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April 23, 2018

悪いことしたい、いい子でいたい

月組 東京宝塚劇場公演「カンパニー」「BADDY―悪党は月からやって来る―」-01

 まずは手短に。「カンパニー」は原作読んでいません。
 よかったのは、早乙女わかばちゃん演じる社長令嬢。これが、自分の立場をよく理解した憎めない「お嬢様」で、わかばちゃんのキャラに合っていて、かつ最後に見せ場あり……。初見のときはウルっとしちゃいました。
 で、話題になっている、タニマチのたとえとか、LGBT(とははっきり言わないけど)のくだりとか、突っ込みたくなるところはいろいろありますが……。私が一番引っかかっているのはそこではなく……(あ、話題の海乃美月が演じるユイユイの台詞「テメエが孕ませたんだろうが」は、言葉として即アウトというほどとは思いません。ただ、このセリフをどうしても入れるとすれば、ユイユイは、もっと男勝りというかスポーツのことだけ考えているような極端なキャラにしないといけないのでは、と思いました。たとえば、別格上級生男役なんかが女役としてやったら面白かったかもしれません。宝塚の路線娘役はなんだかんだ言って上品でかわいいですからね)。
 
 現代モノって夢夢しさがないぶん、ストーリーがしっかりしていないとシラけちゃうと思うのですが、この作品、どうも話に乗れませんでした……。
 一番大きいのは、無事に初日の幕が開き、いよいよあと一公演で終わり、という段階で、「なんか物足りない」「振付変えたい」と言ってくるバーバリアン阿久津さん(宇月颯)と水上那由多(月城かなと)が非常識な人間にしか見えない、いやもっと言うとバカっぽくしか見えない……ということでしょうか。阿久津さんなんて宇月颯のキャラでなんとなく人望篤くてクレバーそうに見えるけど、言っていること滅茶苦茶ですよね。終盤の大きな話の展開のきっかけがこれではしょぼ過ぎて……。これ致命的欠陥のような気がする。
 あと、世界的プリンシパル高野悠(美弥るりか)。みやちゃん好演しているけど、体がもうボロボロだから出番の少ないロットバルトをやると言ったはずなのに、途中で、自分がロットバルトと黒鳥を演じる「新解釈白鳥の湖」をやろうと言い出す……。これも地味に引っかかりましたね。「なんや踊れるやんけ」「出番増えていいのか」と。
 今回、主人公の青柳誠二(珠城りょう)も、カッコイイとはちょっといいがたい「いい人キャラ」でやや微妙ではないかと思えなくもないのに対し、このみやちゃんの役は、キャラが立っていてなかなか美味しいのですが、ちょっとこのくだりで人間として筋が通ってないなあ、と思いました。いや、実はスネていただけで、本当はもっと舞台に出たかったという設定!?
 はい、「カンパニー」今回はここまで。
 
 で、「BADDY」ですよ。「BADDY」。いや、すっごい期待して見に行ったんです。で、楽しい、楽しいんだけど……。ちょっと言葉に頼りすぎているのでは、というのが私の今の時点での感想です。上田久美子先生のお芝居は台詞がすばらしい。で、台詞なら基本的には内容はほぼ聞き取れるわけけど、今回のように歌詞になっちゃっているとそうもいかなくて……。っていうか、そもそも、私、ショーの歌詞ってそんなに注意して聞いていないんですよね。普段。
 普通に一回見ただけだとなんかたばこ吸っててノリノリでおもしろかったなあ、ぐらいしか記憶に残らないんじゃないでしょうか(それでももちろんいいんだけど)。しかし、もっとあれこれ考えたい私としては、複数回見て、プログラムも読み、スカステの「ナウオンステージ」や「ポップアップタイム」を見、聞き取れなかった歌詞をネットで拾い集めてはいるのですが、まだ不十分かな。私の場合、複数回見ておきながら特定シーンで同じ人ばかり見ているので、見落としているところが多々あり、「全体像が分かっていない」と傾向があるのでしょうが。
 あ、でも注意して台詞(というか歌詞)を聞こうとした3回目の観劇では、ロケットのバッディーズのエネルギーがじわーっと伝わってきて、ちょっと泣きそうになりました。ロケットについてはまだ考えがまとまっていない部分もあるのですが、少なくとも、可愛く笑顔でやるものとされていたロケットを「怒りの発露」にした、ってところがいいですよね。私はそもそも、ロケットがあんまり好きではなくて、それは衣装にしても「ヤァ!」の掛け声にしても、若くてかわいい無垢なものを愛でる、大人の男(男だけとは限りませんが)の欲望が色濃く反映されているように見える、ということもありますし、多分にファン目線でいえば、せっかくかっこよくなってきている男役もある学年まではロケットに入って、「かわいく」出る必要があるの?と思ってしまうからです。
 通常は女性には求められてこなかった、かっこよさ、強さ、包容力などを男役が体現するために、娘役が過剰に「娘っこ」を演じなくてはいけない、という「男(役)尊女(娘役)卑」を内包している、という宝塚のややこしい構造の話はまた別にするとしても。
 
 話戻ります。そう考えると、上田先生が、媚びない、強い、ほとんど笑わないという画期的ロケットを、ちゃんとかわいい衣装で作り上げたところがポイントかな、と。
 
 以前、オギーこと荻田浩一先生が、「ロマンチカ宝塚」でパンツルックの水兵さんのロケットをやったら某氏の劇評に「足をだしてこそロケットだ」的なことを書かれていたな、なんて思い出したりして……。オギーは、ロケットあって、黒燕尾あって、デュエタンあって、フィナーレで階段降り、という宝塚のショーのお約束を解体しようとしていたけれど、上田先生は、「ロケットありますし、足も出してます。そのほか定型パターンは踏襲していますけど何か?」という路線で、いわゆる定番的な要素は入れているけど、意味を大きく変えている。面白いですね……。
 
 どなたかが、ツイッターでつぶやいていらっしゃったけど、「悪いことしたい」に対応しているのは「いいことしたい」じゃなくて「いい子でいたい」であるというところが「なるほどー」ですよね。そう考えると、BADDYとGOODYは対ではあるけど全く対称というわけでもなく、まじりあうんだな、まさに。ぐるぐるぐちゃぐちゃと。
 で、最後にポッキー巡査。
 
 BADDYはかっこよくて面白いキャラだし、GOODYもキュートでカッコイイ。そして、キャラが立っていて美味しいのが、美弥るりかさんのスイートハートじゃないかと思っているのだけど、実は話の全体を見た時に重要なのは、ポッキー巡査なのかな、と最近思い始めています。まあ、正直言えば、最初に私がポッキーに注目した理由はポッキー巡査の中の人、月城かなとのファンということもあるけど。
 だって、BADDYたちの地球来襲による混乱(ぐるぐるぐちゃぐちゃ)で一番大きく変わった人がポッキーなんですよね。それまで状況に無自覚だったのに、新しい世界に触れて、自己変革をとげる人物って、観客が自己投影しやすいんじゃないでしょうか。そう、このショーは、ポッキーの成長譚でもあるんですよね……。あるいはポッキーの「ビルドゥングスロマン」とも言えるか……。
 そう考えると、何をやっても持ち前の誠実さがのぞいてしまうように見えるタカラジェンヌ月城かなとに、やっていることはトンチキですが、基本ナイーブというか、真っ当で観客が自己投影しやすい役をあてるのってとても正しいことのような気がします。
 ということで、もう少しポッキーについて考えたい……。
 
 
 
 

February 09, 2018

まずは歌ウマロべスピエール万歳!

雪組 東京宝塚劇場公演『ひかりふる路』『SUPER VOYAGER!』-01

 初見が新公後、とけっこう遅くなってしまいました。立て続けに二回観劇したらもうすぐ千秋楽。
 この公演、もっと見たかったー。そして、それはいつものことではあるけれど、映像なら見られる、って言っても、特にこの公演の場合映像だと良さが十分に伝わらない気がするんですよ……。残念。
 
 まず、『ひかりふる路』ですが、正直、後半の怒涛の展開のなかでの、ロベスピエールとダントンやデムーランたちの心の動きまで全部理解できたかというと、自信はない(笑)。でも、とにかく望海風斗と真彩季帆(彼女は私が見た時は喉の調子が悪くて声がハスキーだったけれども)の歌唱力。それを際立たせるワイルドホーンの楽曲!
 歌のパワーに圧倒され、「大作ミュージカル見ているんだ」感がスゴかった。多少分からないことがあっても、そのへんは帳消しにしてくれると言いますか。
 ブラボー! 2人が歌ウマと言うことは知っていたけど、この2人に、盛り上がる海外ミュージカル的な楽曲が加われば、もう怖いものなしです。
 この作品、今後もぜひ上演していってほしいな……。

 主な登場人物が、ヒロイン以外はほとんどが実在で、それぞれの登場人物にそれぞれ史実に沿った(そしてそれにオリジナルを加えた)設定があったようですが、まあ、ざっくりと、「ロベスピエールは仲間をどんどん粛清していって、最後は自分も粛清されてしまった」という高校世界史の知識があれば、細かいことはわからなくてもOKではないかと。
 
 ギロチンを表す照明や舞台装置もカッコよかったですね。衣装までも斜め線入りなのは凝りすぎのような気もしましたが……。ああ、とにかく衣装はトンチキなものがなく、すべてよかったな……。まあ、フランス革命期の衣装はたっぷりと倉庫にありそうですからね。宝塚は。ほんとうに、衣装や装置のセンスがいいってことは重要です。
 
 ヒロインのマリー=アンヌがオリキャラで、まあオリキャラらしい大胆な設定。自我がしっかりある自立した女性で、ある意味、あの時代にはなかなかあり得ないキャラかもしれませんが、それゆえ、観客席と舞台をつなぐ役割を果たしていた、と言えるのかもしれません。ああいうトリッキー(っていうのかな)なオリキャラがあることで、ただの史実が物語として転がっていく、と言いましょうか。
 
 個人的には生田作品って、例えば、別箱の「春の雪」と「ドン・ジュアン」は大好きだったけど、大劇場はあんまり好きな作品がなかったんですよね……。「ラスト・タイクーン」も「Shakespeare」もdespair。この前の「グランドホテル」は、再演だし共同演出だからちょっと除外ということで。
 さらにいうと別箱でも、「伯爵令嬢」はそれほど好みではなかったな…(そのほかの別箱は生で観劇していないんです。映像もちゃんと通しては見ていないかな)。つまりわりと好き嫌いが出ちゃう演出家だったんですね、これまでは。
 ですが、この「ひかるふる路」はかなり良かったです。ワイルドホーンの音楽と技術点の高い主演コンビに助けられたところはあると思うけど、それだけでなく、いや、それも含めて、かな。完成度高かったですー。なんとなく私のなかで、生田先生の星が一個いや二個ぐらい増えた気分(満点は星いくつとか突っ込まないでください)。これからますます楽しみになってきましたー。

January 11, 2018

クリフォード先生ったら好青年!

花組 宝塚大劇場公演「ポーの一族」-03

 いよいよ、3回目にしてたどりつきました。ちなつ(鳳月杏)クリフォード。この役について語るのはちょっと難しい。「まわしげりかっこいい!」などというファン目線の一方で、宝塚版ポーの一族でのクリフォードの意味は? ということも考えてしまったりしたので……。

 ネタバレします。

 クリフォードは医師で、原作にも出てきています。シーラを誘惑しようとして彼女の正体に気づき、致命傷を負わせ、メリーベルを銃で撃ち、最後はエドガーにその銃で……という役。バンパネラ一族に対し、人間ども(笑)代表。
 ポーツネル一家とアラン・トワイライトに次ぐ重要キャラかな?
 で、原作と比べてちょっとキャラが変わってます。
 この改変がね……。出番も増えていて、うれしいことはうれしいのですが……。
 宝塚オリジナル場面「婚約披露パーティ」なるものがありまして。黒燕尾を着てお相手である恩師カスター先生の娘ジェイン(桜咲彩花)と登場、友人たちのアーチを照れながらくぐるちなべー。すごいもの見せていただきました。で、親友バイクの突撃インタビューを受けて、“一目ぼれソング”を歌わされる。これが……なんかさわやかなんですけど。ファンとしてはまさかの赤面シーン、いや、大変微笑ましいシーン(笑)。
 さらに、そのあとシーラとダンスするのだけど、そのときのクリフォード、ウブです。青い……。恥ずかしそうに「この町を出たことない」とか言ってみたりして、シーラに「都会の遊びを教えてあげるわ」なんて言われる。うわー、そうなの? 都会から来た年上の女性に翻弄される純朴青年ってことなの? 「ぼくらでもいいんですか」とか言っちゃって(台詞は記憶のみで書いていますが、実はこのときの「ぼくら」も引っかかる。あくまでジェインと一緒、ダブルデート想定なの? でもここでは2人ともそんなこと考えてないでしょー。誰も聞いていない2人だけの会話なのに、という…)なんか恥じらう少女のようです(笑)。
 とにかく、シーラは婚約者のジェインのことも気に入り(「気に入りましたわ」×2)、クリフォードとジェインの二人は、ポーツネル男爵とシーラの「新しい仲間」候補に。で、シーラは、クリフォードを狩りに行く。

 →うーん、このときにシーラは「狩りに」というけど、彼らは仲間にしようとしているんだよね。それで「狩り」というのもちょっと変なような気も。

 でもって、2人はたいそう立派な(笑)「海辺の小屋」で雨宿り。で、シーラがクリフォードに迫る。このラブシーンは原作をほぼ踏襲ですが、ファンとしては小池先生にひたすら感謝の大人っぽい名場面です(ほんとありがとうございます!)。えーと、「粋なキスもできない」(もちろん宝塚オリジナルの台詞)は、ここでいうんでしたっけ? そして、抱擁の最中にクリフォードがあることに気づき……あとは怒涛の展開でラストまで突っ走ります。
 しかし、この怒涛の展開になる前にいまいちど戻って考えると、この宝塚版“さわやかクリフォード”は原作の「モテモテ」設定も踏襲しているため、やや謎のキャラになってしまっているのではないでしょうか。診察室で患者とキス、アランの従妹マーゴットに「3回もキス」しているようなプレイボーイには見えない……(追記:もしかして「キス3回」は、マーゴットの嘘? 患者とのキスシーンはありますが、マーゴットとの方は彼女が語るだけなんで。まぁ、確かに回数は水増ししているかもね。そして原作のクリフォード 先生なら、2回か3回か知らないけど、マーゴットが迫ればホイホイしてくれそうに見えますが、このクリフォード はもしかしたらマーゴットにはしていないかも、と思わせるところがありますね)。ちょっと分裂気味です。キャラが。
 原作のクリフォードは、見かねたバイク(原作では地味で真面目そうな男性)に、「おまえはジェインさんの気持ちを考えたことがあるのか!」と説教されても、「ジェインは美人じゃないがよき妻になるだろう。だが恋人むきじゃない。ロマンスは自分で探す」となんていうことをしゃあしゃあと言う、なかなかヒドイ男なんですが、こういうところはタカラヅカ的にマズイと思ったのかな……。うーん。
「ポーの一族」宝塚化に際しての重要な改変の一つが、シーラと男爵のラブサブ度アップです。シーラはバンパネラになることで、普通の幸せは得られない代わりに、永遠の愛を手に入れる。バンパネラは「何のために生きているのか」とクリフォードに言われているけれど、愛のため、に生きているのがこの二人。二人の純愛が強調されることで、薄汚れている人間ども(笑)と、愛に生きる(純粋な)バンパネラ、という対比がくっきりするんですよね。「愛」を謳う宝塚としてこの改変は効果的です。男爵とシーラの最期は原作とは変えてありますが、それも愛を強調する方向なんで、いい効果を生んでいますよね。
 この対比で考えると、クリフォードは、バンパネラに対峙する人間側の代表なんだから、原作どおり、プレイボーイで野心家のほうがよかったのではないかな、と私は思いました。単純で、計算ずくというか。ある意味人間くさい。
 ファンとしては、婚約披露パーティやら診察シーンの謎の歌台詞(笑)とか、出番や見せ場が多くてうれしいのは確かなんですが、そういう新場面のせいで、なんか、クリフォードという人物の性格がはっきりしていないような気がして(タカラヅカスカイステージのナウオンステージで本人が言及していたのはそういうことでは?)、ややもやもや…しています。これから芝居が変化していくのでしょうか。しかし、あの婚約披露パーティがある以上、好青年設定は大きく変わりそうにないし……。うーん。
 まあ、あまり贅沢を言ってはいけないかもしれません。某邪馬台国の兵の長と比べれば、断然こっちのほうが出番も多いし、歌もあるし、かっこいいし……。多少分裂気味といっても、キャラは立っていますから。
 そもそも今回のフィナーレだって、通常なら2番手がやる銀橋を、3人(あとの2人は仙名彩世と瀬戸かずや)で渡るうちの1人だし、パレードでもべーちゃん(桜咲彩花)とセンター降り。舞台上で並んでいる時の立ち位置も、さらに内側に入ってきていて、本当に、「あんなにセンター近くにいるなんて……」と感慨深いものがありました(毎公演そう言っているような気もするけど。まあうれしいんで言わせてください)。
 組内の序列でいうと、芹香斗亜の組替えのあと、柚香光が2番手に繰り上がり、そのあとは、どうもはっきりした路線3番手ではないようだけど(このへんはこの公演というよりタカスぺの扱いなどによれば)、瀬戸かずや、そして鳳月杏、水美舞斗が続くという順番は変わっていないので、いちおうそれぞれ少しずつ扱いは上がったこの公演。ついに、スカステのナウオンステージに鳳月杏と水美舞斗が出ることになりましたしね(個人的にはこのちなつちゃんナウオンステージ入りも本当に感慨深い)。
 しかし、この明日海、柚香、(ちょっと空いて)瀬戸、鳳月、水美というトップから5番目までの花組男役のラインはこれからどうなってくのでしょうね。
 誰か組替えで入ってくるのか(この5人のうち誰かが組替えで出ていくことはないかなと思いますが)、退団か、あるいは抜擢……。何が一番先に起きるかな……。
 ご存じのように、三回目ぐらいの「劇団よ、鳳月杏をどうしようというのだ」事件も起きていまして(5月の博多座役替わりのことです)、ファンとしてはすごく楽しみではあるものの、幸せすぎて怖いというか、その先のことも考えていろいろ気をもんでしまったりしているのです。

January 07, 2018

「ポーの一族」のヒロインは誰?

花組 宝塚大劇場公演「ポーの一族」-02

 少し冷却期間を置いたら落ち着いてきました(笑)。
 
 では、キャスト別。明日海りおと柚香光は前の項でやったのでゆきちゃんシーラから。
 
仙名彩世(シーラ)……「ポーの一族」を宝塚化するときの課題の一つがヒロインをどうするか、ということだったでしょう。エドガーは女性とはっきりとは恋愛しない。恋愛対象じゃないけれど大きな存在として妹のメリーベルがいるけれど、現花組トップ娘役の彼女はメリーベル役者ではない。通常だとここで彼女にメリーベルをやらせたり、ヒロインの役を原作と大きく変えたりする可能性があったと思います。しかし、そこは「原作」の力か、小池先生の力か、彼女をエドガーの若い養母シーラにした(これについては小池先生も制作発表か何かで説明していますよね。もし、もっと下級生の娘役トップだったらメリーベルということもあったかもしれない。しかし今の花組にはこれがいいと思った、と)。これは結果的には成功していたと思いました。シーラはヒロインではなかったけれど、メリーベルがヒロインと言えるかというとそういう感じでもなく……。ヒロイン不在で重要な女性キャストがシーラとメリーベル、ということだと私は理解しました(で、「相手役」はアランかな。特にBLとかそういう目でみなくても。ラストシーンはエドガーとアランだし)。
 もちろん、原作よりはシーラの比重は上がっていたと思います。歌もたっぷりあって。おかげでバンパネラの偏見をかわしながら生きていく、ポーツネル男爵一家の運命共同体感が強調されていましたね。ゆきちゃんドレスがどれも大変似合ってました。特にデコルテが美しい……。観客全ジェイン状態じゃないですかね(「美しい方。私なんて……」)。演技でいうと、バンパネラとなってからのちょっと達観したようなところが特によかったですね。ああいう年上お姉さまはほんと上手い。特に原作でも大変詩が印象的だった「ゆうるりと」の歌のところがよくて、堪能いたしました(あそこ大変重要なシーンだし)。個人的にいうと、ちょいちょい表情が豊かすぎ(特に笑顔)と思うことがあって、もう少し表情を抑え気味にしたほうがいいと思うのですが、いかがでしょう。特に若い頃は、後半と差を出しているんだと思うけど、貴族の娘なんだから(あれ、違いましたっけ?)、もう少しお澄まし顔でもよいのではないかと思いました。まあ、私はオペラグラスでのぞいた印象を語っていますが、オペラグラスを使っていない人、2階の後ろの席にまで届くように演技するわけだから、多少大げさなほうがいいのかもしれませんが。 
 後半、クリフォードを「狩りに」いくところなんて強そうで美しくてサイコーでした(笑)。バンパネラの世界を成立させるという意味で貢献度すごく高いと思います。宝塚の文法的には異例の配役かもしれませんが、作品を見た後では彼女がシーラでよかった、という気持ちになるかたは多いのでは? 私個人はもともとトップコンビはガチで恋愛していなくてもいいほうなんで、この配役は、彼女の魅力が出ていて問題なしです。でもって、フィナーレではちゃんとデュエットダンスの相手役もしているしね。このデュエットダンスが仙名彩世シフトなのか、アダルトなナンバーでしかも彼女の振りが力強くて、かっこいい。腕から背中の筋肉を堪能できます。いや、当て書きならぬ当て振り?
 
長っ!!! まあ、ここは仙名彩世を語るというより、トップ娘役のイレギュラーな役付を語ってしまいましたね。
 
瀬戸かずや(ポーツネル男爵)……というわけで、シーラの比重が上がったからこちらの比重も上がっていた模様。スタイルがよく眼福です。ゆきちゃんシーラ、みりお君エドガー、華メリーベルと4人でホテルの階段に登場したときは、まさに絵のようでした。あと、今回「あきら、ええやん」と思ったのは、「ゆうるりと」のところ、最初ゆきちゃんが歌っていてそのあとあきら君が参加するのですが、正直、「あきらの歌をいいと思う日がくるとは……」ぐらいよかったです。
 
華優希(メリーベル)……で、注目のメリーベルは新進娘役の華優希。「はいからさんが通る」の紅緒もやって、今回は本公演メインキャスト入り。イケイケ(死語)ですね。さすがの上手さでした(彼女の演技力を高く評価しております)。ただ、「はいからさん」と比べると、今回は、ちょっと元気が良すぎる印象を持ちました。メリーベルって、もうちょい線が細くて高貴ではかない子だと思うので。とはいえ、今の花組で誰ができたかというと……。彼女よりも「少女感」をうまく出せた生徒はそうはいないと思います。いや、オーディションに立ち会ったわけでもないし、わかりませんけどね。あ、でも舞空瞳ちゃんは雰囲気的にはけっこう似合うかな、とも思うので(しかし芝居力については未知数なのでなんとも……。「ハンナのお花屋さん」のハンナは悪くなかったけど、割とよくある若い娘演技でよい役だったから)、新公見てみたいものですが……。
 フィナーレは役の比重ということで、若手3人(水美、綺城、飛龍)、ちなべー(鳳月、桜咲)のあと、なんとお父様あきら(瀬戸)と2人降り。ここだけは役の大きさを反映していたけど、プログラムの写真は六分の一サイズ(役としての写真)の一番最後で、ヅカを知らない人は戸惑うだろうな、と。ま、写真の扱いは通常運転(いや、もちろん彼女にとっては写真サイズが大きくなり、前のページに出て、役名も入って、ということでめでたいと思いますが)で、「神々の土地」の伶美うらら様のときほど不親切とは言えないかもしれませんが(あれはほんととヒドイ)。
 
い、いかん……。これだと終わらないですね。うーん、ではちょっと書き方を変えて……。
 
「さすが実力者!活躍してました」の人たち。
 
天真みちる(ビル/ハロルド)……もちろん上手いことは前から知っている。しかし、今回、割と容赦なく(いや、その言葉の使い方間違っているし)使われていました。小池先生、万全を期してきましたね、という感じ。圧巻はスコッティの村のシーンでしょう(このときはビルかな?)彼女がセンターとって結構長い間歌ってます。「これがミュージカルってもんだ! 宝塚はかわいこちゃんだけじゃない。ちゃんと『ミュージカル』できる役者だっているんだぞー」というメッセージががんがん伝わってきましたね。しかもそれをアシストするのが、びっくこと羽立光来!花組きっての実力派おっさん役者しかも歌うまの二人が揃えばもう怖いものなしです(笑)。
 
和海しょう(ドン・マーシャル/アボット支配人)……ドン・マーシャルは冒頭出てきて、ストーリーテラー的役割を果たすのですが、このときのしいちゃんの声がよく通ってね……。やはりストーリーテラー的には人はセリフが明瞭じゃないとね、と思わせます。と思ったら、オリキャラのホテル支配人でも登場。ストーリーテラーが二役ってどうよ、と思うのですが、この支配人の歌やセリフがまたいい。場を締めていました。彼女は本当に花組に欠かせないイケメン系実力者。何度も書いている気がするけど、二枚目キャラなんで、新公主演してもよかったと思いますが……。
 
芽吹幸奈(マダム・ブラヴァツキー)……オリキャラの降霊術師が出る、と聞いただけで、見る前は不安しかありませんでしが、この降霊術チームは割にうまく本編にハマってました(小池作品のオリキャラと聞けばそりゃ、不安でしょう)。その中心人物がゆきちゃん演じるミセス・ブラヴァツキーです。大げさでいかがわしい演技、そして歌唱力!彼女のソロのところでは毎回拍手したくなる(笑)。アイメイク(特に目の下のライン)もスゴイなと思って見ていたのですが、初日の宝塚ニュース見たらそうでもなく、途中で濃くしたのか!と。いろいろ試行錯誤中なのかも。
 
ではこの項はここまで。
 
ちなつクリフォードは別項で(そればっか書いてる)

January 04, 2018

暑苦しい原作ファンと「ポーの一族」

花組 宝塚大劇場公演「ポーの一族」-01

 行ってきました。年始の宝塚。初日は見ていませんが、2日目から。思えば、こんなに初日に近い日に宝塚大劇場で観劇するのは初めてです。力が入っているのは、私が萩尾望都の愛読者だからであります。いやー、萩尾望都と宝塚といえば、私が人生の中で一番最初にはまったものと、三番目にはまったものではないですか。この奇跡のコラボの実現、東京に来るまで待っていられませんとも! 萩尾望都先生ではないですが、「生きているうちに見ることができるとは……」という大変幸せな気分で観劇しました。

 楽しかったです。そして、名作少女漫画「ポーの一族」の宝塚化という意味ではまずまず成功していたのではないでしょうか(なんかえらそー)。

 と書いてはいるものの、私自身、期待が大きすぎたぶん、この作品をどうとらえていいのかちょっと戸惑うところもあり、宝塚から帰る道々、帰ってからも、ネットでほかの方の感想(概ね「よかった」というのが多いけれど、なかには辛口も)を読んだりしながら、「私は何を期待していたのか?」と自分に問いかけておりました。で、今はこう思っています。私は、なんかすごい大傑作を期待するというよりは、「原作の世界観を壊すことなくうまく宝塚化してくれれば……」と願っていた。そして、その点においてはほぼ成功していたのではないかと(重ねてなんかえらそー)。
 宝塚は原作の漫画とは別のものだから、劇化するにあたって改変してもいい。でも、原作を損なうほどの変な「宝塚化」は原作ファンとして許せないと思っていました。

 私は「All for One」を見て、小池先生の持ち味は、エンタメだ、と確信したので(「エリザベート」が有名だからなんとなく勘違いしがちだけど、イケコオリジナルって基本明るいエンタメですよね。エリザはオリジナルの重厚さ暗さを反映している?)、「ポーの一族」みたいな、シリアスな話をどう料理するのだろう、という不安もありました。

 結論から言うと、原作の世界を壊すことのない作品に仕上がっていて楽しく観劇できました。一本モノの芝居で男役芸の発散が少なかった分は、カッコいいフィナーレつけてくれたし。もちろん小さい不満はいろいろあります。私としては、もう少し全体に重苦しい雰囲気で作ってほしかったのだけれど、やっぱり、というか、やや軽かったですね。「ポーの一族」を原作にするんだったらもうちょっと大人の味付けで、気の緩む暇のないようながっちりと重厚な雰囲気でもよかったかな……と。宝塚にはちょっとお子様には辛いかな、というけっこう文芸大作的な作品もありますし。
 しかし、危惧していたオリキャラとか変な設定(歌って踊る環境保護NPOとか)はなく、原作改変もおおむね納得できるものでした。というか、萩尾望都先生リスペクトのあまり、小池先生、ちょっと原作に縛られすぎなのでは、とすら思いました。もうちょっといじってもよかったかも。どうせなら(ここ原作ファンとしてはちょっと矛盾しているけど)。

 原作に縛られすぎというのは例えば、オズワルドとユーシスの場面。あの扱いなら、わざわざ「オズワルド」と「ユーシス」出す必要もなかったと思います。ってか原作読んでいなければ意味不明では? まあ、これも役の数を増やす必要があったからかな。そして最初の脚本ではもうちょっと出番あったのかな……なんて思っておりますが。

 宝塚化のときの課題の一つ、「役が少ない」を解決するためには、一族の人たち、スコッティの村人たち、アランが通うセント・ウィンザーの生徒たち、ラストのガブリエル・スイス・ギムナジウムの生徒たちがかなり増量され、ホテルの客、コヴェントガーデンのお店の人たち、そしてエドガーの分身(えーっと正式名称「エドガーの影」)などが登場していました。特に最後の「エドガーの影」については、「ああ、よくあるあれね」と思った私もちょっとムヒムヒしたので(1秒後には、「あら聖乃あすか君、超絶美青年ぶりが見られるかと思ったらかつらがあまりに合ってないね。ひときわ大きいエドガーは、あ、紅羽真希君ね。この若手イケメングループに入ったんだ(嬉)」などとひたすら下級生ウォッチに励んでいましたが)、宝塚を見慣れてない方にはやや受け入れがたいものだったかもしれません(笑)。

 しかし、この作品の成功要因は、何より、みりお君ですよ。明日海りおさま! 漫画から抜け出たようと言われているけど、私は、みりお君は漫画を参考にしつつ、唯一無二の「宝塚版『ポーの一族』のエドガー」を作り上げていた、と言いたい。素晴らしい。単なる漫画のビジュアルの再現だけではなく、そこにはちゃんと明日海りおのエドガーが存在していました。
 冒頭部分はちゃんと幼い少年に見えていたし(このへんは金色の砂漠でもある程度トレーニング済?)、成長し、人間からバンパネラになったあとは、表情の硬い、心を閉ざした“人にあらざるもの”になっていたと思います。みりお君は特に「声」のことをインタビューなどで言っているけど、声とか姿勢、体の使い方とかをかなり研究していたんでしょうね……。また衣装がどれも似合っているのも素晴らしい。ほんと少女漫画の少年体型に見える! 彼女はどんな役でもそれなりに演じることができるけど、闇を抱えた少年は本当にはまりますね(今作で言えば、特にバンパネラになってから)。作品の話題性も十分だし、これは彼女の代表作になるのではないでしょうか。

(「みりお君の登場を待っていて30年かかった」という神話が作られつつあるような気配がありますが)私自身は、小池先生が「劇化したいですー」と萩尾先生に告げてから30年もかかったのは、この役のできる生徒がその間誰もいなかったということではなく、昨今の状況の変化、つまり2.5次元の隆盛とか、ほかの舞台などでも繊細で美しい男性役者が活躍していて男役の在り方も変わってきているとか、そしてなにより小池先生の覚悟というかそこまでにキャリアを積んできての自信とかもあるのでは?と思っています。あ、でも、もちろんエドガーは誰にでもやれる役だと思っているわけではありません。難易度は高い。今回、彼女をエドガーに得たことの意味が大きいのは確かです。萩尾ファン、ヅカファンとしては、ちょうどそのタイミングに居合わせ、観劇できる僥倖にひたすら感謝です。
 そして柚香光アランも、虚勢を張っているけど内心孤独な少年(しかもまだ人間)をとても的確に演じていたと思いました。アランという、エネルギーの行き場を失っている「俺様」な少年が彼女のキャラに合っていたという面もあるとは思いますが。彼女、歌とお芝居が上手くなってきていますよね(「はいからさん」の時にもそう思いましたが)。かつては歌唱と台詞にかなり難あり、と思うことが多かったのですが、今作はあまり気になりませんでした(ヅカファンありがちの、「小さいころから成長を見守ってきた親戚のおばさん」フィルターがかかっているからちょっと甘いかな)。

 まだまだ書くことはあるのですが……。今日は時間切れだしエントリも十分長い。ほかのキャストについて(もちろんちなつクリフォードについても)はまた別項で。あと、細かい文句やつっこみ(これが楽しい)も別項で……。

 それにしても、私のような原作ファンで宝塚ファンというのが、一番文句が多く、煩い観客かと思いますが(笑)、基本的に、原作が好きで宝塚も好きということで、この層は実は最も点の甘い観客でもあるんですよね。
 問題は宝塚をあまり見ない萩尾望都ファンが、この作品を見て、「宝塚っていいじゃん」と思ってもらえるか、と、原作を知らない宝塚ファンがフツーに楽しめるか、なのではないかと。ある年齢層のディープな宝塚ファンには「ポーの一族」も読んだことある人が多くて、かなり盛り上がっているのだけれど、実はヅカファンの中でも読んだことない人は多いんじゃないですかね(お若い方を中心に)。

 ぜひそういう方の観劇の感想をお聞きしたいですね。

 で、今日のまとめ。
「ポーの一族」など萩尾望都の作品は漫画史に残る名作でしょう。いや、漫画史だけでなくそのさまざまな影響を考えれば日本文化史に残る。まさに財産です。それに比べれば、この宝塚版「ポーの一族」は、それ自体が宝塚の歴史を変えるほどの名作・問題作とは言えないかもしれない(かな。今のところ)。でも漫画と宝塚の幸運な出会いの一つということは間違いなく、それを生で見ることができたのは本当に幸せなことだと思いました。

 そして、30年来の封印も解けたことだし、制服もたくさん作ってしまったそうなので(月刊「フラワーズ」2月号萩尾×小池レジェンド(笑)対談より)、ぜひ今後は他の演出家の先生の演出した「ポーの一族」やそのほかの萩尾望都作品も見てみたいなと思いました(あ、小池先生もやってもいいけど←なにその上から目線)。えーっと、若き日の小柳奈穂子先生がバウホールで「アメリカン・パイ」をやっているだけですよね……。そういうことも考えると、この宝塚版「ポーの一族」上演の意味は、実は見かけ(いや見かけでもじゅうぶんいろいろあるんだけど)以上に大きいものなのかもしれません。

(余談)
 観劇直後にはこんなツイートも。どんだけ心配してんだ…。

November 04, 2017

蘭丸くんも通る!

花組 日本青年館公演「はいからさんが通る」-2
お次はこの方。
聖乃あすか(蘭丸)……今公演の新人賞を一人挙げたらもちろん、華優希になりますが、彼女が主演女優賞に繰り上げなら、新人賞はこの人では。下級生男役が演じるとただの女の子になってしまいがちな女方の少年という役(つまり女⇒男⇒女)で、どっちかというとかわいい系の男役である彼女はその危険性がじゅうぶん高かったはずですが、ちゃんと(宝塚的には)男に見えました。彼女声が意外と太くて低いんですよね。さらにメイクも上手い。さらに、メイドのコスプレはちゃんと怪しい女装になっていました(笑)。そして、芝居もけっこう達者。
 実は蘭丸ってかなり出ずっぱりで、3番手の鬼島軍曹(水美舞斗)より、舞台に上がっている時間は長そう、もしかしたら2番手の編集長よりも?というくらい。特に1幕は紅緒と一緒にいる時間が長いので(駆け落ちもするしね)、作品前半で「宝塚版はいからさん」の世界を構築するのにかなり重要な人物(主にコメディ方面で)。実際、ポスターにも入っていたし、フィナーレでもソロあり(最初に見た時はちょっと驚きましたが)。彼女は立派にその任を果たしていたと思います。
 牛五郎(天真みちる)とコンビでいることが多かったけれど、ちゃんと迷コンビになっていたというか(タソと組んで芝居したのはいい経験になったでしょうね)。勘がいいのかな。彼女は以前から美貌で注目されていたけれど、美形なだけじゃない、なかなかの実力派ということがわかりました。今回の蘭丸は女の子っぽい役だから演じやすかったんで、大人の男をちゃんとできるの?という声もあるでしょうが、「邪馬台国」東京新公のクコチヒコは、押し出しがよくて、メイクやかつらも似合っていて、女の子っぽい、ということはありませんでした(って、新公見てることをブログで初告白。いや、本当は感想書こうと思っていたんだけど忙しくて……)。
 では、ここからちょっとだけ新公クコチヒコ語り。
 登場したときに、メイク濃い目でけっこう精悍で、「おお、オンナノコしてない」と思ったのが第一印象。彼女は背がそれほど高くなく、スタイルもすごくいいとはいいがたい(なで肩なのかな?)けれど、クコチヒコの大きめ衣装とロングのかつらがうまくそのへんをカバーしていると思いました。あと、お化粧のせいで、お顔がキキちゃんクコチヒコにかなり似ていて、あ、そうか似た系統のお顔なんだな、と気づきました。
 ただ、新公では、主演の飛龍つかさに比べると、さすがに声がまだできていないし、歌もちょっと安定感がないかな、と思ったのですが、今回の「はいからさん」で発声についてはかなり安定して太い声が出ていたと思います。歌もまあまあかな。やっぱり一回かぎり(ムラと東京合わせても2回)の新公と違って、回数重ねることで慣れてくる部分もあるのでしょうか。
 基本美形で華があるし、見かけと違って声は太く、芝居センスもある、ということで将来が楽しみですね。100期といえば、スター揃いで、娘役は次期宙組娘役トップの星風まどか、同じ花組の娘役には今回のヒロインの華優希のほかに音くり寿もいて、男役では星組の極美慎、月組には風間柚乃などが頭角を現していますね。ちょうど極美慎が男役で初めての新公主演をしたばかりですが、その紹介記事には、同期の有望株として聖乃あすかの名前はあがっていなかったけど(私が見る限り)、今回の蘭丸の好演を見ていると、彼女も100期のスターの中に入れてやって、と思いました。いずれ新公主演はするでしょうけど……。
 聖乃あすか君だけでこんなに長くなってしまったので、これで一本立てました。まあ、でもこの公演は将来、聖乃あすか抜擢公演としても記憶されるものなのではないかな、と思いました。

October 31, 2017

少尉など「はいから」な人々

花組 日本青年館公演「はいからさんが通る」-1
 東京でも見ましたー。チケット難の公演でした。ぜひ、再演したほしいですね。というか、「はいからさん」って博多座とか赤坂ACTとか梅芸で一ヶ月ぐらいやってもいい作品では、と思いましたがいかがでしょう。
 誰もがわかっていることだとは思いますが、基本的に少女漫画は宝塚との相性がいい。そして、ストーリーがしっかりしていて、登場人物のキャラも立っていれば、演出家も物語を宝塚仕様の脚本にすることと演出に集中できていいのかもなどと考えてしまいました……。やはり、ゼロから物語を作るのはけっこう大変だと思うし……。というか、基本的な物語(おはなし)をもっと大事にしてほしい、とかねがね私は思っているんですが。もしかすると昔に比べて観客の宝塚作品の脚本に対する要求レベルが上がっているというか、細かくなっているのかもしれません。いまは娯楽も多様化しているし、「萌え」も細分化・先鋭化しているし(笑)。

 で、「はいからさん」です。ドラマシティで書いていないことを中心に。
 
 一幕冒頭は、紅緒(華優希)と蘭丸(聖乃あすか)の剣道のけいこシーンなんだけど、ハイテンションの勢いのある場面で始まって、「それではみなさん、いってきまーす」と紅緒が自転車で走り出すところまでの一つながりがヒロインを観客に紹介するという意味でとても洒落た導入だったと思います。「みなさん、いってきまーす」の皆さんが、自分たちのように観客にも思わせて。
 この作品、全8巻(実質7巻)の歴史大河ドラマをうまく2時間に圧縮しているんだけど、駆け足になってしまっている部分については、観客が原作読んでいることに助けられている部分もあるな、と思いました。紅緒と編集長(鳳月杏)が結婚することになったのも、原作読んでなければ、唐突すぎで、紅緒、やけおこした?と思わなくもないのでは? それから、木の上のシーンを舞台でやっていたけど、あれ、原作知らないと木の上とは気づかないんじゃないかと思いますが、まあ、気づかなくてもよいのかな。あとは高屋敷(亜蓮冬馬)なんかも、出ては来るけど、あれだけでは何が何だかわからないのでは? などといくつか気になりましたが、まあ、原作を知らないと支障があるほどではないからいいのかな……。
 
 では、いままであまり触れていなかった生徒さんたちを(一部重複)。
 
柚香光(伊集院忍=少尉)……実は、私、光君の大劇場以外の別箱公演ってほとんど見ていないんですよね。もしかすると、「近松・恋の道行」(2012年)までさかのぼるかも……。ちなっちゃん(鳳月杏)が組替えしてきてからは、組が分かれるときはずっと別でしたよね。なので、彼女の印象はほぼ大劇のみ。で、以前は歌と滑舌(これは「金色の砂漠」のときに顕著)にかなり課題があると思ったのですが、今回はそれはあまり気にならなかったです。歌は音域など配慮されている部分もあるのかな、と思いますが、台詞はかなりよくなりましたよね。包容力も出ていたと思います。すごい進化! 若いっていいなあ……。ビジュアルはもちろん(美は正義です。宝塚においては)、芸風から言っても王子様系の役がよく似合うということがよーく分かりました。
 
桜咲彩花(花乃屋吉次)……きっぷのいい芸者を好演。カラコロと出てくるだけで空気が変わった。出番は少ないけど印象的ないい役でしたね。彼女は本当に得難いスターだと思うな……。なんでトップになれなかったんだー。やっぱり体形? それとも最近だいぶよくなったけど歌?
 
<ちょいもったいなかった人>
水美舞斗(鬼島軍曹)……ちょっと割を食っていたかな、と思いました。3番手として扱われてはいたけど。それで、これはみんなが言っていることですが、北公路環(城妃美伶)とのラブがほとんど描かれていなかったのが残念。で、環様もラブは中途半端なんですが、モダンガールズのナンバーという見せ場があったので……。

<かなりもったいなかった人>
和海しょう(鈴木ほか)……彼女は本当にもったいなかった。男役に順番に役につけていったら、主な役が彼女の前で終わってしまった、という感じ。実際は何役もやっているので、その分エエ声を何度も聞けた、とも言えるけど……。一応メインの役は冗談社の社員の鈴木だけど、彼女ぐらいなら本当はもう少し大きい通し役が欲しかったですよね……。
 
<芸達者なお姉さまたち>
鞠花ゆめ(如月)……すごい迫力で、当たり役! 彼女、下級生のころは可憐な少女たちなんかをやっていたんですよね……。いまとなってはそれが信じられない(笑)。コメディ部門の貢献度大。
 
新菜かほ(ばあや)……彼女は、今までは割と若い娘の役をやることが多かったようにも思いますが、一気に老け役。たぶんあまり今までやったことがないんじゃないかと思いますが、無理なくコミカルなおばあちゃんを演じていて、「今後こっちで芸を深めていっては?」という可能性を感じました。

花組の場合、スーパー上級生娘役の花野じゅりあお姉さまが、ゴージャス美女(まだまだ現役)タイプなので、今回の如月やばあやのような役が下級生に回ってくる可能性はこれからもありそう。で、この二人、つまり鞠花ゆめや新菜かほはそのへんの担うことになるのかもしれません。あ、今公演では芽吹幸奈が祖母役でしたね。彼女も召使の長(?)とかよくやっていますね。
 
<そのほか、チェックした下級生たち>  
若草萌香(客・女ほか)……MY HEROでの通販番組の司会者が忘れられない芸達者ジェンヌ。今回は女学生やモダンガールズもやっていたけど、伊集院家の園遊会の客の女では、紅緒に足をかけて転ばせていましたね(笑)。あと、少尉のお葬式?で嫌味を言う親戚も。やはりそういう重責は彼女に来るのか……なんて。今はまだ下級生娘役グループの長ぐらいの位置だけど、彼女の良さが発揮されるのは女役だと思うので、小娘役は早めに卒業させてあげてほしいです(笑)。
 
太凰旬(北原ほか)……ちょっとしぃ様(和海しょう)に似たすっとした美形さん。お芝居しているのをちゃんと見るのは初めて。何役もやっているけれど、一番目立つ役は冗談社の社員の北原ですね。編集部では一番の若手の役なのかな。声がちょっと高いのが残念と思ったけど、あれもそういう役作り?
 
あとは、牧師役で下級生にしては出来上がっている声を披露した涼葉まれ君、シベリアの日本兵のなかですごくダンスのキレがよかったのは彼ではないかと思うんですが、違うかな……。伊集院家の園遊会で蘭丸のメイドを不審げに見ていた召使とモダンガールズで、タイトなワンピースを着ていたのは詩希すみれちゃんかな。モダンガールズのときのスタイルの良さが印象的。

October 22, 2017

アベルってやっぱりヒドイ男では?

花組 TBS赤坂ACTシアター公演「ハンナのお花屋さん —Hanna’s Florist—」

 作・演出の植田景子先生は、宝塚歌劇団初の女性演出家。二番目はもう辞めてしまった児玉明子先生で、三番目が、もうすぐ「はいからさん」の東京公演が始まる小柳奈穂子先生、四番目が、いま東京宝塚劇場で上演している「神々の土地」の上田久美子先生。つまり、もうすぐ東京では大劇場デビューを済ませた宝塚の女性演出家3人の作品が同時期に上演されることになるんですね……。この三人のあとも、女性の演出家は入ってきていて、何人かは演出助手や新公演出で名前を見ます。そのなかで樫畑亜衣子先生がバウ公演デビュー済。いまでこそコンスタントに入ってきている女性演出家ですが、植田景子さん入ったの1990年代だから、均等法に遅れることウン年。女性だけの劇団でありながら、演出家の女性登用が遅れたのはなぜ?と思ってしまいますね。現在の女性演出家の活躍を見ると。
 景子先生と言えば、祐飛君(大空祐飛)の「THE LAST PARTY」「HOLLYWOOD LOVER」を良く覚えています。この二作品がなければ祐飛君はトップになれなかったのでは? 景子先生は、祐飛君の良さにいち早く気づき、良さを最大限に引き出してくれた方ですよね(感謝ー)。誰もが認めるトップ候補生なら、何やっても大丈夫かもしれないけど、こういうふうに自分の魅力を引き出してくれる演出家との出会いもとても大事なんですよね。きっと。
 大劇場作品では「堕天使の涙」が好きでした。コムちゃん(朝海ひかる)の退団作品。お耽美な作品でした。ルシファーは朝海ひかるにしかできない役。
……なんですが、最近の作品というと……。大劇場作品では実はあまりいい印象がない。直近だと『舞音』ですか。うーん。
 で、「ハンナのお花屋さん」です。

 このエントリーのタイトルで明らかではありますが、あまり高評価じゃないです。ご注意ください。ネタバレもあり。
 あ、でもよかったところもありましたよ。
 松井るみさんの装置はいつもすてき。今回は象徴的なモチーフとかではなかったけれど、森のセットにしても、いつもの宝塚歌劇団の「森」とは違って書き割り感がないというか、とてもオシャレでした。
 それから、衣装(ファッションって私はあまり得意な分野じゃないんですよね。的外れなこと書いてしまっているのではないかとちょっと不安)。今回は現代のロンドンが舞台ということもあり、登場人物の来ている服がわりとイマドキの流行に近いといいますか……、特に男役が、宝塚にしては細いシルエットの服を着ていてたんですが、これがなかなかよかったです。瀬戸かずやのスーツも細身だったし(これが絶品)、みりお君の細身のパンツも似合ってました。
 宝塚のスーツに一昔前のちょっとダボっとした形のが多いのは、単に、昔の衣装の使いまわしだからと思っていたけれど、もしかして、男役のスーツは少しダボっとしていたほうがいいという考えのもと、わざとやっているのかしら。しかし、この作品を見て、イマドキの細いシルエットでもけっこういけるから、もっと舞台衣装に取り入れたほうがいいんじゃない?と思いました。特に現代ものの芝居では。だいたいジェンヌは足が細くて長いんだから、それを生かしたほうがいいと思う。リアル男性でも足が細くてカッコイイ人はいるし、ね。
 すごくシンプルに言って、いつもとちょっと違う、細身のパンツにエプロン姿のちょいモダンなみりお君を見ることができたのはよかったです。眼福。
 フィナーレのマリメッコ(のウニッコ)はね……。さすがタカラジェンヌ、ちゃんと着こなしているけれど、あの衣装、今後使いまわしづらいよな……なんて心配してしまいました。男役は瀬戸かずや以下は、上だけマリメッコ、下は白のジーンズ?だったからまあそれなりだったけど、大きな花柄のスーツ(上下)を着てそれなりに見せてしまう、みりお君とキキちゃんはすごい。あれ、普通の人が来たら漫才師とかチンドン屋さん風になってしまうのでは……。難易度高いと思います。
 と、遠回しに衣装の話とかしてみたりして……。

 えーっと、肝心のストーリーですが、どうも私は感情移入できませんでした。いい人だけど何かこじらせている明日海りおのクリスはまあいいとして、重要なカギとなるクリスの父、アベル(芹香斗亜)がね……。まあ、よく言っても、「やさしい」んだけど、結局優柔不断で女を不幸にするタイプ。ありのままに言うと、ウブな娘をもてあそんで、田舎に囲って自分は金持ちの娘と結婚する、という勝手な男。しかも、本人は誠実なつもりで両方にいい顔しようとするから余計残酷ですよね。正直、私が芹香斗亜のファンだったらかなりがっかりすると思います。いや、特にファンではない私でも、「キキちゃん花組最後の役がこれか……。二番手なのに」と思いました。キキちゃんは誠実オーラ全開で演じていて、全く悪くないのですけど。
 まあ、この手の話(妻がいるのに愛人つくる)はいままでの宝塚作品にもあったかもしれないけれど、いくらお貴族様といっても、現代を舞台にした新作でそれが展開され、しかもあまり本人たちが苦悩している様子がないのはいかがなかものかと。妻のソフィア(白姫あかり)が、アベルが死んだあとで、「私は諦めたの。ハンナはアベルにとってかけがえのない…」(大意)的なことを言うけれど、そりゃないだろう!いくらなんでも。ここは蛇足と感じました。
 父と没交渉だったクリスに叔父のエーリク(高翔みず希)が、「誤解があるんだ。実は……」(大意)と話しかけていたけど、なんかそのあと話を聞いても、いままでの認識が覆るような新事実はなかったような気がしましたが、そうでもなかったですかね……(一回しか見ていないせいもあり、ちょっと自信ないけど)。実は、両親の実の子じゃなかったんだ、というのも免罪符にはならないと思うんだけど。
 同じ二股設定(いや二股じゃないけど…。好きな女性と一緒にいられない主人公という点で一応似ているかな)でも、「はいからさん」の少尉は、ラリサに命を助けてもらった、自分が記憶喪失になっていた、そのラリサがもう余命いくばくもない、と少女マンガ的御都合主義とはいえ、読者が少尉を軽蔑しないような状況が説明されているわけで(これは、宝塚の脚本というより、もともとの漫画が用意している設定だけど)…。

 でもって、ヒロインのミア(仙名彩世)もね……。もうちょっと出番を多くしてあげてもよかったんじゃないかな。あと、移民という設定にしても服はあんまりリアリズムじゃないほうがよかったのでは……(別にリアリズムじゃないんだろうけど、あのダサさ加減はちょっとお気の毒。服にお金がかけられないのとダサいのは違うと思うゾ)。地雷キャンペーンと絵本もね……。ちょっとタイアップっぽくって私はあまりしっくりきませんでした。クロアチアのあの年代の女性が弟を失ったシチュエーションとして何がいいのかよくわかりませんが……。「地雷」とはっきり出さなくてもよかったんじゃないかな。逃げ惑う間に見失ったとか、そんなところで。まあ、このへんは「地雷問題」への私の認識不足のせいかもしれないけど。
 今回、景子先生は、今までとはちょっと違う等身大の女性をヒロインにするという試みに挑戦したのかもしれないけど、なかなか難しいですね。特に相手がフェアリーみりおくんだし…。ミアが猫を拾って来るエピソードとかよかったですけどね。
 花屋のメンバーはけっこうキャラが立っていてよかったと思います。大劇場ではなかなか大きな役が来ない子たちにもセリフがあって。これぞ、別箱の醍醐味ですよね。
 あと、瀬戸かずや演じるジェフと乙羽映見演じるキャリアウーマンサラ夫婦のラブサブぶり、クリスとの同級生設定とか、適度にリアルで適度にかっこよくてよかったなあ…。こういう半歩先ぐらいのかっこよさ、的な世界観は従来のヅカにはあまりないけど、もっと取り入れていってもいいような。現代ものって難しいと思うけど。

 では、あとは生徒別に。
優波慧(トーマス)……花屋のウェブ担当。膨大なセリフを達者にこなしてました。少し狂言回しっぽいところもあり。それなりに目立つ役はいままでもあてられてきたけど、今回はかなりフィーチャーされていましたね。上手い。彼女はフェイスラインが女の子っぽく見えないのもいいですね(アーネスト・イン・ラブのメイドコスプレでも、とたんに可愛くなってしまう男役の中でしっかり女装感出てました)。現代的な役が似合うのは、軽さが持ち味だから?
美花梨乃(チェンリン)……花屋の従業員。スタイルがいい! 細い足を強調するような細身のボトムス、ぴたりめのトップスで、とても現代的。「MY HERO」の司会の「お姉さん」に続く、別箱の仕上がりを底上げする存在。
紅羽真希(ヨハン)……こちらは花屋ではなくてデンマークが一応メインらしいけど、ロンドンの場面でもちょこちょこバイト。遠目に観て、「あ、この姿のいい男役は誰?」と思うといつもまいこつでした。彼女、芝居も決して下手ではないと思うんですが、役付きはイマイチ。今回もちょっと割を食った感じかな……。なんかもったいない。
舞空瞳(ハンナ)……クリスの母。アベルの妻(?)。顔ちっさ! スタイルは満点。歌声が意外と野太いのにはちょっと驚きましたが、なんでも達者な感じ。ただ、割とベタな「純真な乙女」演技をしていたので、なんかもう少し演技で個性を出してほしいような。あと、メイクがんばればもっときれいになるはず、かな。
 いつもは複数回見てから書くことが多いのですが(笑)、今回は1回限りの観劇、しかもプログラム買わずに書きました。違っていることがあったらごめんなさい。

 追記:
 いろいろ書いているうちに思い至りました。アベルは、主人公クリスをこじらせた元凶で、基本ヒドイ男なんだけど(つまり、本来ならもっと比重の低い役)、二番手の芹香斗亜が演じるために、いろいろ書き込んで「いいひと」みたいにしたからおかしくなっちゃったんじゃないですかね。で、ミアも本当はクリスをめぐる人々の中の一人(音くり寿演じるアナベルとかと同じ)だったのにヒロインつまりトップ娘役の役にしたから中途半端ってことでは!! なんかそう考えると妙に納得。やはりこれは基本クリスの成長物語なんだなー。そこに宝塚の二番手、ヒロインポジが上手く入れられていないという……。どうでしょう。

October 17, 2017

ヤマネから6年か……。

花組 シアター・ドラマシティ公演「はいからさんが通る」-2
 原作ファンも満足させて、かつ原作世代じゃない人たちも楽しめる、ある意味レンジの広い作品を作る(といっても「宝塚の」なのでその点ですでにレンジは狭いが)、という点では、小柳先生は本当に上手いよな……と思いました。
 乙女ゴコロを押さえて、適度に現代的で、結果、宝塚ファンの層のかなりの部分をカバーしているといいましょうか。
 たとえば小池(修一郎)先生はもちろんかなり幅広い層に支持される作品を作っているけど、氏の場合は、東宝ミュージカルの演出もしていることからもわかるように、「普通の」ミュージカル寄り(いや、私はすごく尊敬しています。エンタメとしてレベル高い)。小柳先生の場合、なんていうのか、小池先生よりは、ぐっと乙女ゴコロに標準を合わせていて、ゲームなどのテイストも入って、21世紀における宝塚の一つの姿ではないかと。しかし(ここ重要)、独りよがりではない。オタクすぎない。今回の場合、70年代少女漫画ラブコメの灰汁(アク)を抜いて洗練させたといいましょうか。さすがプログラムピクチャーの監督を目指していた小柳先生(これは「幕末太陽傳」のプログラムより)。そのへんの割り切り方が気持ちいいですね(もしかしたら、小柳作品には隠しようのない先生の嗜好がぷんぷんしているのかもしれず、そのへんわかる人にはわかるのかもしれないけれど……)。たしか、小柳先生の作品は「オタク」っぽいと以前はよく言われていたし、ご本人が自分のことをオタクと言っていたこともあったようですが、最近の作品はもう「オタク」っぽくはないな……。
 
 そもそも、宝塚歌劇団って実は、そういう、ちゃんと今のファンのニーズにこたえる作品を一定のレベルで量産できる、ある種職人的な作家が少なくないですか。まあ、自分の世界がものすごく確立していて、ちょっとレンジが狭いかなという作家が個人的には結構好きだったりするんですけど……。たとえば私がリスペクトする上田久美子先生の作品は常に一定のレベルを保っているけれど、作家性が高くてもしかしたらレンジがやや狭いかもしれない(ご本人はそういうつもりじゃないと思うけど)。正塚先生なんかもけっこう独特の世界を構築していますよね。あ、あとちょっと自分の趣味に走ってしまって惜しいことの多い大野先生も。
 小柳先生みたいな、原作ものもどんとこい、イマドキのエンタメに慣れた人にも楽しめるけどちゃんと宝塚的な良さもあって幅広く受け入れられる作品を手堅く作れる人がもっといてもいいように思うのですが……。ある種マーケティング的というか戦略的にできる人。まあ、言うは易しで、これが難しいんでしょうけど。
 問題なのは、自分の世界に入り込んでしまって観客のことを考えていないんじゃ、という作家や、乙女ゴコロを逆なでする作品を作る人、あきらかに時代遅れな作品(このへんは見る人によって意見が分かれるでしょうが)を作る人、あとは、それどころか、お話になっていないものを作る人なんですけどね(う、書いていてクラクラしてきた)。
 
 今回の「はいからさん」で言えば、全8巻(実質7巻)のストーリーの全体を舞台化する、原作ファンのイメージを壊さないという制約があったようですが(制約というとちょっとマイナスイメージが強すぎるけど、条件というか、しばりというか)、原作があってこそ、のメリットも大きかったように思いました。なかにはこれをどうやって宝塚に……みたいな原作もあると思うけど、この「はいからさん」は宝塚に向いていましたよね。無理に男役の比重を上げる必要もないし。登場人物の数はそれなりに多く、また、原作で登場人物のキャラが確立しているのもいい方に働いたというか……。
 まあ、冬星さんについていえば、原作に出てくる水色スーツと髪型(かつら)については、もう少し原作から離れてもよかったかな、と(笑)。やっぱりいくら鳳月杏が足が長くても、漫画の冬星さんのスタイルとは違うので、水色スーツにあのかつらはちょっとバランスが悪かったような……。水色スーツよりフロックコートと、結婚式のロングタキシードのほうがよかったです。あ、ロングタキシードを脱いでベストになったときが一番足長だったけど。
 と、なぜか小柳先生語りから、冬星さんの衣装の話に脱線したけど戻ります。
 いま、私、小柳先生の別箱(大劇場以外の公演)見るの久しぶりだよな……と思ってWiki見たら、なんと2011年の「アリスの恋人」ぶり。大劇場公演は全部見ているんですけどね。そして、「アリスの恋人」といえば、鳳月杏はヤマネ役でしたね……。いつも寝ていた(遠い目)。いやー、光陰矢の如し。
 ちなみに、Wiki見てもう一つ気づいたのは、大劇場公演は星組と雪組しかしていないんですね。今度宙組やるけど(しかもまた漫画原作)。原作ものが続きますが、オリジナルもまた見てみたいです(いつも言っている気がする)。

⇒小柳先生についてもっと知るには
……というわけではありませんが(笑)、2014年のこのインタビューが面白いと思いました。特に、「ビジネス書をたくさん読んでいた」とか「テーマ性より方法論と思い至った」と話している第二回。登録しないと全部は読めませんが。
 
日経ビジネスオンライン
宝塚が、乙女ゲームに負けてる場合じゃない
宝塚歌劇団演出家 小柳奈穂子さん 第2回
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140908/270934/

October 12, 2017

「全部忘れさせてやる!」

花組 シアター・ドラマシティ公演「はいからさんが通る」-1

 いやー、小柳先生は手堅い。華優希はすごい。そして、鳳月杏は、また新しい面を見せてくれた、というのが、今回の三大収穫でしょうか。小柳先生が手堅いのはだいたいわかっていたから、3番目は、むしろ柚香光の安定感かな。彼女が美形なのは前からよーく知っていたけど、台詞も明瞭だったし、歌もあれぐらい歌えれば問題ないんじゃないか、と。何より少女漫画の主人公としてのヒーローオーラ全開で、しかも包容力出てました。もう2番手だもんね。いや、めでたいです。
「はいからさんが通る」は75年から77年に連載されていたそうで、実は世代的にはかなりばっちりなんですがなぜか読んだことなくて、今年に入ってから電子書籍で読みました。ほぼ同じ時期に「なかよし」で連載していた「キャンディ・キャンディ」は読んでいたんだけど、なんでこっちは読んでいなかったのか…。
 読んでみたら、ラブコメであると同時に、かなり歴史物でした。米騒動とか平塚らいてふの名前も出て来るし…。まあ、でも魅力的な主人公の成長物語というストーリーがしっかりしているから安心して読める感じ。あとは、いかにも、な絵や展開が「懐かしい」感じがしましたが、挟まれるギャグの多さにはちょっとびっくり。当時はあれが当たり前だった? いや、そういう作品もあったと思うけど、それこそ、「キャンディ・キャンディ」は登場人物が突然ギャク漫画ぽくなることはなかったと思う……。ちなつちゃん(鳳月杏)が、スカステの「ナウ オン ステージ」で、「漫画をあまり読まないので、読むのに時間がかかった」と言っていましたが、それって、普通に漫画の文法を知らないから時間がかかる、ということなんだろうけど、あの頻繁に挟まるギャグにも違和感あったんじゃ、などと思ったりして……。
 と、正直、時代を感じさせるところもあるけど、ヒロイン紅緒がしっかり自分で運命を切り開いていく女の子なので、その点で現代でもじゅうぶん通用するのかな、と思いました(舞台の感想からはやや脱線しますが、原作には、女性も自分の仕事をもって自立していこう、というメッセージが強く打ち出されているけれど、40年経っても、その点にあまり時代を感じないのは問題かもしれませんね。男女平等が実現したとは言い難い日本社会のほうが)。
 鳳月杏演じる編集長・青江冬星は、原作通りのイケメンで、ヒロイン紅緒を少尉と取り合う、という重要でオイシイ役柄。ただ、宝塚版「はいからさん」の編集長はけっこうお笑いシーンが多く……。ロングヘアーをバサッとやりながらはける、女性アレルギーが出て、「うーん」と倒れて編集部員に抱えられて退場……などという今まであまり見たことのないベタなコメディを演る鳳月杏を見ることができました。笑いを取った役ということで思い出すのは、「THE KINGDOM」のラトヴィッジ部長ぐらいだけど、あれはハリー(正塚先生)芝居だったから、笑うといっても「クスッ」みたいな感じでしたよね。(追記:コメディといえば、「アーネスト・イン・ラブ」がありましたね。役替わりちなつアルジャノンはかわいくてよかったなー。ただ、今回みたいに派手に笑わす役ではなかったですよね。アーネストときゅうりサンドをめぐってふざけるところは笑いのポイントでしたが、あれはどっちかというとアドリブで笑わすところだったし……。セシリィとの歌で、バタっと倒れるところもあったけど。あーそれにしても、ちなつアルジャノン、映像で見たい……)
 話を戻しますと、本人がいかにも面白おかしいのではなく、役をきちんと演じてしっかりおかしい、というところが芝居巧者の本領発揮と思いました。芝居が上手い人はシリアスもコメディもいけるんだよね、と。というか、鳳月杏は、きちんと全体の中で役を演じる人なので、ちゃんと書き込まれた役を与えられるといっそう輝くな、と。それがイケメンの美味しい役なら、ファンとしてこんなにうれしいことはないです。
 とはいえ、不満はないわけではなくて……。編集長の出番が集中している二幕は全体に駆け足なので、紅緒とのラブが中途半端なのが残念。紅緒は編集長にひかれるも、少尉が帰ってきて、二人のイケメンの間で苦悩し……のあたりが本当はかなり盛り上がるはずなんですけど、あっという間だったので。その過程で、決め台詞の「全部忘れさせてやる!」があるわけですけど。これ、萌えセリフ、萌えシーンなんだろうけど、もうちょっとそこに至るまでの盛り上がりがないと私は感情がついていけない感じでした。いや、もちろん、ちなつちゃん声はエエし、名場面であることに間違いはないのですが、あまりに急展開で(←贅沢だぞ)。
 そうですね。贅沢ですよね。別箱二番手ももう3回目。下級生主演の別箱公演最強の2番手と言ってもいいのではないかと思ってしまったりもしますが(もちろん、それでいいと言っているわけではない)、この青江冬星役は、いままでにない超二枚目役だし、ヒロインと恋愛もするし、ということは主人公の恋敵でもあって、かなりいい役でした。少なくとも「MY HERO」のテリー・ベネットよりはちゃんと書き込まれていてよかったと思います。
 あとは……。私が見たのは公演の最初のほうなんで(初日ではないけれど)、すでに、だいぶ変わっているのではないかと思いますが、ある意味キャラ勝負みたいなところのある作品なんで、濃く、もっとかっこつけていってもいいんじゃないかな、と個人的には思いました。小柳先生の指導がどうなのかはわかりませんが。いずれにしても、これからどう変化していくのか、楽しみです。
 もうちょい濃くても大丈夫かな、と思うのは、ヒロインの華優希がかなり振り切れているから。
 ……というわけで、華優希。
 この公演のMVPを一人挙げるとしたら、やはり彼女でしょう。この作品は、前評判も高く始まってからもかなりの高評価で、将来的に宝塚の財産になるような演目じゃないかと思いますが、作品の良さはもちろんのこと「華優希のヒロインデビュー作」としてもファンの記憶に残るのでは?
 もう元気一杯の大熱演。しかも、ドジっ子をベタベタにやっても嫌味にならないところが絶妙。芝居が上手いことは「金色の砂漠」の若き日のアムダリヤや「邪馬台国の風」の少年タケヒコで知っていましたが、ここまでの演技派とは!(勢いだけでやっているように見えるかもしれないけど、彼女基本上手いですよね) ちょっと野々すみ花や咲妃みゆを彷彿させますが、もうちょっと地に足がついている系というか雑草系というか……。二人にあった、ちょっと別次元を生きている、ある種天然な雰囲気はないかな。
 というわけで、ぜひ高貴なお姫様とか年上の女性とかの役も見てみたいですね。彼女は、容姿から想像するのと違って、声が割と大人っぽいので、大人の女もけっこうハマるのでは。ちょうど、私が観劇した日に宙組の同期(100期生)が観に来ていて、そのなかには、次期娘役トップの星風まどかちゃんもいたのですが、彼女とはまた全然違うタイプ。華優希は、同期で2人目のトップ娘役になれるかな? 今回の紅緒でぐーんとそこに近づいたとは思います(ちょっと気が早い?)。

 残りはまた後日。

 しかし、ちなつちゃん、漫画をあまり読まないということは、「ポーの一族」も読んだことなくて、今、読んでいるとことか? 感想をぜひ聞いてみたいものですね。「はいからさん」と同じく読むのに時間がかかったかどうかも。

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