がっているというか、細かくなっているのかもしれません。いまは娯楽も多様化しているし、「萌え」も細分化・先鋭化しているし(笑)。

 で、「はいからさん」です。ドラマシティで書いていないことを中心に。
 
 一幕冒頭は、紅緒(華優希)と蘭丸(聖乃あすか)の剣道のけいこシーンなんだけど、ハイテンションの勢いのある場面で始まって、「それではみなさん、いってきまーす」と紅緒が自転車で走り出すところまでの一つながりがヒロインを観客に紹介するという意味でとても洒落た導入だったと思います。「みなさん、いってきまーす」の皆さんが、自分たちのように観客にも思わせて。
 この作品、全8巻(実質7巻)の歴史大河ドラマをうまく2時間に圧縮しているんだけど、駆け足になってしまっている部分については、観客が原作読んでいることに助けられている部分もあるな、と思いました。紅緒と編集長(鳳月杏)が結婚することになったのも、原作読んでなければ、唐突すぎで、紅緒、やけおこした?と思わなくもないのでは? それから、木の上のシーンを舞台でやっていたけど、あれ、原作知らないと木の上とは気づかないんじゃないかと思いますが、まあ、気づかなくてもよいのかな。あとは高屋敷(亜蓮冬馬)なんかも、出ては来るけど、あれだけでは何が何だかわからないのでは? などといくつか気になりましたが、まあ、原作を知らないと支障があるほどではないからいいのかな……。
 
 では、いままであまり触れていなかった生徒さんたちを(一部重複)。
 
柚香光(伊集院忍=少尉)……実は、私、光君の大劇場以外の別箱公演ってほとんど見ていないんですよね。もしかすると、「近松・恋の道行」(2012年)までさかのぼるかも……。ちなっちゃん(鳳月杏)が組替えしてきてからは、組が分かれるときはずっと別でしたよね。なので、彼女の印象はほぼ大劇のみ。で、以前は歌と滑舌(これは「金色の砂漠」のときに顕著)にかなり課題があると思ったのですが、今回はそれはあまり気にならなかったです。歌は音域など配慮されている部分もあるのかな、と思いますが、台詞はかなりよくなりましたよね。包容力も出ていたと思います。すごい進化! 若いっていいなあ……。ビジュアルはもちろん(美は正義です。宝塚においては)、芸風から言っても王子様系の役がよく似合うということがよーく分かりました。
 
桜咲彩花(花乃屋吉次)……きっぷのいい芸者を好演。カラコロと出てくるだけで空気が変わった。出番は少ないけど印象的ないい役でしたね。彼女は本当に得難いスターだと思うな……。なんでトップになれなかったんだー。やっぱり体形? それとも最近だいぶよくなったけど歌?
 
<ちょいもったいなかった人>
水美舞斗(鬼島軍曹)……ちょっと割を食っていたかな、と思いました。3番手として扱われてはいたけど。それで、これはみんなが言っていることですが、北公路環(城妃美伶)とのラブがほとんど描かれていなかったのが残念。で、環様もラブは中途半端なんですが、モダンガールズのナンバーという見せ場があったので……。

<かなりもったいなかった人>
和海しょう(鈴木ほか)……彼女は本当にもったいなかった。男役に順番に役につけていったら、主な役が彼女の前で終わってしまった、という感じ。実際は何役もやっているので、その分エエ声を何度も聞けた、とも言えるけど……。一応メインの役は冗談社の社員の鈴木だけど、彼女ぐらいなら本当はもう少し大きい通し役が欲しかったですよね……。
 
<芸達者なお姉さまたち>
鞠花ゆめ(如月)……すごい迫力で、当たり役! 彼女、下級生のころは可憐な少女たちなんかをやっていたんですよね……。いまとなってはそれが信じられない(笑)。コメディ部門の貢献度大。
 
新菜かほ(ばあや)……彼女は、今までは割と若い娘の役をやることが多かったようにも思いますが、一気に老け役。たぶんあまり今までやったことがないんじゃないかと思いますが、無理なくコミカルなおばあちゃんを演じていて、「今後こっちで芸を深めていっては?」という可能性を感じました。

花組の場合、スーパー上級生娘役の花野じゅりあお姉さまが、ゴージャス美女(まだまだ現役)タイプなので、今回の如月やばあやのような役が下級生に回ってくる可能性はこれからもありそう。で、この二人、つまり鞠花ゆめや新菜かほはそのへんの担うことになるのかもしれません。あ、今公演では芽吹幸奈が祖母役でしたね。彼女も召使の長(?)とかよくやっていますね。
 
<そのほか、チェックした下級生たち>  
若草萌香(客・女ほか)……MY HEROでの通販番組の司会者が忘れられない芸達者ジェンヌ。今回は女学生やモダンガールズもやっていたけど、伊集院家の園遊会の客の女では、紅緒に足をかけて転ばせていましたね(笑)。あと、少尉のお葬式?で嫌味を言う親戚も。やはりそういう重責は彼女に来るのか……なんて。今はまだ下級生娘役グループの長ぐらいの位置だけど、彼女の良さが発揮されるのは女役だと思うので、小娘役は早めに卒業させてあげてほしいです(笑)。
 
太凰旬(北原ほか)……ちょっとしぃ様(和海しょう)に似たすっとした美形さん。お芝居しているのをちゃんと見るのは初めて。何役もやっているけれど、一番目立つ役は冗談社の社員の北原ですね。編集部では一番の若手の役なのかな。声がちょっと高いのが残念と思ったけど、あれもそういう役作り?
 
あとは、牧師役で下級生にしては出来上がっている声を披露した涼葉まれ君、シベリアの日本兵のなかですごくダンスのキレがよかったのは彼ではないかと思うんですが、違うかな……。伊集院家の園遊会で蘭丸のメイドを不審げに見ていた召使とモダンガールズで、タイトなワンピースを着ていたのは詩希すみれちゃんかな。モダンガールズのときのスタイルの良さが印象的。

October 22, 2017

アベルってやっぱりヒドイ男では?

花組 TBS赤坂ACTシアター公演「ハンナのお花屋さん —Hanna’s Florist—」

 作・演出の植田景子先生は、宝塚歌劇団初の女性演出家。二番目はもう辞めてしまった児玉明子先生で、三番目が、もうすぐ「はいからさん」の東京公演が始まる小柳奈穂子先生、四番目が、いま東京宝塚劇場で上演している「神々の土地」の上田久美子先生。つまり、もうすぐ東京では大劇場デビューを済ませた宝塚の女性演出家3人の作品が同時期に上演されることになるんですね……。この三人のあとも、女性の演出家は入ってきていて、何人かは演出助手や新公演出で名前を見ます。そのなかで樫畑亜衣子先生がバウ公演デビュー済。いまでこそコンスタントに入ってきている女性演出家ですが、植田景子さん入ったの1990年代だから、均等法に遅れることウン年。女性だけの劇団でありながら、演出家の女性登用が遅れたのはなぜ?と思ってしまいますね。現在の女性演出家の活躍を見ると。
 景子先生と言えば、祐飛君(大空祐飛)の「THE LAST PARTY」「HOLLYWOOD LOVER」を良く覚えています。この二作品がなければ祐飛君はトップになれなかったのでは? 景子先生は、祐飛君の良さにいち早く気づき、良さを最大限に引き出してくれた方ですよね(感謝ー)。誰もが認めるトップ候補生なら、何やっても大丈夫かもしれないけど、こういうふうに自分の魅力を引き出してくれる演出家との出会いもとても大事なんですよね。きっと。
 大劇場作品では「堕天使の涙」が好きでした。コムちゃん(朝海ひかる)の退団作品。お耽美な作品でした。ルシファーは朝海ひかるにしかできない役。
……なんですが、最近の作品というと……。大劇場作品では実はあまりいい印象がない。直近だと『舞音』ですか。うーん。
 で、「ハンナのお花屋さん」です。

 このエントリーのタイトルで明らかではありますが、あまり高評価じゃないです。ご注意ください。ネタバレもあり。
 あ、でもよかったところもありましたよ。
 松井るみさんの装置はいつもすてき。今回は象徴的なモチーフとかではなかったけれど、森のセットにしても、いつもの宝塚歌劇団の「森」とは違って書き割り感がないというか、とてもオシャレでした。
 それから、衣装(ファッションって私はあまり得意な分野じゃないんですよね。的外れなこと書いてしまっているのではないかとちょっと不安)。今回は現代のロンドンが舞台ということもあり、登場人物の来ている服がわりとイマドキの流行に近いといいますか……、特に男役が、宝塚にしては細いシルエットの服を着ていてたんですが、これがなかなかよかったです。瀬戸かずやのスーツも細身だったし(これが絶品)、みりお君の細身のパンツも似合ってました。
 宝塚のスーツに一昔前のちょっとダボっとした形のが多いのは、単に、昔の衣装の使いまわしだからと思っていたけれど、もしかして、男役のスーツは少しダボっとしていたほうがいいという考えのもと、わざとやっているのかしら。しかし、この作品を見て、イマドキの細いシルエットでもけっこういけるから、もっと舞台衣装に取り入れたほうがいいんじゃない?と思いました。特に現代ものの芝居では。だいたいジェンヌは足が細くて長いんだから、それを生かしたほうがいいと思う。リアル男性でも足が細くてカッコイイ人はいるし、ね。
 すごくシンプルに言って、いつもとちょっと違う、細身のパンツにエプロン姿のちょいモダンなみりお君を見ることができたのはよかったです。眼福。
 フィナーレのマリメッコ(のウニッコ)はね……。さすがタカラジェンヌ、ちゃんと着こなしているけれど、あの衣装、今後使いまわしづらいよな……なんて心配してしまいました。男役は瀬戸かずや以下は、上だけマリメッコ、下は白のジーンズ?だったからまあそれなりだったけど、大きな花柄のスーツ(上下)を着てそれなりに見せてしまう、みりお君とキキちゃんはすごい。あれ、普通の人が来たら漫才師とかチンドン屋さん風になってしまうのでは……。難易度高いと思います。
 と、遠回しに衣装の話とかしてみたりして……。

 えーっと、肝心のストーリーですが、どうも私は感情移入できませんでした。いい人だけど何かこじらせている明日海りおのクリスはまあいいとして、重要なカギとなるクリスの父、アベル(芹香斗亜)がね……。まあ、よく言っても、「やさしい」んだけど、結局優柔不断で女を不幸にするタイプ。ありのままに言うと、ウブな娘をもてあそんで、田舎に囲って自分は金持ちの娘と結婚する、という勝手な男。しかも、本人は誠実なつもりで両方にいい顔しようとするから余計残酷ですよね。正直、私が芹香斗亜のファンだったらかなりがっかりすると思います。いや、特にファンではない私でも、「キキちゃん花組最後の役がこれか……。二番手なのに」と思いました。キキちゃんは誠実オーラ全開で演じていて、全く悪くないのですけど。
 まあ、この手の話(妻がいるのに愛人つくる)はいままでの宝塚作品にもあったかもしれないけれど、いくらお貴族様といっても、現代を舞台にした新作でそれが展開され、しかもあまり本人たちが苦悩している様子がないのはいかがなかものかと。妻のソフィア(白姫あかり)が、アベルが死んだあとで、「私は諦めたの。ハンナはアベルにとってかけがえのない…」(大意)的なことを言うけれど、そりゃないだろう!いくらなんでも。ここは蛇足と感じました。
 父と没交渉だったクリスに叔父のエーリク(高翔みず希)が、「誤解があるんだ。実は……」(大意)と話しかけていたけど、なんかそのあと話を聞いても、いままでの認識が覆るような新事実はなかったような気がしましたが、そうでもなかったですかね……(一回しか見ていないせいもあり、ちょっと自信ないけど)。実は、両親の実の子じゃなかったんだ、というのも免罪符にはならないと思うんだけど。
 同じ二股設定(いや二股じゃないけど…。好きな女性と一緒にいられない主人公という点で一応似ているかな)でも、「はいからさん」の少尉は、ラリサに命を助けてもらった、自分が記憶喪失になっていた、そのラリサがもう余命いくばくもない、と少女マンガ的御都合主義とはいえ、読者が少尉を軽蔑しないような状況が説明されているわけで(これは、宝塚の脚本というより、もともとの漫画が用意している設定だけど)…。

 でもって、ヒロインのミア(仙名彩世)もね……。もうちょっと出番を多くしてあげてもよかったんじゃないかな。あと、移民という設定にしても服はあんまりリアリズムじゃないほうがよかったのでは……(別にリアリズムじゃないんだろうけど、あのダサさ加減はちょっとお気の毒。服にお金がかけられないのとダサいのは違うと思うゾ)。地雷キャンペーンと絵本もね……。ちょっとタイアップっぽくって私はあまりしっくりきませんでした。クロアチアのあの年代の女性が弟を失ったシチュエーションとして何がいいのかよくわかりませんが……。「地雷」とはっきり出さなくてもよかったんじゃないかな。逃げ惑う間に見失ったとか、そんなところで。まあ、このへんは「地雷問題」への私の認識不足のせいかもしれないけど。
 今回、景子先生は、今までとはちょっと違う等身大の女性をヒロインにするという試みに挑戦したのかもしれないけど、なかなか難しいですね。特に相手がフェアリーみりおくんだし…。ミアが猫を拾って来るエピソードとかよかったですけどね。
 花屋のメンバーはけっこうキャラが立っていてよかったと思います。大劇場ではなかなか大きな役が来ない子たちにもセリフがあって。これぞ、別箱の醍醐味ですよね。
 あと、瀬戸かずや演じるジェフと乙羽映見演じるキャリアウーマンサラ夫婦のラブサブぶり、クリスとの同級生設定とか、適度にリアルで適度にかっこよくてよかったなあ…。こういう半歩先ぐらいのかっこよさ、的な世界観は従来のヅカにはあまりないけど、もっと取り入れていってもいいような。現代ものって難しいと思うけど。

 では、あとは生徒別に。
優波慧(トーマス)……花屋のウェブ担当。膨大なセリフを達者にこなしてました。少し狂言回しっぽいところもあり。それなりに目立つ役はいままでもあてられてきたけど、今回はかなりフィーチャーされていましたね。上手い。彼女はフェイスラインが女の子っぽく見えないのもいいですね(アーネスト・イン・ラブのメイドコスプレでも、とたんに可愛くなってしまう男役の中でしっかり女装感出てました)。現代的な役が似合うのは、軽さが持ち味だから?
美花梨乃(チェンリン)……花屋の従業員。スタイルがいい! 細い足を強調するような細身のボトムス、ぴたりめのトップスで、とても現代的。「MY HERO」の司会の「お姉さん」に続く、別箱の仕上がりを底上げする存在。
紅羽真希(ヨハン)……こちらは花屋ではなくてデンマークが一応メインらしいけど、ロンドンの場面でもちょこちょこバイト。遠目に観て、「あ、この姿のいい男役は誰?」と思うといつもまいこつでした。彼女、芝居も決して下手ではないと思うんですが、役付きはイマイチ。今回もちょっと割を食った感じかな……。なんかもったいない。
舞空瞳(ハンナ)……クリスの母。アベルの妻(?)。顔ちっさ! スタイルは満点。歌声が意外と野太いのにはちょっと驚きましたが、なんでも達者な感じ。ただ、割とベタな「純真な乙女」演技をしていたので、なんかもう少し演技で個性を出してほしいような。あと、メイクがんばればもっときれいになるはず、かな。
 いつもは複数回見てから書くことが多いのですが(笑)、今回は1回限りの観劇、しかもプログラム買わずに書きました。違っていることがあったらごめんなさい。

 追記:
 いろいろ書いているうちに思い至りました。アベルは、主人公クリスをこじらせた元凶で、基本ヒドイ男なんだけど(つまり、本来ならもっと比重の低い役)、二番手の芹香斗亜が演じるために、いろいろ書き込んで「いいひと」みたいにしたからおかしくなっちゃったんじゃないですかね。で、ミアも本当はクリスをめぐる人々の中の一人(音くり寿演じるアナベルとかと同じ)だったのにヒロインつまりトップ娘役の役にしたから中途半端ってことでは!! なんかそう考えると妙に納得。やはりこれは基本クリスの成長物語なんだなー。そこに宝塚の二番手、ヒロインポジが上手く入れられていないという……。どうでしょう。

October 17, 2017

ヤマネから6年か……。

花組 シアター・ドラマシティ公演「はいからさんが通る」-2
 原作ファンも満足させて、かつ原作世代じゃない人たちも楽しめる、ある意味レンジの広い作品を作る(といっても「宝塚の」なのでその点ですでにレンジは狭いが)、という点では、小柳先生は本当に上手いよな……と思いました。
 乙女ゴコロを押さえて、適度に現代的で、結果、宝塚ファンの層のかなりの部分をカバーしているといいましょうか。
 たとえば小池(修一郎)先生はもちろんかなり幅広い層に支持される作品を作っているけど、氏の場合は、東宝ミュージカルの演出もしていることからもわかるように、「普通の」ミュージカル寄り(いや、私はすごく尊敬しています。エンタメとしてレベル高い)。小柳先生の場合、なんていうのか、小池先生よりは、ぐっと乙女ゴコロに標準を合わせていて、ゲームなどのテイストも入って、21世紀における宝塚の一つの姿ではないかと。しかし(ここ重要)、独りよがりではない。オタクすぎない。今回の場合、70年代少女漫画ラブコメの灰汁(アク)を抜いて洗練させたといいましょうか。さすがプログラムピクチャーの監督を目指していた小柳先生(これは「幕末太陽傳」のプログラムより)。そのへんの割り切り方が気持ちいいですね(もしかしたら、小柳作品には隠しようのない先生の嗜好がぷんぷんしているのかもしれず、そのへんわかる人にはわかるのかもしれないけれど……)。たしか、小柳先生の作品は「オタク」っぽいと以前はよく言われていたし、ご本人が自分のことをオタクと言っていたこともあったようですが、最近の作品はもう「オタク」っぽくはないな……。
 
 そもそも、宝塚歌劇団って実は、そういう、ちゃんと今のファンのニーズにこたえる作品を一定のレベルで量産できる、ある種職人的な作家が少なくないですか。まあ、自分の世界がものすごく確立していて、ちょっとレンジが狭いかなという作家が個人的には結構好きだったりするんですけど……。たとえば私がリスペクトする上田久美子先生の作品は常に一定のレベルを保っているけれど、作家性が高くてもしかしたらレンジがやや狭いかもしれない(ご本人はそういうつもりじゃないと思うけど)。正塚先生なんかもけっこう独特の世界を構築していますよね。あ、あとちょっと自分の趣味に走ってしまって惜しいことの多い大野先生も。
 小柳先生みたいな、原作ものもどんとこい、イマドキのエンタメに慣れた人にも楽しめるけどちゃんと宝塚的な良さもあって幅広く受け入れられる作品を手堅く作れる人がもっといてもいいように思うのですが……。ある種マーケティング的というか戦略的にできる人。まあ、言うは易しで、これが難しいんでしょうけど。
 問題なのは、自分の世界に入り込んでしまって観客のことを考えていないんじゃ、という作家や、乙女ゴコロを逆なでする作品を作る人、あきらかに時代遅れな作品(このへんは見る人によって意見が分かれるでしょうが)を作る人、あとは、それどころか、お話になっていないものを作る人なんですけどね(う、書いていてクラクラしてきた)。
 
 今回の「はいからさん」で言えば、全8巻(実質7巻)のストーリーの全体を舞台化する、原作ファンのイメージを壊さないという制約があったようですが(制約というとちょっとマイナスイメージが強すぎるけど、条件というか、しばりというか)、原作があってこそ、のメリットも大きかったように思いました。なかにはこれをどうやって宝塚に……みたいな原作もあると思うけど、この「はいからさん」は宝塚に向いていましたよね。無理に男役の比重を上げる必要もないし。登場人物の数はそれなりに多く、また、原作で登場人物のキャラが確立しているのもいい方に働いたというか……。
 まあ、冬星さんについていえば、原作に出てくる水色スーツと髪型(かつら)については、もう少し原作から離れてもよかったかな、と(笑)。やっぱりいくら鳳月杏が足が長くても、漫画の冬星さんのスタイルとは違うので、水色スーツにあのかつらはちょっとバランスが悪かったような……。水色スーツよりフロックコートと、結婚式のロングタキシードのほうがよかったです。あ、ロングタキシードを脱いでベストになったときが一番足長だったけど。
 と、なぜか小柳先生語りから、冬星さんの衣装の話に脱線したけど戻ります。
 いま、私、小柳先生の別箱(大劇場以外の公演)見るの久しぶりだよな……と思ってWiki見たら、なんと2011年の「アリスの恋人」ぶり。大劇場公演は全部見ているんですけどね。そして、「アリスの恋人」といえば、鳳月杏はヤマネ役でしたね……。いつも寝ていた(遠い目)。いやー、光陰矢の如し。
 ちなみに、Wiki見てもう一つ気づいたのは、大劇場公演は星組と雪組しかしていないんですね。今度宙組やるけど(しかもまた漫画原作)。原作ものが続きますが、オリジナルもまた見てみたいです(いつも言っている気がする)。

⇒小柳先生についてもっと知るには
……というわけではありませんが(笑)、2014年のこのインタビューが面白いと思いました。特に、「ビジネス書をたくさん読んでいた」とか「テーマ性より方法論と思い至った」と話している第二回。登録しないと全部は読めませんが。
 
日経ビジネスオンライン
宝塚が、乙女ゲームに負けてる場合じゃない
宝塚歌劇団演出家 小柳奈穂子さん 第2回
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140908/270934/

October 12, 2017

「全部忘れさせてやる!」

花組 シアター・ドラマシティ公演「はいからさんが通る」-1

 いやー、小柳先生は手堅い。華優希はすごい。そして、鳳月杏は、また新しい面を見せてくれた、というのが、今回の三大収穫でしょうか。小柳先生が手堅いのはだいたいわかっていたから、3番目は、むしろ柚香光の安定感かな。彼女が美形なのは前からよーく知っていたけど、台詞も明瞭だったし、歌もあれぐらい歌えれば問題ないんじゃないか、と。何より少女漫画の主人公としてのヒーローオーラ全開で、しかも包容力出てました。もう2番手だもんね。いや、めでたいです。
「はいからさんが通る」は75年から77年に連載されていたそうで、実は世代的にはかなりばっちりなんですがなぜか読んだことなくて、今年に入ってから電子書籍で読みました。ほぼ同じ時期に「なかよし」で連載していた「キャンディ・キャンディ」は読んでいたんだけど、なんでこっちは読んでいなかったのか…。
 読んでみたら、ラブコメであると同時に、かなり歴史物でした。米騒動とか平塚らいてふの名前も出て来るし…。まあ、でも魅力的な主人公の成長物語というストーリーがしっかりしているから安心して読める感じ。あとは、いかにも、な絵や展開が「懐かしい」感じがしましたが、挟まれるギャグの多さにはちょっとびっくり。当時はあれが当たり前だった? いや、そういう作品もあったと思うけど、それこそ、「キャンディ・キャンディ」は登場人物が突然ギャク漫画ぽくなることはなかったと思う……。ちなつちゃん(鳳月杏)が、スカステの「ナウ オン ステージ」で、「漫画をあまり読まないので、読むのに時間がかかった」と言っていましたが、それって、普通に漫画の文法を知らないから時間がかかる、ということなんだろうけど、あの頻繁に挟まるギャグにも違和感あったんじゃ、などと思ったりして……。
 と、正直、時代を感じさせるところもあるけど、ヒロイン紅緒がしっかり自分で運命を切り開いていく女の子なので、その点で現代でもじゅうぶん通用するのかな、と思いました(舞台の感想からはやや脱線しますが、原作には、女性も自分の仕事をもって自立していこう、というメッセージが強く打ち出されているけれど、40年経っても、その点にあまり時代を感じないのは問題かもしれませんね。男女平等が実現したとは言い難い日本社会のほうが)。
 鳳月杏演じる編集長・青江冬星は、原作通りのイケメンで、ヒロイン紅緒を少尉と取り合う、という重要でオイシイ役柄。ただ、宝塚版「はいからさん」の編集長はけっこうお笑いシーンが多く……。ロングヘアーをバサッとやりながらはける、女性アレルギーが出て、「うーん」と倒れて編集部員に抱えられて退場……などという今まであまり見たことのないベタなコメディを演る鳳月杏を見ることができました。笑いを取った役ということで思い出すのは、「THE KINGDOM」のラトヴィッジ部長ぐらいだけど、あれはハリー(正塚先生)芝居だったから、笑うといっても「クスッ」みたいな感じでしたよね。(追記:コメディといえば、「アーネスト・イン・ラブ」がありましたね。役替わりちなつアルジャノンはかわいくてよかったなー。ただ、今回みたいに派手に笑わす役ではなかったですよね。アーネストときゅうりサンドをめぐってふざけるところは笑いのポイントでしたが、あれはどっちかというとアドリブで笑わすところだったし……。セシリィとの歌で、バタっと倒れるところもあったけど。あーそれにしても、ちなつアルジャノン、映像で見たい……)
 話を戻しますと、本人がいかにも面白おかしいのではなく、役をきちんと演じてしっかりおかしい、というところが芝居巧者の本領発揮と思いました。芝居が上手い人はシリアスもコメディもいけるんだよね、と。というか、鳳月杏は、きちんと全体の中で役を演じる人なので、ちゃんと書き込まれた役を与えられるといっそう輝くな、と。それがイケメンの美味しい役なら、ファンとしてこんなにうれしいことはないです。
 とはいえ、不満はないわけではなくて……。編集長の出番が集中している二幕は全体に駆け足なので、紅緒とのラブが中途半端なのが残念。紅緒は編集長にひかれるも、少尉が帰ってきて、二人のイケメンの間で苦悩し……のあたりが本当はかなり盛り上がるはずなんですけど、あっという間だったので。その過程で、決め台詞の「全部忘れさせてやる!」があるわけですけど。これ、萌えセリフ、萌えシーンなんだろうけど、もうちょっとそこに至るまでの盛り上がりがないと私は感情がついていけない感じでした。いや、もちろん、ちなつちゃん声はエエし、名場面であることに間違いはないのですが、あまりに急展開で(←贅沢だぞ)。
 そうですね。贅沢ですよね。別箱二番手ももう3回目。下級生主演の別箱公演最強の2番手と言ってもいいのではないかと思ってしまったりもしますが(もちろん、それでいいと言っているわけではない)、この青江冬星役は、いままでにない超二枚目役だし、ヒロインと恋愛もするし、ということは主人公の恋敵でもあって、かなりいい役でした。少なくとも「MY HERO」のテリー・ベネットよりはちゃんと書き込まれていてよかったと思います。
 あとは……。私が見たのは公演の最初のほうなんで(初日ではないけれど)、すでに、だいぶ変わっているのではないかと思いますが、ある意味キャラ勝負みたいなところのある作品なんで、濃く、もっとかっこつけていってもいいんじゃないかな、と個人的には思いました。小柳先生の指導がどうなのかはわかりませんが。いずれにしても、これからどう変化していくのか、楽しみです。
 もうちょい濃くても大丈夫かな、と思うのは、ヒロインの華優希がかなり振り切れているから。
 ……というわけで、華優希。
 この公演のMVPを一人挙げるとしたら、やはり彼女でしょう。この作品は、前評判も高く始まってからもかなりの高評価で、将来的に宝塚の財産になるような演目じゃないかと思いますが、作品の良さはもちろんのこと「華優希のヒロインデビュー作」としてもファンの記憶に残るのでは?
 もう元気一杯の大熱演。しかも、ドジっ子をベタベタにやっても嫌味にならないところが絶妙。芝居が上手いことは「金色の砂漠」の若き日のアムダリヤや「邪馬台国の風」の少年タケヒコで知っていましたが、ここまでの演技派とは!(勢いだけでやっているように見えるかもしれないけど、彼女基本上手いですよね) ちょっと野々すみ花や咲妃みゆを彷彿させますが、もうちょっと地に足がついている系というか雑草系というか……。二人にあった、ちょっと別次元を生きている、ある種天然な雰囲気はないかな。
 というわけで、ぜひ高貴なお姫様とか年上の女性とかの役も見てみたいですね。彼女は、容姿から想像するのと違って、声が割と大人っぽいので、大人の女もけっこうハマるのでは。ちょうど、私が観劇した日に宙組の同期(100期生)が観に来ていて、そのなかには、次期娘役トップの星風まどかちゃんもいたのですが、彼女とはまた全然違うタイプ。華優希は、同期で2人目のトップ娘役になれるかな? 今回の紅緒でぐーんとそこに近づいたとは思います(ちょっと気が早い?)。

 残りはまた後日。

 しかし、ちなつちゃん、漫画をあまり読まないということは、「ポーの一族」も読んだことなくて、今、読んでいるとことか? 感想をぜひ聞いてみたいものですね。「はいからさん」と同じく読むのに時間がかかったかどうかも。

September 04, 2017

「たまちゃぴ婆」になる日まで

月組 東京宝塚劇場公演「All for One~ダルタニアンと太陽王~!」-01
 ついに観劇、小池修一郎氏のオリジナル三銃士。あと数回見る予定なんですけど、とりあえず覚書。
 いやー、当て書き万歳! オリジナル万歳! 小池センセーオリジナルも行けるんですね。海外ミュージカルの宝塚化は上手いけど、オリジナルは……とさんざん言ってごめんなさい!(笑)
 個人的には月組の前作「グランドホテル」がイマイチだった(作品としては大変スタイリッシュなのはわかったけど、珠城りょうのお披露目としてどうだったの?とやや疑問)のですが、今作は楽しめました。この作品、確かに一回しかやらないの勿体ないけど、再演(もうそれ考える?)時は、演じる役者にあった脚色にしてほしいな……。だって今のキャストに当て書きでしょ。
 おおらかでまっすぐで、ちょっと武骨なところもあるけどかっこいい珠城りょうがダルタニアン、お耽美系の得意な二番手みやちゃん(美弥るりか)が、世紀の色男・アラミス、正統派美形だけど、生真面目タイプ(しかも実は割にごつい)の月城かなとが、剣は達者だけど、いろいろ残念で笑われキャラの悪役・ベルナルド(ちなみに一応イケメン設定ですよね。誰にもモテていなかったけど)。
 ああ、しかし、この作品、再演には一つ「壁」が……。あの、キュートなルイ14世は元男役のトップ娘役愛希れいかだからこそ、の役なんですよね。これは……。ふつうの娘役にはなかなか難しそう。ルイ14世は、再演の場合はだいぶ印象変わりそうですが、まあ、それはそれでいいんじゃないかと。初演は初演、再演はまた別ものだし、やっぱり生の舞台が一番だし(と急に真面目)。とはいえ、このAll for Oneが、宝塚で何度も何度も上映されるようになってから、劇場で「初演のルイ14世をやった娘役はね……」と昔語りをする「団菊爺」ならぬ「たまちゃぴ婆」になっているかもしれませんが。私。
 プログラム読んだら(ちなみに、今公演のプログラムはやたら充実! しかも、夢奈瑠音くんまで(ページ5人写りまで)、顔写真に役名が付いていて親切! プロフィールページも内容充実! だけど、ここの稽古着姿の切り抜きはやめたほうがいいと思う。稽古着姿って単独で見るとヘン)、小池氏が、「(愛希れいかにルイ14世をやらせたら)『リボンの騎士』みたいで面白いのではないかと思った」と書いていましたが、なるほどー。ほんと、ちゃぴに「男として生きなくてはいけない女の子」をやらせた小池センセーはえらい。
 そのほか、初見で気づいたメモ。
・沙央くらま……正しい専科の使い方、という感じがしました。組子の役を取るのではなく、組子にできない役をやる、という。若い専科さんの場合、どうもそのへんがモヤモヤしがちなので。コマちゃん、十分若くてキレイなうえに、モンスター感がしっかり出ていて、上手い。
・蒼真せれんくんに、単独でセリフを言う場面があって「ををを」と思っていたら、さらにもう一回ありました。「看守S」みたいな役だな、と思って、終わったあとでプログラムよく見たら、ちゃんと単独で「獄吏」という役名がついてましたね。あまり目立つグループとかにはピックアップされずにここまで来ていますが、学年があがってそれなりに役付きがよくなっているのかな。
・風間柚乃くん! すごいや。こんなに重要な役とは。ジョルジュは、ある意味、新公主役の蓮つかさくんより目立つ役。そして堂々としたもんでしたね。声もできているし芝居も上手いし、メイクもキレイだし、なにより面長の男役顔。完成度高し。今回の新公で3番手ベルナルドをやっているけど、今後しばらく月組の新公は「風間時代」なのかな? と思いました。今回は披露してなかったけど、歌が上手いのはバウ・シンギング・ワークショップやスカステ番組で実証済みだしね。研4。
・礼華はるくんは、衛兵として出ていることが多かったですね(私は「グランドホテル」のドアマンで認識)。新公は暁千星のポルトスか……。彼女も一応スター路線候補かな。背が高くてスタイルは問題なし。素顔はあっさり、のメイク映えするタイプと見ましたが、どうもメイクがイマイチのような……。素材は極上と思うので(だから劇団もアゲているんですよね)、ぜひ美しく化けていただきたい。研3か……。
 
 で、一人、「町の男」に美形を見つけたんですが……。彩音星凪くんかな? 次回観劇への課題(笑)。彼女だとすると礼華はるくんと同じ研3か。
 あ、研1さんで気になった瑠皇りあ君は、少人数のスペイン兵だったので大変わかりやすかったです。ちょっと背が低いのかな。でもお顔がはっきりしていて好印象。

August 27, 2017

邪馬台国は忘却の彼方に

花組 東京宝塚劇場公演「邪馬台国の風」「Sante!!」-01

 千秋楽を迎えてしまいました。
 ちょっとさかのぼればおわかりでしょうが、このブログ、更新頻度はあまり高くないです。そして、私はくどくど書く公演と書かない公演の差がかなり激しい……。東京宝塚劇場の公演は全組見ているにもかかわらず。
 好きすぎて、何回にもわたって生徒について、演じている役について、ツボにはまったシーンについて、あれこれ書いてしまう公演がある(ウエクミ先生の作品がこれ)。反対に、許せないセリフ、怒り心頭の設定があって、それについての違和感、ときには改革案(笑)を書き連ねたくなる公演もある(ベルばらがこれですね。まあ、再演ものだから、もうそんなに新しい発見はないけど)。
 さらに、それとは別に、どうも筆の進まない公演というがありまして……。
「邪馬台国の風」がまさにそれでした。最初こそつっこみどころ満載、と思って見ていましたが、回数を重ねるうちに、思考停止状態になってしまったというか、どうでもよくなってしまったというか……。たとえば、観劇前には「よし、今日は、タケヒコの何が問題か、ヒミコへのセリフをもう一度注意して聞いてみよう」などと思ったりしたのですが、いざ芝居が始まるとセリフがちっとも頭に入ってこなくて…。
 二回目以降は、芝居を見ているというより、筋はあまりない音楽劇(そんなこといったら音楽劇に失礼だぞ)かなにかのように、見ていましたね。歌やダンスのシーンが多いしね。
 たぶん、タケヒコのヒミコへの態度がイマイチはっきりしないのが(特に寝所に侵入したとき)致命的じゃないかと思うんですが(ラブストーリー的には)、とにかく、主な登場人物がすべて書き込み不足で行動原理がよくわからないんですよね。だから「美味しい役」がほとんどない。うーん、美味しい役といえるのは、アケヒとツブラメぐらいかな。
 みんな衣装とか鬘のビジュアルがよかったし、それって宝塚では大切なことだけど、それだけではやっぱり困る……。(個人的にビジュアルが一番いいと思ったのはクコチヒコかな。黒い二番手キキちゃんかっこよかった。役は……本来なら美味しい敵役のはずが、やはり書き込みが少なくてもったいなかった)
 個人的には、もちろん鳳月杏演じるアシラ様が、なぜか戦闘シーンには全く出てこなくて、おまぬけなセリフのせいで、どうも察しの悪い人物にしか見えない(ついでに記憶力も悪いよね)のが辛いところではありました。モヒカン風の髪型かっこよかったし、イケメンボイスのおかげで、頼れる兵の長という雰囲気は出ていましたけど。
 それにしても、この作品、確かに神経逆なで、とか「激怒ポイント」はないんだけど、なんか、あんまり改良する気にもならないのはなぜなんだろう……。そういう意味では興味深い作品でした。
 というわけで、続くのか心配だけど、たぶん続く。

July 17, 2017

ちぎみゆと私

雪組 東京宝塚劇場公演「幕末太陽傳」「Dramatic “S”!」-03

 あと一週間で千秋楽。ちぎみゆ退団ですね。千秋楽ライブビューイングはとれなかったので、先日の観劇で私は見納めです。
 ちぎちゃんを最初に意識したのはいつだったか……。確か、宙組の「Never Say Goodbye」(2006年)をものすごくいい席で見た時、革命ダンスでちょうど目の前にいたのがちぎちゃんで、「私、ちぎちゃんに少なくとも2回は撃たれたと思うlovely」と言っていた記憶があるから、そのころにはもう認識していたんだな、と。宙組の頃は若くてかわいい少年っぽさが売りだったと思うけど(「宙 FANTASISTA!」のチギーチュとかね)、 雪組でトップになってからは、漫画原作ものが当たって、大入りを連発、ということで、代表作というと、「るろ剣」とか、「ルパン三世」とかになるんでしょうね……。あ、上田久美子先生ファンの私としては、もちろん、「星逢一夜」も代表作だと思ってますが……。
 少年役者チギちゃんが、まさか、漫画原作ものというのか2.5次元というのか、こっちの路線を成功させて名を馳せるとは。芝居力とセンスで、割と宝塚っぽくない、型芝居ではない作品でも的確にこなすことができた、ということなのかな……。まあ、少年ぽさでいえば、「るろ剣」なんかは少年性を生かしていたかな? 少年マンガだし。
 とはいえ、私が好きなちぎちゃんは、どっちかというと少女漫画系のダークな美少年の役でして、一番記憶に残っているのは、実は「ニジンスキー」(2011年バウホール・日本青年館)かな。あのときはどっちかというと、緒月遠麻目当てで行ったんだけど、ちぎちゃんのニジンスキーもとてもよかったし、あと、毎回ある終演後の挨拶がとってもかわいくて、でもすごくしっかり健全な性格が伝わってきて、「ああ、これが人柄に惹かれる」ってやつか……と初めて思ったジェンヌだったかもしれません。あと、これは小さな役だったけど、水さん主演の「ロジェ」(2010年)のキレるボディーガード?のクラウスも一皮むけた?って感じで印象的だったな……(この路線はあまりその後なかったようで残念)。 
 退団公演となった「幕末太陽傳」の佐平治は、全然二枚目の役じゃなくてどっちかというと三枚目なんだけど、何をやっても華があって、さすがですね。

 ゆうみちゃん(咲妃みゆ)はね……。月組時代からよく見ているので、感慨無量です。最初にゆうみちゃんを知ったのは、明日海りお主演「アリスの恋人」(2011年)のドードーかな。この時は眼鏡で顔はよく分からなかったけど、達者な娘役さんだな、と。ゆりやん(紫門ゆりや)の演じる帽子屋の相手役でしたよね。次は同じく明日海りお主演の「春の雪」(2012年)のヒロイン・聡子。これはなかなか神がかっていました。「歌劇」誌の対談で、ゆうみちゃんも言っていたけど、門跡様(白雪さち花)と二人のシーンがすばらしくてね……。それにしても、「歌劇」誌のサヨナラ対談の相手にゆうみちゃんが白雪さち花様を選んでいたのは驚きました。読んでみると、トップ娘役になってからもいろいろ相談していて、ちぎちゃん(早霧せいな)も、廊下等でさち花様を見つけるとわざわざゆうみちゃんを呼んで、「はい、喋って良いよ」と言ってくれるとか(詳しくは「歌劇」7月号「<咲妃みゆサヨナラ特集>この世界でめぐり逢って(サヨナラ対談)」参照。私はこの号ではこの記事が一番面白かったです)。トップ娘役と組替え元の組の上級生娘役の絆……。いい話だ。
(あ、話戻ります)
 次は、珠城りょう主演、上田久美子デビュー作の「月雲の皇子」(2013年)のヒロイン・衣通姫。この作品は、今思うと奇跡の組み合わせ、奇跡のキャスティングじゃないかと思うけれど、彼女の衣通姫のあの、地上10cmぐらいを浮いているような浮遊感、浮世離れ感がすごかった。彼女あっての「月雲」だったなあ、と思います。
 雪に移ってからは、芝居はいいんだけど、メイクは相変わらずイマイチだし、ショーだとちょっと華やかさに欠けるかな、大丈夫かな、という感じはありましたが(とほとんど親戚のおばちゃん目線)、今では堂々としたものですね。決して美人ではないかもしれないけれど、ヘアやメイクも上手くなったと思う。この数年の雪組の人気は彼女の貢献も大きいと思います。っていうか、やっぱりトップ娘役は芝居が上手いほうがいい、ですよね。シミジミ(もともと大空×野々ファンなもので)。まあ、これはチギちゃんにも言えるのだけど、雪組に来てからはちょっとコメディ系が多くなって、彼女の浮世離れしたシリアス芝居があまり見られなかったのがちょっと残念かな(「星逢一夜」ぐらいかな。私は全ツを見ていないもので)。ケイレブは作品はイマイチでしたが、現代的なヒロイン、イヴォンヌは良かったし、最後の「幕末太陽傳」の女郎おそめも堂々としたものでした。
 ああ、月雲の主要キャストもついに一人卒業か……。

July 09, 2017

長州藩士に注目!

雪組 東京宝塚劇場公演「幕末太陽傳」「Dramatic “S”!」-02

 この「幕末太陽傳」初見でまず盛り上がったのが、長州藩の藩士たちのナンバー。だって、長州藩士、私の注目ジェンヌが多くないっすか? ありがとうございます。しかも、群像劇で多くの生徒に見せ場があるこの「幕末太陽傳」のなかでも、長州藩士はちゃんと自分たちだけのナンバー(レボールーション♪の歌)もあって、ソロもそれぞれ数フレーズあってすごくおいしくないですか!?
 ここでいきなりそもそも論ですが、私がなぜ、宝塚を愛し、劇場に足しげく通って同じ作品を何度も見ているか、と考えると、下級生の中からお気に入り君を発見する楽しみ、そして、センターに立つわけではないけれど、男役度めきめき上げてきて、黒燕尾に欠かせない中堅学年の男役を愛でる楽しみがあるのです。いや、本当、センターではない生徒たちがいてこその宝塚だと思うんですよね。
 で、高杉晋作(望海風斗)率いる長州藩士の面々を見ると、中堅実力派男役と若手伸び盛り男役の宝庫ではないですか……。例えば、

橘幸(長峯内蔵太)……ちょっと丸顔なんで、普段はどうしてもかわいらしい印象になってしまうのですが、今回はお髭が似合ってました。くまさん系のワイルドな顔になっていて、丸顔の人にはあごひげおすすめかも。歌い継ぎのところはちょっと声量がなくて今一つだったかな(もしかしてそういう歌唱指導なのかもしれないけど)。ショーでけっこう「歌手」としてピックアップされている割には、ですが。体格的には恵まれていないけれど、気になるジェンヌの一人です。研8

叶ゆうり(大和弥八郎)……最近立て続けにスカイステージで彼女のトークを聞いて(まずはスカステニュースの97学園と新人公演トーク、トドメは「オシエテ」)、聡明ぶりに注目度アップしております。なんていうか、しっかりしていて頼れる先輩・同期というタイプ(なぜかそこだけジェンヌ目線?)。お芝居上手いな、という印象は前田慶次新公の直江兼続のときにもあったのですが、なかなか本公演では目立つ役がなかったように思いますが、今回は、焼玉を隠すために食べてしまったりと目立つ行動もあってご活躍。無精ひげが似合いすぎているのですが、あれだけ立派なあごなのに(いやほんとジェンヌになるために生まれてきたようなあごです)、さらにまた髭を付けるって……もちろん最強です。研7

諏訪さき(白井小助)……私が好きな「ふてぇ」系ジェンヌ(ほめてます)。面構えがいいですよね(もちろんほめてます)。ちょうどスカステで放送されたばかりの「るろうに剣心」新公のジェラール山下は闇落ちしたキャラが、まさに彼女の持ち味にぴったりでした。彼女を最初に認識したのは前田慶次新公の願人坊主ですかね。セリフはあまりなかったと思うけど、貫禄、目ヂカラがあってとても研2には見えなかった記憶が。彼女はもしかしたら新公主演するのかな、と思っているのですが、どうでしょうね。一年上の98期の綾凰華が星から組替えで来ることがどう影響するのか? 研5

陽向春輝(伊藤春輔)……彼女は「星逢一夜」新公のちょび康で注目したんだったかな。子役にぴったりのルックスだけど、けっこう骨太のところもあるしお芝居も上手いですよね。「るろうに剣心」新公の斉藤一役、とてもよかった。メイクの具合か、この役、一瞬音月桂に見えました。研5

眞ノ宮るい(有吉熊次郎)……彼女は今公演でぐぐっと上がってきましたね。雪組下級生といえば、一期下の縣千が前から爆上げ状態で、「幕末」新公では二番手望海風斗の役高杉晋作をやっていますが、本公演では、「ガエン者」役とちょっと控えめ。その代わり、この長州藩士メンバーに最下(研4)で入ったのが彼女。焼き討ちの相談をしている最中、佐平治がすす払いにやってきたときには、慌てて腕立て伏せしたり、袴で焼玉制作のための本を隠す小芝居を楽しそうにやっていますね。すっきり小顔でシャープな顔立ち。髪は長めで、若武者っぽい感じよく出ていたと思います(たぶんあのなかで一番若いという設定ですよね)。彼女に最初に注目したのは、確か「銀二貫」の大根屋。雪は縣君押しというのは変わらないとは思いますが、その前後はぺんぺん草も生えない、ということをやるのもよくないので、眞ノ宮くんもこれから上げてくるのかな。研4

ふと気づいたのですが、長州藩士メンバー、リーダーの高杉晋作を演じる望海風斗はもちろん歌ウマですが、ほかの藩士たちもけっこう歌えるメンバーが揃っていますね。全員で歌い継ぎやってもテンション下がることがない。別に歌で選んだわけではないでしょうが、これは珍しいかも。ふつうは一人や二人歌が苦手な生徒が入っていたりするじゃないですか(笑)。あ、よく見たら、煌羽レオ、橘幸、叶ゆうり、諏訪さき、眞ノ宮るい、と6人中5人が「Bow Singing Workshop」の出演者なんですね。

しかし、ふつうは二番手男役につく若者グループ、ナンバーもあり、だったら組の将来を担う若手路線男役で固めてきそうですが、今回、全体に役が多かったせいか、新公主演の永久輝せあ、路線まっしぐらの縣千が入らず、ちょっと別格系の中堅~下級生の男役中心で構成されているのは珍しいといえば珍しいかも。今のところ、新公主演者がいなくて、する可能性がありそうなのは、もしかしたらの諏訪くんと、初のいい役なんで、未知数すぎる眞ノ宮くんぐらいだし……。

たとえば、永久輝せあの役(清七)は、確かに単独行動するしセリフもそこそこあるけど、なさけない大店?のボンボンだし、歌わないし(ですよね)、三枚起請の場面以外ではほとんどモブ扱いだし、長州藩士のほうが路線っぽいと思いますけどね。コメディ修行なのか?
 
 

July 08, 2017

川島監督へのリスペクト

雪組 東京宝塚劇場公演「幕末太陽傳」「Dramatic “S”!」-01

 早霧せいなと咲妃みゆのサヨナラ公演。もっというと、香綾しずるも鳳翔大も……。長く見ていた生徒たちがたくさん退団する公演というのはやはり寂しいものです。
 「幕末太陽傳」。もとになっているのは、1957年の日活映画。監督は川島雄三。そして、小柳先生は、川島雄三のようなプログラムピクチャーの監督になりたい、と思っていたそうで……。だとすると、満を持してのタカラヅカ化……という感じなのだろうか。
 結論から言うと、さすが小柳先生、とても楽しいミュージカルになっていました。
 実は、初回観劇は、まだ映画を見ていない状態だったんだけど、そのときから、「これ、相当映画に忠実なんだろうな」ということは推測できました。登場人物のキャラクターなどが、かなり宝塚らしくない作品だったから。で、DVDレンタルして見てみたら、想像していた以上に映画に忠実でしたね。セリフもかなりなぞっているよね……。登場人物やエピソードもほとんど同じ。でも、お芝居の合間にうまく、主要メンバークローズアップミュージカルシーンを挿入していてタカラヅカ化しているところが、さすが座付き演出家。原作もののミュージカル化を手掛けるときのいいお手本になりそうです。メモメモ(←いや、あなたは原作もののミュージカル化を手掛けることは一生ないと思うけど)。相模屋での総踊りとか荒神祭のシーンなどの大勢のミュージカルナンバーも楽しかったですね。
 あ、それに原作の映画が群像劇なので、無理に変なエピソードやオリキャラを作らなくても役はじゅうぶんあったというところはタカラヅカ化に向いていたな、と思います。原作にはもう少し、ヒリヒリするような人生の辛さ、悲しさとか、皮肉とかが漂っているんだけど、そのへんは薄められていたと思うけど、それはまあ当然と言えば当然だからいいんじゃないかと。
 
 が、細かいこと言えば、ちょっと気になるとことがないわけではない。
 まず一つ言うと、やはり映画の登場人物をそのまま宝塚で演じようとすると、けっこう無理が出てきて、役の輪郭がかなりぼけてしまう、ということですかね。一番顕著なのが、金造。相模屋に出入りする貸本屋。おそめの勝手な都合で心中の相手に選ばれるけど、結局おそめが途中で裏切って、海に沈められちゃうという……。これを今作で退団の鳳翔大がやっていて、三枚目だということはわかったけど、そこまでひどい目に合わされて笑われるってどういう人なんだろう……と舞台を見ていてちょっととまどったといいますか。もちろん笑えるようにちゃんと作ってあったから基本は笑って見ているんだけど。
 で、DVDを見てみたら、映画では、この金造を、えーとなんと形容したらいいのでしょう、もともと性格俳優で、晩年はラジオの語りと演芸研究家として有名だった、あの小沢昭一がやっていて、しかも顔に嘘くさい発疹をボツボツ貼り付け、呼び名がアバタの金造こと「アバギン」なんですね。つまりアバタ顔の冴えない中年男。小沢昭一の演技も上手い(くどいともいう)ので、このアバギンが、みんなから軽く見られているような男なのが伝わってくるし、おそめが「いっそ殺したほうが世のため人のため」、やり手婆のおくまからも「死んでもかまやしない」的なことを言われていた(セリフは宝塚より。映画の正確なセリフは忘れました)のもまあ納得(いや、劇の上ですよ)しちゃうんですよね。さらに、映画では海から這い上がってきたあと、部屋で「うらめしや」とやるシーンもきちんとあるので(ここは宝塚では省略)、彼の「やられっぱなし」で終わらないしつこさ、ただでは起きないしたたかな感じがよく出ていたかな、と思いました(ついでにいうと、やり手婆のおくまは映画では菅井きんがやっていて、やり手婆然としているんだけど、宝塚のほうはちょっとわからなかなったなあ。こういう宝塚を逸脱した記号的な役って困りますよね……。まあ、おくまがやり手婆と分からなくてもそんなに困らないけど)。
 というわけで、この金造はそれなりに重要な役だけど、長身・美形の宝塚の路線男役がやる役ではないというか、そもそも、「人を落とす笑い」(差別の笑いともいう?)って宝塚では難しいですよね。それをスタイル抜群の美形男役鳳翔大がやるんだから、どうしても不思議な存在になってしまう。もちろん、この公演で退団する彼女にもそれなりの役をと考えてのことでしょうし、彼女にアバタメイクをさせる必要があったとも思わないのですが。
 映画ではフランキー堺が演じた主人公の佐平治にしても、魅力的ではあるけれど、二枚目ではないし、けっこう計算高くて皮肉っぽい部分もあってこれも宝塚でトップ男役がやるような役ではないですよね。早霧せいな演じる佐平治は、ちゃっかりした部分は出していたし、コミカルな演技も達者だったけど、皮肉っぽさ(毒の部分)は薄まっていました。いや、宝塚だし、トップ男役だからそれでいいんだと思いますが。ただ、だとしてもカッコよさに欠ける役だったのは、男役早霧せいなの最後の役としてはちょっと残念だったかな。たとえば、同じ早霧がやったルパン三世は、コミカルな役だったけれど、色気があってかっこよかったから、その点では佐平治とはちょっと違うような。
 そして、宝塚ジャーナルの評(ここ)にもあったけれど(いつも愛読しております)、トップコンビの恋愛要素が薄い、というところもやや残念。まあ、どっちかというと、私はトップコンビは常にガチで恋愛していなきゃいけないとは思わないほうなんですが(たぶんそれって宝塚ファンでは少数派)、さすがに「愛」を謳い続ける宝塚の、トップコンビの退団公演で恋愛要素が薄いのはファンの気持ちを考えるとどうなのかな、とは思いました。
 まあ、それはこの原作が恋愛を描いたものではないからしょうがないと言えばしょうがないんですけどね。あ、でも、原作ではヒロインはほとんどダブル状態だったけど、小柳先生はヒロインを明確にし、二人の歌のシーンも作り、ラストシーンも佐平治一人ではなく、佐平治とおそめの場面に変えてますけど(ってか作品中ここの変更が一番大きいですよね)。
 あれこれ違和感を書いていますが、一番最初に書いたように、この作品、タカラヅカ化にはちゃんと成功している良作だと思ってます。
 思うに、宝塚とは世界観が異なる作品を原作に選び、しかも極力設定やセリフを変えなかったのは、ひとえに原作へのリスペクトからですよねー。なんか、いいなあ。そういうの。
 そして、私が一番楽しみなのは、自分の人生に大きな影響を与えた川島監督の作品をタカラヅカ化した小柳先生が、このあと、どのようなオリジナル作品を作ってくれるか、ということですね。小柳先生は宝塚のプログラムピクチャーを目指すのかな? いずれにしても、川島作品のタカラヅカ化はその通過点としてとても重要、というか避けては通れないものだったのではないかと思うので。
(ちょっとエラソーですみません)

«シモンもジャックももっと苦悩しようよ!