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February 05, 2017

「金色の砂漠」テオドロス編

花組 東京宝塚劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」-03
 テオドロスって、かなり美味しい役なんじゃないかと思うんです。イケメンで都会派というキャラが立っているし、とんでもない価値観を持っている砂漠の国の人々とは違って、ぐっと現代的な感覚があり、観客に近い、つまり共感を得やすい。あの登場人物のなかで、実は一番クレバーなのかな、とも思います。まあ、クレバーなのがあの話の中では幸せかどうかは別として。
 彼のクレバーさが発揮されるのが、タルハーミネ駆け落ち発覚からの命乞い演説ですよね。あそこのテオドロスはすごくいいこと言っている。ジャハンギールには、「あなたに似たこの気高い姫を愛しておられませんか」と痛いところをつくし、タルハーミネに言う「なぜ父君を救われぬ」も(このへんのクレバーさは脚本を読むと大変よくわかるのですが、どうも柚香光の滑舌の悪さが、セリフの浸透力を弱めているような。さすがに何を言っているかわからないということはありませんでしたが)。タルハーミネは、激情家ではあるけど、王女の誇りを強く持っていて、父王をすごく尊敬している。彼はそこに賭けたんでしょう。最初に、「私には実利がある」と言っているけれど、テオドロスは、タルハーミネと結婚してこの国の王になりたい、ということはもちろんあるんだけど、タルハーミネを失いたくないというより(彼女への思いは冷めてしまったのでは?)、くだらない「誇り」とやらで、ジャハンギールが娘を手にかけるという事態を(王のため、国のために)なんとか止めようとしていただけではないかな、と私は思います。
 で、最悪の事態を回避したあとは、さすがに、タルハーミネのことは前と同じようには接することはできないけれど、この野蛮な国には完全に絶望していないというか、このジャハンギール王のもとでやっていこうというやる気は失っていなかった、と。確かに「実利」の人ですね。彼も、ガリアには居場所はなくて、ガリアの力を借りつつこの未知の国でやっていくしかないと腹はくくっていたのでは。 
 7年たってもタルハーミネが自分に心を全く開いてくれないのはちょっと誤算だったのかもしれませんが。
 そして、彼は全く自分と違う価値観を生きているとはいえ、ジャハンギールのことは評価していたように思いました。というかこの国の価値はこの王に依るところが大きい、と認識していたのでは。だから、ジャハンギールが奴隷、しかも自分の妻と駆け落ちしようとした奴隷に殺されたときに、この国を見限ったのではないか、と。
 そう考えると、国を出ていくというあの行動はじゅうぶん理解できるのです。しかし、ここで私が気になるのが、あの、去り際の「フンッ」なんですよね。あの軽蔑するような言い方が、テオドロスをちょっと軽い人間にしてしまっているというか……。テオドロスファン(笑)としては、残念。あそこは、むしろ冷静なビジネスマンの選択だと思うので、「誇り」にすがっているタルハーミネを憐れむような視線があってもよかったかな、と。「わかっていないのはあなただ」、もっと説明するとしたら「偉大な父王が死に、あなたの思い人が返ってきたこの国に、もはや私がいる理由はありません(いままでないがしろにしておいて何言っているんだ)」ぐらいの感じ? あの「フンッ」だとちょっと人間が小さく見えてしまうようで……。
 まあ、彼も本当は不幸な人だとは思います。ガリアでは末っ子?でじゃけんにされ、父王(絶対父親にコンプレックスあり)によって野蛮な田舎の国に政略結婚しに行かされ……。あ、テオドロスはジャハンギールに父の幻影を追っていたのかも……。武術はダメダメな婿だけど、ジャハンギールは自分の知らない世界から来たテオドロスのことはそれなりに評価していたのではないかと。少なくともバカにはしていないと思うんですよね。
 ちょっと妄想入っているかな……。
 
 というわけで、いろいろ美味しいテオドロス役。柚香光のテオドロスは、イケメンぶり、ナルシストぶりはすごく出ていたと思うけれど(あれはなかなかできませんよ。究極の当て書き)、セリフが弱いことなどもあって、その美味しいところをフルに利用できていなかったような気がしてちょっと残念です。いや、ほんとはまり役だとは思うけど。

February 04, 2017

「金色の砂漠」ジャハンギール編

花組 東京宝塚劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」-02
 もうすぐ終わってしまう「金色の砂漠」。今回はジャハンギール編(6日にちょっと手を入れました)。
 
 いやもう、鳳月杏ファンとしては、大変うれしい作品でした。ヒロインの父で、主人公の敵役でもあるジャハンギールって、ストーリーからふつうに考えると、しぶい上級生がやってもおかしくないような役ですよね。実際、ジャハンギールの死に様をあっさりさせれば(あ、あと娘の命乞いももう少しあっさりかな)、ちょっと美味しい別格上級生の役にすることも可能だったと思う。しかし、上田先生はそうはしなかった。ジャハンギールの死に際が一つの見せ場になっていて、いや本当に感謝しかないです。もちろん、中盤の娘に死を命じるところもかなりいい場面だよね。あと、結婚式のところでも舞台の中央は王様だし……。あんなに見せ場をもらうことができて、本当に……。お礼をいいたい(笑)。
 王様は単なる脇役ではない、重要な登場人物の一人。しかも、アムダリヤとの関係が想像を掻き立てて、スピンアウト望む声多数(笑)。たしかに、もっと知りたくなる二人なんですよね。ジャハンギールとアムダリヤ。過去に取引をして始まった関係だけど、王妃も王を愛してしまい……。そんなアムダリヤの葛藤とか、略奪婚直後のジャハンギールとアムダリヤのやりとりとか、もっと知りたくなる(笑)。しかし、さすがにそっちを書き込んだら、全体のバランスが崩れてしまう。トップ男役に始まる宝塚の秩序から考えたら、ジャハンギールの書き込みは、今ぐらいがギリギリだったのかな、とも思います。
 この作品、「宝塚の番手」という意味ではかなりしっかり作られているんですよね。そういう意味ではオーソドックス。しかし、トップ、二番手、三番手以外のところは、割と演出家の意図が出ているのかな、と思います。
 たとえば、天真みちる(ゴラーズ)の役の大きさ、とか。もちろん彼女の上手さはファンならみんな知っていることだけど、いままでにない大きな役ではないですか? 第三王女の音くり寿については、別箱、新公では活躍しているから特に驚くことではないかもしれないけれど、本公演に限っていえば、初めての大きい役。あと、出番は少ないけど、鞠花ゆめ(ルババ)は非常に効果的に使われているし。若手でいうと、回想シーンのアムダリヤの華優希もなかなかの抜擢かな。つまり、番手以外、上級生以外のところでは、芝居のできる生徒を積極的に配している、といいますか……。
 
 でもって、ジャハンギール、鳳月杏なのです。
 鳳月杏のいまの花組での地位は、男役トップ明日海りお、二番手芹香斗亜、三番手柚香光の次にくる、四番手五番手グループ。あえて順番つけると四番手が瀬戸かずやで、五番手かな。しかし、この四、五は、二、三より学年が上でやや別格。トップが退団、あるいは二、三が組替えしたときに二、三に繰り上がることが確実視されているものではない。
 今回の公演を見て、いまの花組はトップ、二番手、三番手ははっきりさせているけど(過去にはそのへんがぼかされている組もあり)、この三人だけでなく、瀬戸かずや、鳳月杏も含めた五人、ときには水美舞斗を入れた六人をピックアップしているシーンが目立つような印象を受けました。っていうか具体的にいうと、金色フィナーレの黒燕尾、最初の大階段板付きが五人で、その後、舞台に降りてきたときの戦隊ポーズは六人(あ、ここプログラム見たら、役としては、熱風の男Sが明日海りお、Aが芹香斗亜と柚香光で、瀬戸かずや、鳳月杏(もちろん、水美舞斗も)は、ほかの男役と同じただの「熱風の男」なんだ!! いや、このへんプログラムと照らし合わせて誰なのか確認している人は少ないと思うけど、ちょっと実際の見え方と違うよね……)。
 まあ、たまたまそういう構成にしてみただけなのかもしれないけど、少人数の黒燕尾大階段板付きにピックアップされるなんて、鳳月杏ファンとしてはちょっと感激でした。
 
 そんな鳳月杏の今回の役、ジャハンギールはストーリー上は、トップ、二番手、三番手に次ぐ、あるいは年取っていることを除けば、それほど二番、三番とは差がないともいえる大きな役。とはいえ、銀橋ソロ歌はないなど、宝塚的に言えば、二番手、三番手とはちゃんと差がついている。
 
 ここで激しく脱線しますが、この作品、当て書きがぴったりはまっているから、なかなか再演難しいように思うけど、二番手、三番手の持ち味に合わせて役の比重を変えていけばけっこうおもしろいと思いました。つまり、ちょっと年上に見えるような渋めの二番手がいる組だったらジャハンギール王二番手とか、ツンデレ王子が似合いそうなイケメン二番手だったらテオドロス二番手とか。なかなかいいんじゃないでしょうか。それぞれの役が二番手になれるような要素満載ですもんね。
 ただし、そもそも、トップがこじらせ奴隷のギィくんのキャラなのか、という大問題がありますけど(あの役が似合うトップ男役はそういないかも……)。やっぱ再演は無理かな(笑)。
 
 それはさておき、そんな二番手にしてもいいようないい役を上田先生が鳳月杏に当て書きした、というのはファンとしては有り難いことで(そこには、「月雲の皇子」からの信頼感もあるのだろうけど)、鳳月杏はその演出家(作者)の期待にじゅうぶん答えていたと思いました。王としての貫禄、鷹揚さがとてもよく出ていて。最初フケ役かと思ったけど、実は威厳はあるけど若々しく、二枚目で、ラブ要素もあり、ちゃんと路線の役になっていたと思いました(ちょっと贔屓目入っているかな)。個人的にはもう少し荒っぽい感じがあってもいいのかな、とか思いましたし、セリフもよく通っていたけど、ときどき聞こえづらいところがあったのがちょっとだけ気になったけど(これはほんのちょっと。というかこの芝居、がなるところが多くてみんな大変)。冒頭だって、歓迎の宴のあと、ゴラーズさんの「見事見事」を受けて、芝居の第一声といってもいいセリフ(歓迎の言葉)を言うのはジャハンギールだし。もちろん、厳密にいえば、この芝居の第一声は、一番最初の砂漠のシーンの「追放者」の「もう少しでオアシスにつく……」だけれど、あれは誰が発したかわからない設定だから、このジャハンギール王の第一声は、砂漠の王国の物語の「始まり」としてかなり印象的。でもって、王様が、エエ声でね……。かっこよかったです。

 ここでまた脱線するけど、最近鳳月杏の出ている新人公演の録画をいくつか見たんです。で、例えば、「アルジェの男」のジャックなんて、二番手の役で出番は多いしカッコイイんだけど、正直、技術的にはまだまだなところも多く、「今やればすごくかっこいいんだろうけどね……」と微笑ましくなったりしていたのですが、「夢の浮橋」新人公演でやった宰相中将は、役は大きくないけれど、ほかの生徒と比べても、時代劇特有の感情を抑えたセリフ回しの完成度が高くてちょっと驚きました。実は、この「夢の浮橋」新公で、私は初めて鳳月杏を認識したのですが、それも納得、というか、こういう時代劇的なセリフ回しは学年が低いうちからうまかったんだな……と。今の彼女はお貴族様が出てこない現代モノでも達者にこなすけど、「金色の砂漠」のジャハンギールみたいな大仰な芝居(時代劇)、重々しいセリフは昔から得意分野ではあったんだな……と改めて思いました。
 
「金色の砂漠」の話に戻ります。第一声のこと書いていて思い出したけど、歓迎の宴の王様の振り付けだけは……ちょっと物足りなかったかな。あれなら王様は踊らなくてもよかったような。だって、私、最初にテオドロスが、「なかでもとりわけジャハンギール王は見事」と「世辞」(笑)を言っているのを聞いたとき、「え、王様パフォーマンスしてないし。なんで?」と思いましたもん。その後気づいたけど、あの振りが王様の踊りだったのか。(笑)
 
 とにかく、このタイミングでこの役に巡り合えてよかった……。ファンとしてはただただ役を書いた上田先生と、それを自分のものにした鳳月杏、そのめぐりあわせに感謝。
 一か所だけ、気になるセリフは王様が死を覚悟して、「私とは、恋に惑い、禍根を残すとは」と言うところの「恋に惑い」なんですが、「恋」って言葉がちょっと軟弱な感じがして、時代がかったキャラのジャハンギールには似合わないような。うまく思いつかないけれど、「女」とかでもよかったのではないかと思ったりしました。そうでもないか?

 話が行ったり来たりしていてすみません。次は、実は、最も気になる登場人物?テオドロス編(の予定)。
 

January 30, 2017

日本物ショーを世界遺産に

花組 東京宝塚劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」-01
 東京公演ももう終わり。寂しくなるな……。私、この公演の芝居とショーの組み合わせって、何年に一度といっていいくらいの好カードじゃないか、というか、えーっとなんていうんでしょう。両方とも質が高く、全然違ういい組み合わせだと思うんですよ。珍しく知り合いにも勧めちゃいましたし(宝塚は好きだけれど、全公演見るわけではない知人に)。
 特に「雪華抄」、観る前はあまり期待していなかったのに、観たら意外によくて、芝居と違って筋がないぶん、脊髄反射的な(この言い方でいいのかな……)楽しみ方をしているせいか、回数を重ねても常に新鮮で、もう、「金色の砂漠」より好きなんじゃないかと思うこともあるくらい……。(いや、「金色の砂漠」は大大大好きなんだけど)
 というわけで、「雪華抄」のツボ。脊髄反射だから、説明しづらいんですが……。
 私は宝塚歴14年ぐらい。そのあいだに日本物のショーを何回か見ているわけですが……。えーっと、星組の「さくら」とか、「宝塚花の踊り絵巻」「宝塚ジャポニズム~序破急~」、月組の「宝塚をどり」かな。こうしてみると星組多い……。
 でも、今までは、日本物のショーって正直言ってあまり好きではなかったのです。けっこう退屈で。
 じゃあ今回、何がよかったのかな、と考えてみたけれど、ざっくりいうと全体のテンポと、音楽の使い方かな。割とテンポよくて現代的なせいで、飽きが来ない……。
 印象的だったのが、松本先生のシーン。舞台上はけっこうシンプルで、音くり寿のカゲソロが響き渡る。松本先生の場面って日本物のショーでは必ず入れなけれならない課題というか、ショートプログラムの要素(っていうんですかね)みたいなものですよね。でもっていままで観たケースだと、ここで観音様みたいなのが出てきたり、声明(しょうみょう)使っちゃったりしちゃったんじゃなかったでしたっけ。ここは単調になったらいかん、と思って何かやりたくなってしまうのかな。演出家は。しかし、「雪華抄」では、あまり奇をてらった演出にせず、音くり寿のソロで聞かせるシンプルな構成にしたのがよかったと思いました。というか、くり寿ちゃん、ああいうこぶしの効いたような歌い方、低い声がとても良かった。
 あとは、これはわりとよく言われているような気もするけど、やはり鷹と鷲のシーンが斬新でよかったかな。音楽がかなりアップテンポ。そして、動きもそれほど日本舞踊っぽいわけでもなかったけど、セット、衣装等で日本物らしさは出ていたし。男役だけ、というのも、ちょっと黒燕尾的で。
 それから、プロローグ、フィナーレ、中詰め(民謡メドレー)と、割と出し惜しみなく大人数を舞台に乗せていたものよかったような。中村Bセンセのショーみたいで。
 あ、あと、この「雪華抄」成功の理由の一つはトップの明日海りおが、日本物が似合う男役だったから、というのはありそう。化粧、佇まい……。これは似合う人と似合わない人がいるので……。
 松本先生のところの音くり寿については上で言及したけど、ほかにも歌が上手い人を効果的に使っていたよね。特にフィナーレのカゲソロ二人(咲乃深音と愛乃一真)! まだ下級生だけど、うまい。貢献度高い! やっぱり歌が上手い生徒に歌わせないとね。そして、こうくるかーと思ったのは、雪のシーンの和海しょうのソロ。えーっと、この場面で和海しょうが銀橋に出て一曲歌うってかなりの抜擢だよね。これも成功していたと思います。それにしても、彼女は一回くらい新公主役やってもよかったのにね……と思うのですが、すぐ下が95期のマイれいというのがいけなかったか……。あ、脱線。
 日本舞踊については、正直、上手い下手はわからないのですが、花道に並ぶ下級生を見ていると、手をぶんぶん振っている、という風な生徒もいて、かなりレベルにバラツキを感じました。センター付近の生徒だと、さすがにそうひどい人はいないのだけれど。
 ちなみに、総踊り?を見ていて「うまい」と思ったのは、鞠花ゆめ様(なぜここだけ敬称付き?)。動きがほかの人と違いました。そして、タカラジェンヌとしては弱点にもなっているであろうあの頭身バランスは和物だとしっくりくる! あと、もう一人、下手花道の付け根あたりで踊っていた娘役さんもうまかったな……。誰だろうあれ。

そのほか、おもいつくままに。

「番手のついている人には宝塚のルールにのっとって歌っていただきましょう」の民謡メドレーは、ちょっとお歌が難しそうだったこともあり、歌い継ぎのところは毎回ちょっとハラハラしてしまいました。最後は総踊りで盛り上がっていいんだけども。ここの冒頭、手ぬぐいひっかけて銀橋にやってくる瀬戸かずや兄貴が男前でね……。あそこで毎回期待値MAXになります。声を出すとちょっとテンション下がってしまうのがすごく残念なんですが……。
 ちなみに、鳳月杏は……月組のころから実証済ですが、和物のお化粧が大変お似合い(ここだけの話、顔の面積が大きいほうが和物はいいのかな……)。一番目立つシーンの七夕銀橋や、民謡の青天もなかなか似合っていましたが、ワタクシの一番のおすすめは若衆ですね。いやー、若衆のかつらが本当にお似合いでした。
 花組が日本物ショーが相当久しぶりで、そもそも源氏物語やったときも、大劇場の日本物が「野風の笛」以来?とかいう話でしたが、化粧がどひゃー、な人もそういなかったような……。あ、最下級生あたりの「花乙女」は、誰が誰だかわからないすごいことになってしましたけど(笑)。まあそれはご愛敬(?)。
 前にも書いたけど、こういう日本物のショーって宝塚でなきゃ見られないものだから、時代に合わせつつも、ぜひこれからも続けてもらいたい、と思いました。いっそ「世界遺産」に申請したほうがいいのではってなぐらいです。そして、原田先生、ショー向いているのでは? ぜひ洋物も。
 
 
 
 
 
 

December 10, 2016

金色の砂漠を彷徨って【その2】ゲスめ!

花組 宝塚大劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」-02
 第2回ジャハンギール編(ついに!?)。

 私はジャハンギールを演じる鳳月杏のファンでして、初日が開けてからはずっとジャハンギールのことが書かれたブログ、ツイッターのつぶやきを検索しまくっておりました。そのため、12月のあたまにやっとこさ宝塚大劇場に行ったときは、かなりの頭でっかち状態になっていたのです(笑)。
 実際、観劇中は、当然、ジャハンギール王が出てくれば王様中心にオペラを上げておりました。しかし、観劇後の第一印象は……「王様、出番少ないじゃん」でした。
 これはいったいどういうこと? 最初は自分でも戸惑ったのですが、少し時間がたってわかってきました。私は観劇をしてもいないのに、ちなつ(鳳月杏)ファンの皆様の熱い書き込みばかり読んでいたため、ファンの方の濃~い観察、はたまたそこから派生したドリームまですべて織り込んで観劇に臨んでしまっていたのです。つまり、私の頭の中のジャハンギールは膨らんで主役をも食いそうな勢い、いやほとんど主役級になっていたのです。でも、それ、間違いですから!
 王様はとてもいい、演じがいのある役だと思うけど(このへんは詳しく語りたい)、もちろん主役ではないし、2番手でもない。そして(ここ重要)、与えられた役割をいつも的確にこなすちなつ様が、その調和、バランスを壊すような芝居をするわけがない。
 上田先生が再三書いているように、宝塚だって一度しか観劇しない人はいる。その人たちにもちゃんと楽しんでもらえる舞台でなくてはいけない。そういう一回だけしか見ない、特に誰のファンでもない観客にとって、鳳月杏は、ジャハンギールの強さと誇り高さと誠実さを伝えることができていたと思いました。そしてその悲しさも。
 何度も観劇すれば、もっといろいろなことがわかってドリームが広がる、そういう脚本だし、演出だし、彼女の演技でもあると思います。でも私自身は、まだ、回想シーンで王妃に会いにくるときの様子とか、高いところで酒盛りしてるときに、周りの後宮の美女たちを何を話されているのか、とか、立ち回りの一つ一つのしぐさはまだ細かく見ることができていない。まだ「金色の砂漠」という作品を把握するのほうにいっぱいいっぱい。「金色の砂漠」の物語を楽しんだうえで、脚本には書かれていないジャハンギールの物語についてあれこれ考えるのは花組が東京に来てから、になりそうです。
 
 そんな段階ではありますが、「金色の砂漠」でのジャハンギール様がかなり重要な役だということは伝わってきました。主人公ギィの敵役だけど、敵役の枠には収まらない大きな役。王と王妃はギィとタルハーミネの鏡のような存在ですもんね……。登場してすぐの王様は、力で国を統治する王、王女も有無を言わさず従わせてしまう父という強さと自信だけが見えるのですが、ただの暴君じゃない、ということがわかる中盤の決定的な一言がありまして……。それは、王女をしつこく侮辱しようとする奴隷ナルギスを斬るときの、「ゲスめ!」。あのセリフ、ほんと重要ですよね。ああやって観客にジャハンギールの人となりを強く印象付けているんだな。
 そしてこの「ゲスめ!」は、「金色の砂漠」が、宝塚作品にしては生徒に緻密で高レベルの演技を要求するものであると同時に、伝統的な(アナクロな)宝塚歌劇の要素も濃く持っている、ということを思い起こさせてくれる場面でもあります。だって、宝塚で「ゲスめ!」と言えば、「ベルサイユのばら」でオスカルが自分を侮辱したアランに言うことば。しかし、最近「ゲスい」(そして流行語にまでなった「ゲス不倫」)で復活したとはいえ、ののしり言葉としての「ゲス」はほとんど死語ですよね。そして、タカラジェンヌって、「ゲスめ!」なんてセリフを口にしても、観客を納得させるような時空を超える存在であることが求められるんだなー。しかし、この「金色の砂漠」で、鳳月杏はその難題を見事にクリアーしていたと思います。あのセリフによってジャハンギールの男が上がった。もちろん、そこには、ナルギスを演じる高翔みず希組長のいかにも卑劣な演技が不可欠なわけですが。
 あ、一言付け加えるならば、この「ゲスめ!」に続けて、王様は娘に死を申し渡すわけで、ストーリー上はこちらのセリフの方が重要ではあるのですが、直前に「ゲスめ!」があってからの「死の申し渡し」だからこそ、王が、残酷なことを言ってはいるけれど、誇り高い、一本筋の通った男ということがわかるんですよね。
 
今日のひとこと「ゲスめ!」
※ ル・サンク掲載の脚本ではこのセリフ「下司めが!」となっていました。そうでしたっけ!? すんません。私の記憶っていいかげん……。

December 05, 2016

金色の砂漠を彷徨って【その1】

花組 宝塚大劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」-01
 初日が開けてから気になって気になってツイッターやらブログやらでネタバレでもなんでも読みまくっていましたが、やっと私も「金色の砂漠」に行ってきました。
 
 ネタバレしております。
 
 上田久美子先生が今回はエンターテインメントに徹した、そしてこれは涙するための作品ではないとプログラムに書いていますが、確かに、これまでの作品(「月雲の皇子」「翼ある人びと−ブラームスとクララ・シューマン」「星逢一夜」)よりもより寓話的というかおとぎ話的というか、話があり得ないところが、少女漫画的というか、歌舞伎や文楽みたいでしたね。突拍子もない設定やセリフ、奇想天外なシーンが多くて、けっこう初回はニヤニヤしながら見ていたような……。昼メロ的でもあり。壮大なおとぎ話なので、「これはおかしいのではないか」とか「納得できない」という文句は野暮ってもんでしょう。もちろん、おとぎ話のなかではちゃんと世界が構築されてるんですけどね。印象的なセリフも多く、伏線もばっちりはりめぐらしているところはさすがです。
 前回の大劇場デビュー作「星逢一夜」と比べてよかったのは主な登場人物が多いこと。
 ギィ(明日海りお)とタルハーミネ(花乃まりあ)、ジャー(芹香斗亜)とビルマーヤ(桜咲彩花)、そしてジャハンギール(鳳月杏)とアムダリヤ(仙名彩世)が三者三様で、前二者は対照的(まさに奪う愛と与える愛)、ギィとタルハーミネとジャハンギールとアムダリヤは激しい愛で同じ悲劇を繰り返すという関係。
 この三組以外にも、第三王女とその婚約者もいるし、王族にはそれぞれ専属の個性的な奴隷もいるし……。下級生には下級生でけっこう細かく役がついていたし。出演者の多い宝塚にはやはりこれ大事。
 しかも、当て書きがなかなか素晴らしかった。明日海りおギィのこじらせキャラは「春の雪」で実証済とはいえ久しぶりだし、花乃まりあタルハーミネ(第一王女)のわがままドSお嬢様ぶりは……はまりすぎていて、「トップ娘役がこれでいいの?」というぐらいだったし。一気に飛んで高翔組長の家庭教師ナルギス! なかなか組長には当たったことのないような、卑屈で心のねじ曲がった役。それが、彼女の線の細いところに妙にはまっていました。
 芹香斗亜の優しい奴隷ジャーも(語り部も兼ねる)。正直、見るまでは「またいい人か(彼女もちょっと黒い役とかやらないと)」などと思っていたんですけど、とてもよかったです。彼女確かにほんわかキャラで舞台でも「いい人」役が多いんですけど、本人が優しそうだからそう見えちゃったかな、という緩い役と、「穏やかで思いやりがあり、一歩引いて観客に近い位置にいる魅力的な役」を当てられてそれにふさわしい演技をするというのは違うんだな、と実感いたしました。このジャーの恋物語は、相手役の第二王女ビルマーヤ役の桜咲彩花、そして求婚者の天真みちるがまた好演で。このチームが好感度を醸し出せば出すほど、トップコンビの「奪う恋」が引き立つといいますか。まあこの3人は割に思ったことを正直に口にしているので比較的演じやすいところはあったかもしれませんが(ほかの人たちはほんと素直じゃないからね)。
 そして、柚香光のあの空気読まないナルシストのイケメン王子テオドロスという役も……すばらしい当て書き(いや別に本人が空気読まないとかナルシストだとか思ってませんよ)。私も女官になって、「テオドロス様美形ね」とささやきたい(笑)。テオドロスは、異なる世界から来た人間ということで、我々観客側に近い価値観を持っていてそういう意味ではなかなかお得な役でしたね。
 他にも、わがままいっぱいで元気な第三王女(音くり寿)とか、イケメンだけど、ヘタレなその求婚者(冴月瑠那)とか……。おそるべし、当て書き。もし自分が上田先生に当て書きされたら……と考えると、自分の知らなかった一面を見ることになりそうで、興味はあるけどちょっと怖い(大丈夫。上田先生はあなたには当て書きしませんから!) 
 さらにヒロイン・タルハーミネについては、父と娘の絆が描かれているところもよかった。このへんは途中の演出変更でより強く打ち出されるようになったようですが。タルハーミネはギィを愛する一人の女であると同時に「父の娘」でもあったんだな。それを思い出させる柚香光テオドロスのいいセリフがあるんだけど、ちょっとわかりにくくて……。あのセリフがもっとビシっと決まったら、ますます構図がはっきりしていいんだけどなぁ。惜しい。れい君、「がんばれがんばれ」(by プリー)
 上田先生の作品は、芝居のしっかりしている生徒とそうでない生徒の差が大きく出てしまう。観ている側としては、新作だからセリフがちゃんと聞き取れて、しかも感情がはっきり伝わらないと話がわからくなってしまうので結構大変(再演なら、ファンはセリフも芝居の流れも知っているんでね……)。さらに、確かみりお君がどこかで言っていましたが、思っていることと言っていることが違うので、セリフの内容だけでなく、そのときの表情とかが大事。しかし、これは一回や二回の観劇で把握するのは難しい。それにテレビだったらクローズアップにすれば表情がわかるし、「このときのこの人の表情がポイント」とわかるからいいけど、舞台はそうはいかないもので……。観客がそこに注目するようなセリフもだいぶ仕込んであったとはいえ……。その点でいうと、タルハーミネ(花乃まりあ)がちょっと何考えているのかわかりにくい人に見えていたかもしれない。終始強情なお姫様キャラのようだったけど、本当はもっと弱そうだったり、恋にときめいたりするところがあったほうがよかったんじゃないかな……。
 ところで、アムダリヤの最期については、「愛していたのか」とギィのセリフに出てくるけれど、そうなったのは「愛」のためだけではなく、この悲しい運命の連鎖にもう耐えられない、その種をまいた自分の罪に耐えられなくなって(自分が王を愛してしまったことも含め)、というのもあると思うんだけど、あのセリフがあると、そのへんが「愛」に限定されてしまうかな、と思いましたがどうなんでしょう。
「金色の砂漠」は、自分が自分らしくいられるところ、ということなのかな、と理解しました(「ル・サンク」よく読むと、タルハーミネが「(金色の砂漠で)人は魂だけになれる」と言ってますね)。アムダリヤはまだそこへは行けないと思ったから歌を作り、タルハーミネは自尊心を捨てて愛に生きるために行ってしまったし。ギィも復讐心を捨てて愛に生きることにしたんだね。でもってアムダリヤ(の魂?)も最後にはそこへ行くし(ああ、「意味とかこねくり回さずに楽しんでください」という天の声が聞こえてきそう)
 最後砂漠で絶命する二人にもっと泣かせるセリフを言わせることもできたと思うんだけど、そうしなかったのは安易に泣きに走らない、という今回の上田先生のねらいなんでしょうね……。
 いままでの上田作品っていわば文芸大作的なイメージがあったように思うけれど(特に「翼ある人々」とか)、今回の作品はそういう「好き」と言ったらかっこいい、みたいなスノッブ味(おいおいなんだその日本語)はないかもしれない。ちょっとアナクロな舞台設定が宝塚にぴったり、でも芝居自体はすごく緻密に作られている。そしてなんといっても生徒の芝居の力の限界に挑んでいる(つまり生徒の芝居力を引き出す)この作品、私は好きです。
 
 では次はいよいよ、ジャハンギール様のことを中心に……(の予定)。
 
 そうそう、このお話は、奴隷の設定とか、一見荒唐無稽なんですが、王女が自分の意思で行動しているところとか、統治に参加するところとか、けっこうポイントポイントでは現代の価値観にあっている部分もあるんですよね。なんというか、おとぎ話とわかっていても、女性の扱いがウン十年前っぽかったりするのは嫌な感じがすると思うんですよ(後宮の女はどうなんだ、と言われそうだけど、あそこまで現実と離れているとそのへんはおとぎ話として見ることができるのだ)。そういうところもよかったかな。
 
 ああ、それから観劇からまる一日たって思い至ったのですが、「雪華抄」とこの「金色の砂漠」、和物ショーと、古代アラブ物(?)という、いまどき世界でも宝塚歌劇団でしかやらないであろうジャンルを見事に現代的に(←ここ重要)蘇らせているという意味で、すばらしい組み合わせなんですね。そしてロックガンガンのフレンチミュージカルなんかもいいけれど(これはこれで大好きですけどね)、宝塚はこういう、いまや宝塚でしかやらないようなものをこれからもぜひ上演していってほしいな、と思いました。
 
 オーケストラで日本舞踊するのが宝塚ぐらいなら、あんだけたくさんのアラブのギンギラ衣装とターバン持っているの、宝塚ぐらいじゃないでしょうか。ターバン被って燕尾服で踊るのもね。
 
 
 
 
 

November 16, 2016

鹿児島弁がきつかった「桜華に舞え」

星組 東京宝塚劇場公演「桜華に舞え」「ロマンス!!」-01
 北翔海莉の退団公演。実力派で昭和のスターさんのような貫禄のある彼女に合わせた(ってことですよね)和物お芝居とクラッシックなロマンチックレビューの組み合わせ。とはいってもお芝居「桜華……」のほうは、展開がスピーディで登場人物もてんこ盛りの、割に派手でゴージャスな時代劇でした。つまり、和物芝居とはいってもそんなに古くさくはなく、けっこう細かく役が付いていて、若者ウォッチも楽しかったです。いや、今回つくづく思ったけど、星組下級生はイケメンが無駄なぐらい多い。いや、イケメンに無駄はないけど。ちなみに芝居で最初に「!!」と思ったのは、(あとで調べてわかったんだけど)最近スカステで売り出し中の「あまじぃ」こと天路そら君。西郷隆盛(美城れん)の弟、西郷小兵衛をやっていて、けっこう目立ってましたね。セリフもあったし。メイクが大変キレイでした。
 ただね……。この「桜華……」、観た人みんな(いや全員に聞いたわけじゃないけど)が言っていたけど「鹿児島弁のセリフがよくわからない」。大変残念でした。演じているジェンヌたちはがんばっていると思うけど、あれはやりすぎでは。このお芝居の鹿児島弁に呆然として、「ああ、いままでテレビや映画で見た方言芝居は、方言テイストを入れつつも、ちゃんと全国の視聴者・観客にわかるようにばっちりアレンジしてあったんだな」ということに改めて気づきました。当たり前だったんでそのことに思い至っていなかったんですね。
 この芝居、基本はけっこうわかりやすくうまくできていると思うんです。なぜならセリフ(特に決め台詞)がけっこうわからないにもかかわらず、見ていれば大きな流れが理解できたし、ラストシーンではベタだな、と思いつつ涙腺刺激されちゃったし……。登場人物やたら多くて、さらに、そのなかでもそれほどメジャーじゃない(すみません。でも知らなかったもので)桐野利秋が主人公だというのに、「西郷どんは西南戦争で負けちゃう」ということぐらいしかわかっていない私でも十分ついていけましたから。これは、知っている歴史物語とオリジナル設定のつなぎ?が悪くて戸惑った「NOBUNAGA」との大きな違い。だからこそ、鹿児島弁のやりすぎが惜しかったな、と。もちろん鹿児島県の人が見たらまだまだぬるいかもしれないけど、方言を忠実に再現することが目的じゃないし……。むしろ、それがストーリー理解の妨げになっているのってもったいない。たとえ、作者兼演出家がもりあがっちゃっていても、外側の人(制作?)がそういうことアドバイスすればいいんじゃないかな、と思うんだけど……。
 あと、芝居で「おおおっ」と思ったのは軍人役の朝水りょう(いま見たらちゃんと役名もありました。壱城あずさ演じる山縣有朋の部下で田中文五郎)。精悍な男顔!で髭がお似合い。そしてあの廓のようなシーンでの開襟! すばらしい(笑)。あの開襟でファンをだいぶ増やしたことでしょう。あ、あと同期(96期)の拓斗れい君(桐野利秋の弟・中村貞役)もシュッとしたイケメンで……いやほんとイケメンが豊富です。星組。
 さらにさらに、芝居といえば、「この少年誰? 上手い」と思ったのがスリの太郎。新公ヒロインの小桜ほのかちゃんだったんですね、失礼しました。声がとても力強くて、少年役者としてはとてもよかったです。基本うまいと思うので、娘役で大きな役も見てみたいです……。ちょっと舞羽美海ちゃん系というか、元花組の愛純もえりちゃん系のお顔ですね。
 
 ショー「ロマンス」は……。ある意味クラッシックなスター、北翔海莉に合わせたんだろうけど、このへんの感じ方は年齢によるのかもしれなくて、私自身は全然若くない観客なんですが(ここまで言い訳長いです)、正直、ちょっと古くさく感じましたね……。特にプロローグ……。まあ後半はそうでもなかったですけど。「ロックン・ロール・エイジ」はそれぞれの衣装や鬘がいろいろで楽しかったし、電飾の扉というか枠みたいなのを使う「友情」(う、タイトルがダサいが)も好きでした。そんなに新興宗教っぽくなかったし(えーっと、退団公演にありがちなんですが、露出の多くない〔ときにユニセックスな〕〔しばしば白い〕衣装で、男役も娘役も同じ振りでトップさんを中心に踊るシーンってよくありますよね。あれ、新興宗教っぽくて、私好きじゃないんです)。
 で、まだまだ終わらない、星組下級生美形発見話ですが、2回目の観劇のショーの「ロック・ロール・エイジ」と黒燕尾で「ぶつくしい(あ、組違いですが)……これは誰?」と思ったのは、たぶん……湊瑠飛君。プログラムの写真だとくりくりお目目だけど、舞台ではもっとスッとしたお顔になっていました。メイクとか表情のつくり方がうまくなってきたのでは? ちょっと月城かなと君を彷彿。
 あ、あと今回は芝居、ショーを通じて、新公主演の天華えま君が目立ってましたね。スタイルよくて、女装がキュート(ローラースケートギャル、ね。うーん恥ずかしい役名)。芝居では会津の殿様松平容保をやっていて(ワンシーンだけだけど。そのほかバイトあり)、そのノーブルなところが似合ってました。同期の綾凰華君は、芝居の冒頭の三上卓(麻央侑希演じる犬養毅を襲撃)ではちょっと顔が見えづらかったのが残念。彼女はほかにも、紅ゆずる演じる衣波隼太郎の部下・須田良治をやっていて、けっこう人数の少ないシーンに出ていたりはするんだけど、これもやや印象が薄く、名前のある役は一つだけ、の天華君のほうが印象は強かったかな。星組が誇る98期の美形「華華」コンビ、ショーではあまり対では使われていないのか……と思ったら、最後のパレードでダブルトリオをやってましたね。
 あー、お芝居とショーの話がゴチャゴチャになってしまいましたが、私にとって、新しい発見の多い公演でした。って主な出演者の話ほとんど書いてないけど…(笑)。
 

いまさらNOBUNAGA

月組 東京宝塚劇場公演「NOBUNAGA<信長> -下天の夢-」「Forever LOVE!!」
 古い話ですみません。いまさらですが、一応書いておこうかな、と。実は一度書こうとしたときがあったのですが、ちょうど公演の千秋楽のころで、ファンがみんな千秋楽モードになっているときに辛口の感想とか書いてもな……と思ってやめたのでした。それ以降なんとなくタイミングを逸しており……。
 そりゃ退団作って特別だから、劇としてどーのこーの言うのは野暮なのかもしれない。でも、やっぱり退団であろうとお披露目であろうと気になることは気になるんですよね……。さらに最初に書いておくと、私は龍真咲くんのこと結構前から好きでした。だって初バウホール遠征は月組の「Young Bloods!!」(2006年。龍真咲主演)ですから。基本大劇場はどの組も見ているけど、「1789」は好きで何度も行ったし、そうそう「DRAGON NIGHT!!」も行きました。
 ついでに言うと、「NOBUNAGA」作・演出の大野先生の作品も結構好きです。過剰すぎてごちゃごちゃすることもあるけど、作品への思い入れは深いし、だいたい主人公が誠実で共感できる人物だよね。これは前にも書いたけど、プログラムの細かすぎる登場人物解説が特に好き(笑)。「NOBUNAGA」では、白雪さちかが演じた修道女マリアンナの解説がスゴイ。「古今東西の青少年諸君を妙に尼僧好きにしたであろう名著『ぽるとがる文』の筆者より、その役名をとった」……そうなんだ。青少年諸君は尼僧好き……なんだ。catface
……それはさておき、そんな私なのですが(あ、尼僧好きではないです)、この「NOBUNAGA」は、見終わって何かすっきりしなかった。一応2回見たんですが、どうも話が分からない。それは私の理解力不足なの? もうちょっと詳しく言うと理屈で「わからない」というよりも、流れについていけない。別に奇想天外とか、不条理とか予定調和をぶち壊すという意味で分かりにくいのではないと思う。非常に有名な信長という歴史上の人物を主人公にして、フィクションをつくっているのだけれど、どうも信長まわりの「誰もが知っている歴史」と「あまり知らない歴史」と「フィクション」がうまくつながっていなかったのがよくなかったのではないかしらん。例えば、ロルテスまわりのフィクションはまあよかったと思いました。最後のシーンも、ロルテスが信長を逃がして……というところはよかったと思う。だいたい義経=ジンギスカン説のように、歴史上の人物が実は死んでいなくてどこか別の土地に逃げて活躍して……という伝承はよくあるし。
 ロルテスぐらいぶっ飛んでいれば、「これは大野先生が作った話、フィクションね」とわかっていいのだけれど、信長と家臣団のところ、一回裏切ろうとして裏切らない、だけど本能寺に突入……の流れが何かよくわからなかった。浅井長政とお市の方とか、秀吉とねね、とか、明智光秀の本能寺の変とか、このへんの話はかなり有名だから、私たちは何が起きるか知っている、だから「最後は本能寺だよね。凪七瑠海が反旗を翻すんだよね」と思ってみているんだけど、何か中途半端に知らない話(家臣団がみんな裏切ろうとする)が出てくると、「あれ、あれ、こんな話あったっけ??あれれ……これ、オリジナルエピソード?」と思っているうちに、裏切りはあっけなくしぼみ、もう一度信長が力を得て、あ、そうなんだ……と思っていたら、いつの間にか本能寺に突入していた、という印象でした。この脚本では光秀はなんで本能寺の変を起こしたんでしょう?……妹の妻木を殺されたから? なんかピンとこなかったです。ついでにうと、私の場合、斉藤道三の娘である帰蝶との関係――仲がいいんだかよくないんだか――も、一応説明されたみたいだけど、あまりピンときませんでした。
 まあ、信長という、ちょっと変わりもので派手でカリスマ性があるリーダーを龍真咲が演じるという試みはうまくいっていたと思うんですけどね……。
 この作品で、もう一つ難点を言わせていただくと、龍真咲のセリフの抑揚がさらにひどくなっていて、いたことです。今回は時代劇でわざとらしいセリフ回しが多いせいか余計目立ったかな(「1789」は歌が多くてよかった……)。彼女の抑揚が変、というのは誰もが気づいていたことで、いまさら書くのもなんですが(しかも彼女はもう卒業してしまったし)、問題は、彼女にそのことを指摘して、改善させることができなかった(指摘はしたけどダメだったのかもしれないけど)歌劇団にある、と私は思います。演出家はそういうことが言えないのでしょうか。別に能力的に無理なことを言っているのではなくて、昔はあそこまで変じゃなかったんだから、できるはず。パフォーマンスを見せるカンパニーとしてさすがにこれは問題だと思うんですけど……。
 今後、宝塚を卒業した彼女が外部の舞台に立つときに、そこでは矯正されるのかな、と思いますが。というか、もしかすると「男役」のときに癖がついただけで、女役の場合はそんなに出ないのかもしれないけど。
 最後だけど、やっぱりそこは気になりました。残念でした。

October 10, 2016

エリザはロケットの衣装が……

宙組 東京宝塚劇場公演「エリザベート」
 いわずと知れた宝塚の名作。今回から演出に小柳さんの名前が入ったけど、それがどう影響しているのか……。
 ひとことでいうと、すごく納得したエリザベートでした。なんかキャストがみんなハマっていた、というか。えーっと、私はあまり今回の主要キャストに強い思い入れがないので、そのへんは割と冷静に見ちゃったところはあります。特にエリザベート。彼女は、割と自己中心的で、けっこう共感しにくい女性なんだな、ということが今回よくわかりました。演じている実咲凜音は、実力派ジェンヌ。歌に何の心配もないエリザっていいな…(しみじみ)。ただ、彼女は優等生タイプなんだけど、なんというか、親しみがわくタイプではない、といいますか……なのでけっこう冷たい感じに見えちゃうことが多いんですよね。でもって幸薄い役が似合う。それらの(他の作品ではマイナスになるような)特徴がまさにエリザベートにぴったり。あ、あと庶民キャラじゃないのも、この作品には合っていましたね。特に成人してからが。
 でもって、朝夏まなとは人間じゃない存在が似合うし、真風涼帆の、鷹揚な若き王様もドンピシャ。フランツって最近は歌ウマ別格系の役というイメージがあったけど、バリバリ路線の美男子がやっていいんだよね。だってエリザがポーッとなっちゃうんだもん。素敵なんだけど、エリザを愛しているんだけど、白馬の王子様なんだけど、残念、でいいんだね、とこれもストン、ときました。
 やっぱり宝塚流にいろいろ改変はしているけれど、基本的にはエリザベート中心で、エリザベートをめぐる二人の男の物語なのだという印象。そしてみんな幸せになれない、というすれ違い物語だし、トートとシシィの関係がちょっと特殊だからそんなにラブラブしていなかったけど、まあそれでいいんじゃない、と。
 そんなことを考えて見ていました。
 主要な役では真風涼帆は、歌がうまくなりましたね。フランツの歌ってけっこう難しいと思っていたのですが、割とふつうにこなしていて(実は難しくないのか、真風がすごいのか)。そして、上にも書きましたが、ちょっと優柔不断っぽくはありましたが、基本的には若くてかっこよくて優しい王様で、「ああ、この役はこういう白馬の王子様がタイプがやればこうなるんだ」と目からウロコでした。いや、初演の雪組が高嶺ふぶき、1998〜1999年の宙組では和央ようかがやっていたわけだから、本来はそうだったということなんだろうけど、私は舞台でエリザを見たのが2002年(東京は2003年)の花組からだったので、何か「別格でもいいからとにかく歌が上手い人がやる役」みたいに思ってしまっていたんですね。しかし、フランツはやっぱりいい男じゃなきゃ。それで、こんなに素敵そうな人だけどやっぱりダメ、というところがいいんだな、きっと。そういう意味でも、今回の真風フランツ、よかったです。
 ルキーニの愛月ひかるは……。アドリブが大変落ち着いていて、なかなかだな、と思いましたが、滑舌があまりよくないのと、ちょっと狂気が出ていなかったかな……。この役、宝塚では本当に難しいと思いますが、やや物足りない感じ。
 ルドルフは、澄輝さやと桜木みなとを見ました。澄輝さやとが……よかったですね。彼女の持ち味に合っていたところもあるのかな、すごく真面目にオーストリーのことを考えている皇太子でした。国のことを、共和制とか革命とかを真面目に考えていて、それゆえに失敗し追い詰められて死を選んだ、というところがはっきり伝わってきて、これはこれですごく納得のいくルドルフでした。母親を追い求めているとか、不幸な子供時代を過ごした、ということはあったけれど、病んでいるとかそういう感じはなく、すごくまっとうに成長してました。いやあの環境でこんなにいい青年に……という感じ。ただ、ちょっと真面目すぎたんでしょうが……。病んでいないぶん、悲劇的でした。私はこの役替わりのメンバーのなかではもともと澄輝さやとが好きで、しかし劇団が推しているのは最下の桜木みなとという状況のなかでの判官びいき的な心情がかなりあります。ありますが、それを差し引いてもよかったと思うんです。このルドルフ。こういう役がもっと早く回ってくれば、彼女のジェンヌ人生も違っていたのでしょうか? いや今だからこそのルドルフだったのかな……。
 桜木みなとのルドルフは……何が悪いということはないのですが、割とふつうの印象。予想の範囲内、と言いますか。澄輝さやとと比べるとより若い感じだったかな。少年っぽい感じは出ていたと思います。
 そのほか、いいな、と思ったのが、ヴィンディッシュ嬢の星吹彩翔。扇を交換したときに見せる無垢な笑顔がかわいくて……。エキセントリックなヴィンディッシュ嬢は、割と演技派の娘役がやることが多い役なんだけど、けっこう狂気が強調されることが多くて何か怖いシーンになっていることが多かったように思いうんですよね。でも、ヴィンディッシュ嬢のピュアなところ、子供のような心が丸顔童顔の星吹彩翔の笑顔に表現されていて、とてもいいシーンになっていたと思いました。心が洗われるというか。よかったよー。もんち。
 この公演で新たにチェックした下級生は、美形黒天使の潤奈すばる君(マダム・ヴォルフのコレクションで「鳥」やってたね)、あと侍従の一人、琥南まこと君。侍従は覚えてもらいやすい美味しい役だよね。下級生にとって(2005年の月組で侍従をやっていた明日海りお君を追いかけていた自分……)。
 あ、あと最近宙で気になる下級生といえば、穂稀せり君。第一印象は、スカステ(相続人の肖像の稽古場だか初日だかの映像……)で見たそのジェンヌらしくない頭身バランスにびっくりしたのですが(失礼)、彼女、相当の芸達者なんですよね。生ではほとんど見ていないのですが、スカステなどで見ていると、別箱(バウホール)や新公ではすでに専科さんまっしぐらでは? という安定ぶり。で、今回のエリザでは、短いけれどちょこちょこ歌い継ぎのところでソロがあったりしてけっこう活躍していました。親戚の男(正確に言うと「叔父」だそうで)とカフェの男で。あれ、プログラムによれば結婚式でも「若い侯爵」という役名があるからソロがあったのかな(残念、そこまで判別できず)。路線とは全く違った意味で、ですが、何か気になる存在です。もうちょっと学年上だったら重臣ズとかだったのかな。いや一気に新公でやったエリザパパとか? 個人的には3年後だったらツェップスなんかでもよかったかな、と思ったけど、ツェップスは路線系の役なのか……。まあ、いずれにしても、これからどんどん役付きが良くなっていくでしょうから、楽しみです。
 まあ、やっぱりエリザって役が多くて(娘役に大きい役が少ないという弱点はあるものの)、下級生にも少しずつソロがあったりして、そういう意味でもいい作品なんですね。
 あ、そうそう、思い入れそれほどないと言いつつ、気になっていた人いました。マダム・ヴォルフの伶美うらら。高い声が出ないという致命的欠陥があるんですが、マダム・ヴォルフのコレクション♪の歌はほとんど低くてOK、最後の「いただいてかえる、わ」の声は、愛月ひかるに助けられていたけど、それなりに出ていたような。歌に関しては、知らない人がプログラムで名前確認しちゃうほどの際立ったまずさはなかったと思います(王家のときは、観劇後にスマホで検索して「やっぱりみんな歌が問題と言っている」と納得している人を見ました)。たいそう美しいマダム・ヴォルフではありましたが、合っているかというとちょっとあれでも上品だったかな。しかし彼女がここで思いっきり下品にマダム・ヴォルフらしくやるのがいいのかどうか、というと、まあ彼女のジェンヌ人生を考えるとそうでもないような……。いや、彼女のジェンヌ人生にここからさらに打って出るチャンスがあるのかどうかよくわかりませんが……。個人的には大人のラブストーリーができる彼女にはぜひトップになってほしいんですけどね。トップになれば歌も宛書でキーを合わせれれば問題ない、と(劇団さん、頼みますよ!)。それにしても、マダム・ヴォルフのプログラムのスチール、美しすぎます……。
 話を戻すと、娘役で言えば、あとは純矢ちとせゾフィー。彼女ならある意味当然というか達者にやっていましたが、個人的にはなんか物足りなかったですね。もっと迫力あるゾフィーを期待していたのですが……あんまり怖くなかったです。そういう演出なのかな。私自身は、以前から「実咲凜音がトップのうちに宙でエリザやらないかな。そのときは、ゾフィーはぜひ純矢ちとせで」と言っていたほどだったんで、ちょっと思い入れが強すぎたのかもしれません。
 まったくダラダラと語ってきましたが、最後にフィナーレについて。
 タイトルにしちゃったから今更言わなくてもいいかもしれませんが……。
 いつも思うんですけど、あのロケットの衣装、なんとかなりませんかね。次回は変えてほしいな……。下品、というか。安っぽい。まあ敬礼の振りとかあるんで「兵隊さん」ベースは変えられないのかもしれないけれど……。毎度興ざめです。
 あー、今回のデュエットダンスの衣装は宝塚にしては珍しいカーテンみたいな柄だったけど、クラシカルでよかったですね。(と、いいところは褒める)
 
 
 

September 19, 2016

Melodiaな若者たち

花組 全国ツアー公演「仮面のロマネスク」「Melodia」-4

まったくタイトルとは関係ないんですが、最近このブログに来てくださった方の検索キーワードを調べると上位(っていうか1位)に「太い 花陽みら」と出てくるんですよね……。彼女の退団発表があったからですね。確かに「1789」で花陽みらが役替わりでソレーヌを演ったときのエントリ「花陽みらのソレーヌを観て」には、「太い」という単語もありますが、それが主眼じゃないんで! 好きだったんですよ。みくちゃん。まさかバウで退団とは。寂しいです。

さて、全国ツアーもあと3日。私が最後にみたのは「さいたま」だから、もうだいぶ前ですが、備忘録として生徒別感想。ショーが中心ですが芝居の話もあり。ごっちゃごちゃです。

<今回注目した下級生たち>
一之瀬航季……去年の「スターダム」に出ていたから名前と顔は知っていました。マイティの秘書?の役で下級生なのに(研2)芝居がうまくて驚いたものです。今回は芝居では貴族の一人(テチエンヌ公爵)だったけど、セリフは少しだからちょっともの足りなかったかな。ちなみに、プログラム(および公式HP)の写真はお化粧がひどくてほとんど別人。今はすっきり美形さんです。早くプログラムの写真変わるといいね……。で、今回ちょっと驚いたのは、ショー。ダンスが……なんというかなめらかで独特の動きで目立つんです。動きがほかの人たちと違う。すごく身体能力が高い!という上手さではなく(身体能力が低いと言っているのではなく)、ニュアンスがすてき!なんです。ダンスに表情があるというのか。特にダウンタウンジャズの場面、ちなつちゃん見つつもかなり気になりました。それで、スペインの場面なども注意して見てましたが、表情もキレイです。ちょっと色気があって。惜しむらくは身長があまり高くないこと……と思っていたのですが、公式見ると、173cmとある。ええええー。本当かな。全身のバランスのせいで低く見えるだけかしら。とにかく、これから下級生の場面でも楽しみが増えました。路線まっしぐらと思われる聖乃あすかと同期、というのがちょっと不幸かもしれませんが……。
帆純まひろ……男役らしい顔だちだし、華もあり、スタイルもよくて路線スターっぽいスターさん。スペインでも若手6人口とかに入っていたかな。あとは、ロケットで側転を披露していますよね。確か大劇場のときもアクロバティックな振りをやる生徒がいたけど、大劇のときから彼女がやっていたのかな……(ですよね。きっと)。今研4。一期下には聖乃あすかがいて、セットで若手路線として抜擢中という感じですが、私は彼女のほうが正統派男役スターっぽいとは思います。ふつうにいったらそのうち新公主役が来るでしょう。これからが楽しみ。
聖乃あすか……前からすでに注目されていたようですが、私が舞台でちゃんと認識できるようになったのは「ミーマイ」から。でも本公演では本当にモブ(貴族の男とか)。新公のジャッキー&ジェラルドは見ていないので、今回の「仮面のロマネスク」で初めてお芝居している彼女をちゃんと観ました。で、Melodiaではなんと鳳月杏が本公演でやっていたスペインの女に抜擢。その第一印象は「あれ、足の長さが……?」だったのですが、これはもちろん、本公演の鳳月杏ほど長くない、というだけなので、彼女の足が特に短いということはありません(笑)。適度に力強く(男役による女役らしく)きれいに出ることができていたと思います(ただし、あの衣装安っぽくてあまりいいとは思わないんですけどね……。本公演のときからの不満)。で、かつらは二種類あったそうなんですが、私はストレートしか見れず残念。素顔美人だけど、メイクも上手いですよね(素顔美人あるあるで、メイクダウンってのがよくあるんで)。ただ、スカステのトークコーナーを見ていて気づいたのですが、彼女、肩幅が狭い、というかなで肩なのかな、どうも肩、首、顔のバランスがあまりよくないんですよね(顔が大きく、首が太く見える)。あと、リーゼントにしたときの頭の形もあんまりよくないような気が(これは何がいけないのか?)。なので、基本美形さんですが、場面によって美しさにちょっとムラがあるのが残念。で、私の一押しは「黄金の旋律」です。肩の張ったお衣裳で、かつ海賊風バンダナ(?)とロングヘアの鬘のバランスがよかったようで、とてもスタイルよく見えました。というか、キレイすぎて、最初「あれ、じゅりあ姉さんのほかにも女海賊(じゃなくてコンキスタドール女ですけど……)いたっけ?」と一瞬思ってしまったほど。彼女はちょっとお顔が優しい感じなので余計ね……。彼女はこの場面、本公演でも入っていましたが、全ツは人数が減ったせいもあって、かなりじっくり見ることができました。今から見る方、おすすめです!!
(ここで一休み)
花組は95期のすぐ下の路線男役がちょっと弱い感じ。「ミーマイ」で優波慧(96期・研7)と綺城ひか理(97期・研6)が主演を分け合ったし、矢吹世奈(97期)、飛龍つかさ(98期)もいるけれど、「正統派路線」という感じとはちょっと違うような……。そこでいうと、この帆純まひろ(99期)、聖乃あすか(100期)は、まっすぐな華があって、正統派路線男役きたー!というわかりやすさがあります。個性派もいいけれど(どっちかというと典型的なタカラジェンヌをやや逸脱した個性派に注目して愛でるのが好き)、やはり王道スター的な人もいないとね。あ、99期には今回もバウで活躍しているという亜蓮冬馬くんもいて目が離せないんですけど……。

<前から知っていたけど、いよいよ正念場な人たち>
優波慧……芝居ではアゾランという路線若手男役のやる役。確か初演は安蘭けい、再演は凪七瑠海でしたよね。この役、けっこう難しいと思いました。演技力は要求されると思いますが、宝塚の正統派男役が演じるにはちょっと軽くてヒネた感じなんですよね。台本通りまじめにやるとあまりかっこよく見えないというか。こういうとき路線男役としてはどういう演じ方をすべきなのか、難しいところではないでしょうか。安蘭けいはもともと真っ白い王子様キャラじゃなかったからまあよかったような記憶がありますが。で、優波慧の場合はやや地味になっちゃったかな。彼女の達者さは伝わりましたが。まあ、ただのさわやか好青年では役の意味が違ってきますからね。演出家の指示もあるだろうけど、もう少しちゃらいプレーボーイ風に作るとか?(勝手なこと言ってますが)
ショーではロケットボーイじゃなくて、ロケット導入?役。フィナーレの幕開きで目立ちます。ここはもう少し華が出たらよかったかな(本公演が水美舞斗だしね)。彼女は輪郭がまるで男役になるために生まれてきたようなところがあって(「Ernest in Love」のハンドバッグのメイドでも、ちゃんと女装感が出ていた)恵まれているとは思うんですけど。もしかすると、ちょっと影のある安蘭けい路線が狙いどころ?
矢吹世奈……Melodiaロケットで大活躍。ロケットってかわいらしいことが多いけれど、彼女のダンスのせいもあり、全体的により本公演よりアクロバティックになっていたというか、男役色の強い大人なロケットになっていました。羽根を背負った衣装もシックでかっこいいし、このロケット好きです。でもって、彼女にはスペインのところでもちょっとソロ歌がありました。かつて抜擢子ルドルフの歌を聴いて、「なぜ彼女が?」と思ったのですが、今回は歌もふつうに歌えていて、さすが成績上位、なんでもできるんだな、と認識を改めました。っていうか子ルドルフの歌が難しすぎるのか?(今回、宙組のまどかちゃんで、初めてまともな子ルドの歌を聞いたような気がする)
最後に……芝居で、メルトゥイユ夫人のツバメ、ベルロッシュをやっていましたが、これはちょっとキャラ違いでしたね。ここは番手を無視しして華だけはある下級生とかにやてってもらったらメルトゥイユの火遊び感が出てよかったのでは(しかし、誰?)。
(そういう意味で、再演の鳳翔大はぴったりでしたね……)

ショー全体の話をちょっとすると、私、変な芝居仕立ての少人数の場面とかがなくて、とにかく舞台に人があふれて歌い踊る中村一徳先生のショーはもともと好きなんです。たぶん選曲の適度な古さ(昭和感)もちょうど合うのだと思う(笑)。特に今回は、普段ショーでテンションが下がることの多いシーンに好きな場面が多かったような。ロケットとか、娘役の「all of me」、それからやたら恐ろし気なアレンジ?の「マイ・ファニー・バレンタイン」(ソロの高峰潤と音くり寿もイイ)で、ツンデレな振り付けのデュエット・ダンスも好きですね。「My favorite things」の黒燕尾がかなり好きなのはもちろんなんですけど。
 
ところで、身長の疑問パート2。芝居で、鳳月杏のジェルクール伯爵には部下が2人いて、それを高峰潤(99期)と芹尚英(101期)がやっているんですが(ソロ歌もちょこっとあり)、3人ならんでいるところを見たら、なんか鳳月杏より2人の方が大きく見えたんですよ。ところが公式身長を見ると、鳳月172㎝、高峰172㎝、芹尚170㎝……。あれれ。さきほどの一之瀬航季173㎝に続き、まったく解せない。
 
<軽んじているわけではないのです。娘役のみなさん>
最後に、娘役をまとめて書くと、春妃うららは、ミーマイ新公をスカステでちらっと見てけっこううまいじゃん、と思ったけれど、「仮面のロマネスク」ではやっぱりやや棒読みテイストだった……(源氏物語のときからあまり進歩がない?)。かわいいんだけどね。メイド仲間の雛リリカのほうがうまかったような。あと、芝居の途中で「貴族の娘」として「ミモザの香の……」とソロ歌った夏葉ことり。非常にオーソドックスな宝塚らしい美声でした。ああいう人もいないといけないよね(しかし、このままだとタキさんコースなのかな……)。メイクとスタイルをがんばってほしいです。あ、あと下級生(研2)だからまだまだこれからだと思うけど、表情ももう少し工夫してほしいかな(ニッコーと笑うだけでなく)。
ああ、芝居でセシルという大役の音くり寿ちゃんについて書いてなかった。いまさら私があれこれ言うこともないのですが(いや、誰に対してもあれこれ言う必要は全くないのだけど)、贅沢を言えば、もう少し表情のつくり方とかに工夫をしてほしいような。あと、割と強弱がない、というか。もう少し抜くところは抜いてほしい……。実力があるので、メイクがさらにうまくなって情感が出てきたら怖いものなしか。

以上です。うー。この公演、やたら書いてしまった。

September 16, 2016

鳳月杏はどこまで行くのだろう?

花組 全国ツアー公演「仮面のロマネスク」「Melodia」-3
 
まずは懺悔から
実は、全国ツアーって実はそんなにいいイメージなかったんです。そもそもそんなに行ったことなくて……。チケット取りづらいというのが一番の理由ですが、わりと直近にやった本公演の再演が多いので、見られなくてもそれほど悔しくないというか……。本公演でやった演目を本公演より少ない人数、(ときに)簡素化した舞台装置、少ない階段、銀橋のないステージでやるわけだからちょっと寂しいな、と思ったことも。
それが……今回の「仮面のロマネスク」「Melodia」でわたくしは全国ツアーの醍醐味がやっとわかったような気がします(遅いよ!)。
えーっと、そもそも、今回のお芝居「仮面のロマネスク」が、最近同じ組でやった演目というわけではなかったし、今の花組トップコンビの新たな一面を見ることもできたので、それだけでもお得感はありました。「Ernest」「ミーマイ」などの「ハッピーミュージカル」に正直飽きていたこともあったし(笑)。
だけど、私が言いたいのはそこじゃなくて(はやく言いなよ)……。「ショーです! 何と申しましても、ショー・Melodiaです!」(「ローマの休日」のアン王女の「ローマです。何と申しましても、ローマです!」のつもり。組違いですが)
ここから本題。
Melodiaは、前の前の大劇場公演(芝居は「新源氏物語」)のショー(一部変更あり)。
全国ツアーはふつうトップコンビが出るから、この2人の役付きには変化がない。で、それ以外のジェンヌさんたちは人数が減った分役付きが少しずつ上がる。でも、そこには濃淡があって、すごく上がる人とちょっとだけ上がる人とあまり変わらない人がいる。
たとえて言うなら、番手のついている人は一人ずつ、そのほかの組子は何人かずつグループで段差のあるステージに乗っていて、全体の人数が減った分、上の段に上がれる人もいるけど、前と同じ高さの段にいる人もいる。ただ、同じ段でも乗っている人数は前より減るから、明らかに責任は増すし、目立ちやすくなる、といいますか……。役付きってスロープじゃないんですよね。段々になっている。

でもって、今回の全ツMelodiaの場合、若手男役で一つ上の段に上がれたのは、優波慧くんと、矢吹世奈くん、それから帆純まひろくんと聖乃あすかくんかな。この4人は「仮面のロマネスク」のほうでもちゃんと役がついていましたけど。で、もっと上のほうでかなり大きな段差を上がったのが、鳳月杏、ちなつちゃんだったというわけです。(ここまで長っ)

彼女は大劇場公演のときは「男役4~6番目ぐらい?」(男役3番手に次ぐ路線男役たち)のステージにいたのですが(あと2人は瀬戸かずやと鳳真由。……うーん、プログラム的には水美舞斗もこのグループかもしれないけど、まあちょっとほかの3人とは差があったと思うので今回ははずさせてください)、今回鳳月杏が上がったのが、柚香光が乗っていた男役3番手ステージだったので、大劇場のときとの差はすごく大きかった。だから全ツでは彼女の見え方が全然違いました。たぶん向うからの景色も違ったでしょうね。
このたとえ話なんなん?
えーと、平たく言うと、大劇場の柚香光のパートは、特に誰かと分け合うということはなく、ほぼそのまま鳳月杏にスライドしていた(……という理解でいいですよね)ということです。大劇場のMelodiaのディスクを持っているわけではないので、おぼろげな記憶に基づいていますが。
ちなみに、本公演4番目だった瀬戸かずやが演っていた「黄金郷」の「王」の役を今回やったのはなんと高翔組長でしたね。これはちょっと驚き。

てなわけで、鳳月杏史上(笑)、出番出血大サービス状態だったんですよ(涙)。プロローグでも、キキちゃん(芹香斗亜)がスポット浴びて上手に登場して歌った後、下手でスポット浴びて登場するし(あの「こっちにスターもう一人来まっせー」と誰でもわかる演出がうれしい)、しびれたのは、スペインの冒頭、ひとり板付いて後姿でポーズを決めて登場するところ。とにかく歌が多いし……。いやー、3番手ってなんて見やすいんでしょう。位置はいいし長く歌っているし。おまけに遮るものもない(まあ、最近は最前列にいることが多いから、さすがに前に誰かがいることはなかったか)。さらに、全ツで加わった場面の一つがなんと、トップから3番手まで3人の客席降り! えー!! たった3人の客席降りにちなつちゃんが入っているなんて……。実を言えば、2階席、3階席からはほとんど見えなかったけど、許す。それからいきなり飛びますが、黒燕尾のあとも変更があって、なんと男役一人残って娘役従えて(でしたよね)、歌い出す。あれを最初に見た時は「ええええ! まだゼロ番場面あるんですか。聞いてない!」という感じでした。いや、初日じゃなかったんで聞いていたかもしれなけど、心の準備ができてなくて。

あー、ここでふつうの感想をちょっと。この新しくなった場面の歌「Lover, Come back to me」(通称ラバカン?)、曲自体はけっこう好きなんですけど、宝塚の選曲としてどうかな(アレンジ?がけっこうジャズ風だし)。あとでキキちゃんが歌うサビのところはまだいいのですが、冒頭でちなつちゃんが歌うところはテンポが速すぎて特に向いていない気が。私、宝塚の場合、歌は、ジャズっぽいものより歌い上げ系つまりバラードで割と朗々と歌うほうが合うと思うんですよね。
それにしても、ちなつちゃんが「ショーの三番手」をやっているのを見ることができて、幸せでした。素直に。これぐらいの番手が実は一番おいしいのかもしれないな、とか思ったりして。
 
そんなショーのなかで、私が一番堪能したのは……実は黒燕尾なんです。
今回いろんな鳳月杏を堪能することができたゆえに、私はやっぱり彼女の黒燕尾が一番好きだということがよくわかりました。なんというのでしょう。抑制の美学といいますか……。無駄なくメリハリの効いた手足の動き、あの冷たい表情……そしてポイントポイントで見せる挑むようなニヤリ! オペラグラスでがっつり見ることができて、もう思い残すことはござらん……いやいや、まだまだ(笑)。特にあの曲(「My Favorite Things」)と振り付け(平澤智)はしゃれていて好き。おまけに今回歌詞が英語になって(みりお君ご苦労さまデス)、楽曲差し替えを免れるだろうと言われているんですよね。ありがたや。もちろん、「3番手」扱いのちなつちゃん、立ち位置は大変いいし、燕尾はキラキラスパンコールの飾り付き、というまたこれも出血大サービス状態。
(ちなみに黒燕尾のメイン3人入りはこの間の大劇場「ミーマイ」でなぜか経験しているんですよね。あれも、今思うとちょっと不思議ではありました。直前に瀬戸かずや(4番目?)が芯の場面があり、直後にデュエットダンスがあるからといって、2番手芹香斗亜が芯で、両脇が3番手柚香光と5番目ぐらい?の鳳月杏というのはかなり珍しいのでは? まあ両脇の2人がジャッキー役者だったという共通項はあるけど)

黒燕尾以外の場面でも、彼女はあまり笑わない。あからさまな「ドヤ顔」もしない。でも表情がとても美しいんですよね。今回、ショーで踊っているときの表情って大事なんだな、ということがよくわかりました。つまり、下級生をちらちら見ていると、表情が単調だったり、あるいはどのシーンでもただニコっと笑っている男役がけっこういるんですね。たぶん、本人たちにとってはきちんと踊ることが大切なんだろうけど、正直、私にはダンスの差はそれほどあるとは思えない(素人なもんで)。でも、表情の差ってけっこうわかりやすいと思うんですよね。どうしてもダンスに注力しがちなんだろうけど、表情にもっと気を遣ったら、男役はファンが増えると思うな(笑)。けっこうもったいないと思いました。ちなみにピックアップされていない下級生のなかでは、私は一之瀬航季君の表情がとてもいいと思います。というかあの色気はなかなか。
あ、脱線してしまいました。ちなつちゃんに話戻ります。

最後にフィナーレ羽根問題。
えーっと、私が観劇する前に初日のツイッターなどをあさっていたので、3番手羽根(と呼んでいいんですかね。小さい羽根)しかも雉羽根付きということは一応頭に入っていました。しかし、私もともとあまり羽根の大小を気にしたことがなかったので(まだまだ青いヅカファン)、初めて観劇したときには、階段降りの順番は意識したものの、「ああ、そういえば羽根ね。確かに雉羽根もあるわ」ぐらいにしか思っていませんでした。そもそも、ショーのフィナーレ一人降りってジャッキー(ミーマイBパターン)除けば初めて? 「ミーマイ」はかなり特別だし(階段降りも銀橋の並び順も配役重視)、今回はあくまで全ツだけど、ね。
とはいえ、さすがに気になって、見た後でちょっとだけ過去の事例をお勉強しました。彼女の今の位置付けが正直よくわからないのですが(特に前の大劇場作品「ミーマイ」は番手がはっきりしていなかったから)、3番目に彼女が降りるにしても、必ずしも羽根がついてなくてもよかったはずだったし(ましてや雉羽根をや)、それなのに3番手羽根プラス雉羽根とはこれまた出血大サービス(?)。よかったね、と素直に祝福したい。しかし、そもそも全ツの羽根って基準があってないようなものみたいだし、あまり一喜一憂するのもどうか……と自分を抑えております(うーん、どうどう←鼻息荒い馬にささやくようにお願いします)。
いったい鳳月杏はどこまで行くのでしょう……。
一ファンとしては、常に新しい姿を見せてくれる彼女をただ追いかけていくだけなんですが。

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