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December 05, 2016

金色の砂漠を彷徨って【その1】

花組 宝塚大劇場公演「雪華抄」「金色の砂漠」-01
 初日が開けてから気になって気になってツイッターやらブログやらでネタバレでもなんでも読みまくっていましたが、やっと私も「金色の砂漠」に行ってきました。
 
 ネタバレしております。
 
 上田久美子先生が今回はエンターテインメントに徹した、そしてこれは涙するための作品ではないとプログラムに書いていますが、確かに、これまでの作品(「月雲の皇子」「翼ある人びと−ブラームスとクララ・シューマン」「星逢一夜」)よりもより寓話的というかおとぎ話的というか、話があり得ないところが、少女漫画的というか、歌舞伎や文楽みたいでしたね。突拍子もない設定やセリフ、奇想天外なシーンが多くて、けっこう初回はニヤニヤしながら見ていたような……。昼メロ的でもあり。壮大なおとぎ話なので、「これはおかしいのではないか」とか「納得できない」という文句は野暮ってもんでしょう。もちろん、おとぎ話のなかではちゃんと世界が構築されてるんですけどね。とはいえ、印象的なセリフも多く、伏線もばっちりはりめぐらしているところはさすがです。
 前回の大劇場デビュー作「星逢一夜」と比べてよかったのは主な登場人物が多いこと。
 ギィ(明日海りお)とタルハーミネ(花乃まりあ)、ジャー(芹香斗亜)とビルマーヤ(桜咲彩花)、そしてジャハンギール(鳳月杏)とアムダリヤ(仙名彩世)が三者三様で、前二者は対照的(まさに奪う愛と与える愛)、ギィとタルハーミネとジャハンギールとアムダリアは激しい愛で同じ悲劇を繰り返すという関係。
 この三組以外にも、第三王女とその婚約者もいるし、王族にはそれぞれ専属の個性的な奴隷もいるし……。下級生には下級生でけっこう細かく役がついていたし。出演者の多い宝塚にはやはりこれ大事。
 しかも、当て書きがなかなか素晴らしかった。明日海りおギィのこじらせキャラは「春の雪」で実証済とはいえ久しぶりだし、花乃まりあタルハーミネ(第一王女)のわがままドSお嬢様ぶりは……はまりすぎていて、「トップ娘役がこれでいいの?」というぐらいだったし。一気に飛んで高翔組長の家庭教師ナルギス! なかなか組長には当たったことのないような、卑屈で心のねじ曲がった役。それが、彼女の線の細いところに妙にはまっていました。
 芹香斗亜の優しい奴隷ジャーも(語り部も兼ねる)。正直、見るまでは「またいい人か(彼女もちょっと黒い役とかやらないと)」などと思っていたんですけど、とてもよかったです。彼女確かにほんわかキャラで舞台でも「いい人」役が多いんですけど、本人が優しそうだからそう見えちゃったかな、という緩い役と、「穏やかで思いやりがあり、一歩引いて観客に近い位置にいる魅力的な役」を当てられてそれにふさわしい演技をするというのは違うんだな、と実感いたしました。このジャーの恋物語は、相手役の第二王女ビルマーヤ役の桜咲彩花、そして求婚者の天真みちるがまた好演で。このチームが好感度を醸し出せば出すほど、トップコンビの「奪う恋」が引き立つといいますか。まあこの3人は割に思ったことを正直に口にしているので比較的演じやすいところはあったかもしれませんが(ほかの人たちはほんと素直じゃないからね)。
 そして、柚香光のあの空気読まないナルシストのイケメン王子テオドロスという役も……すばらしい当て書き(いや別に本人が空気読まないとかナルシストだとか思ってませんよ)。私も女官になって、「テオドロス様美形ね」とささやきたい(笑)。テオドロスは、異なる世界から来た人間ということで、我々観客側に近い価値観を持っていてそういう意味ではなかなかお得な役でしたね。
 他にも、わがままいっぱいで元気な第三王女(音くり寿)とか、イケメンだけど、ヘタレなその求婚者(冴月瑠那)とか……。おそるべし、当て書き。もし自分が上田先生に当て書きされたら……と考えると、自分の知らなかった一面を見ることになりそうで、興味はあるけどちょっと怖い(大丈夫。上田先生はあなたには当て書きしませんから!) 
 さらにヒロイン・タルハーミネについては、父と娘の絆が描かれているところもよかった。このへんは途中の演出変更でより強く打ち出されるようになったようですが。タルハーミネはギィを愛する一人の女であると同時に「父の娘」でもあったんだな。それを思い出させる柚香光テオドロスのいいセリフがあるんだけど、ちょっとわかりにくくて……。あのセリフがもっとビシっと決まったら、ますます構図がはっきりしていいんだけどなぁ。惜しい。れい君、「がんばれがんばれ」(by プリー)
 上田先生の作品は、芝居のしっかりしている生徒とそうでない生徒の差が大きく出てしまう。観ている側としては、新作だからセリフがちゃんと聞き取れて、しかも感情がはっきり伝わらないと話がわからなってしまうので結構大変(再演なら、ファンはセリフも芝居の流れも知っているんでね……)。さらに、確かみりお君がどこかで言っていましたが、思っていることと言っていることが違うので、セリフの内容だけでなく、そのときの表情とかが大事。しかし、これは一回や二回の観劇で把握するのは難しい。それにテレビだったらクローズアップにすれば表情がわかるし、「このときのこの人の表情がポイント」とわかるからいいけど、舞台はそうはいかないもので……。観客がそこに注目するようなセリフもだいぶ仕込んであったとはいえ……。その点でいうと、タルハーミネ(花乃まりあ)がちょっと何考えているのかわかりにくい人に見えていたかもしれない。終始強情なお姫様キャラのようだったけど、本当はもっと弱そうだったり、恋にときめいたりするところがあったほうがよかったんじゃないかな……。
 ところで、アムダリヤの最期については、「愛していたのか」とギィのセリフに出てくるけれど、そうなったのは「愛」のためだけではなく、この悲しい運命の連鎖にもう耐えられない、その種をまいた自分の罪に耐えられなくなって(自分が王を愛してしまったことも含め)、というのもあると思うんだけど、あのセリフがあると、そのへんが「愛」に限定されてしまうかな、と思いましたがどうなんでしょう。
「金色の砂漠」は、自分が自分らしくいられるところ、ということなのかな、と理解しました(「ル・サンク」よく読むと、タルハーミネが「(金色の砂漠で)人は魂だけになれる」と言ってますね)。アムダリヤはまだそこへは行けないと思ったから歌を作り、タルハーミネは自尊心を捨てて愛に生きるために行ってしまったし。ギィも復讐心を捨てて愛に生きることにしたんだね。でもってアムダリヤ(の魂?)も最後にはそこへ行くし(ああ、「意味とかこねくり回さずに楽しんでください」という天の声が聞こえてきそう)
 最後砂漠で絶命する二人にもっと泣かせるセリフを言わせることができたと思うんだけど、そうしなかったのは安易に泣きに走らない、という今回の上田先生のねらいなんでしょうね……。
 いままでの上田作品っていわば文芸大作的なイメージがあったように思うけれど(特に「翼ある人々」とか)、今回の作品はそういう「好き」と言ったらかっこいい、みたいなスノッブ味(おいおいなんだその日本語)はないかもしれない。ちょっとアナクロな舞台設定が宝塚にぴったり、でも芝居自体はすごく緻密に作られている。そしてなんといっても生徒の芝居の力の限界に挑んでいる(つまり生徒の芝居力を引き出す)この作品、私は好きです。
 
 では次はいよいよ、ジャハンギール様のことを中心に……(の予定)。
 
 そうそう、このお話は、奴隷の設定とか、一見荒唐無稽なんですが、王女が自分の意思で行動しているところとか、統治にも参加するところとか、けっこうポイントポイントでは現代の価値観にあっている部分もあるんですよね。なんというか、おとぎ話とわかっていても、女性の扱いがウン十年前っぽかったりするのは嫌な感じがすると思うんですよ。そういうところもよかったかな。
 
 ああ、それから観劇からまる一日たって思い至ったのですが、「雪華抄」とこの「金色の砂漠」、和物ショーと、古代アラブ物(?)といういまや世界でも宝塚歌劇団でしかやらないであろうジャンルを見事に現代的に(←ここ重要)蘇らせているという意味で、すばらしい組み合わせなんですね。そしてロックガンガンのフレンチミュージカルなんかもいいけれど(これはこれで大好きですけどね)、宝塚はこういう、いまや宝塚でしかやらないようなものをこれからもぜひ上演していってほしいな、と思いました。
 
 オーケストラで日本舞踊するのが宝塚ぐらいなら、あんだけたくさんのアラブのギンギラ衣装とターバン持っているの、宝塚ぐらいじゃないでしょうか。ターバン被って燕尾服で踊るのもね。
 
 
 
 
 

November 16, 2016

鹿児島弁がきつかった「桜華に舞え」

星組 東京宝塚劇場公演「桜華に舞え」「ロマンス!!」-01
 北翔海莉の退団公演。実力派で昭和のスターさんのような貫禄のある彼女に合わせた(ってことですよね)和物お芝居とクラッシックなロマンチックレビューの組み合わせ。とはいってもお芝居「桜華……」のほうは、展開がスピーディで登場人物もてんこ盛りの、割に派手でゴージャスな時代劇でした。つまり、和物芝居とはいってもそんなに古くさくはなく、けっこう細かく役が付いていて、若者ウォッチも楽しかったです。いや、今回つくづく思ったけど、星組下級生はイケメンが無駄なぐらい多い。いや、イケメンに無駄はないけど。ちなみに芝居で最初に「!!」と思ったのは、(あとで調べてわかったんだけど)最近スカステで売り出し中の「あまじぃ」こと天路そら君。西郷隆盛(美城れん)の弟、西郷小兵衛をやっていて、けっこう目立ってましたね。セリフもあったし。メイクが大変キレイでした。
 ただね……。この「桜華……」、観た人みんな(いや全員に聞いたわけじゃないけど)が言っていたけど「鹿児島弁のセリフがよくわからない」。大変残念でした。演じているジェンヌたちはがんばっていると思うけど、あれはやりすぎでは。このお芝居の鹿児島弁に呆然として、「ああ、いままでテレビや映画で見た方言芝居は、方言テイストを入れつつも、ちゃんと全国の視聴者・観客にわかるようにばっちりアレンジしてあったんだな」ということに改めて気づきました。当たり前だったんでそのことに思い至っていなかったんですね。
 この芝居、基本はけっこうわかりやすくうまくできていると思うんです。なぜならセリフ(特に決め台詞)がけっこうわからないにもかかわらず、見ていれば大きな流れが理解できたし、ラストシーンではベタだな、と思いつつ涙腺刺激されちゃったし……。登場人物やたら多くて、さらに、そのなかでもそれほどメジャーじゃない(すみません。でも知らなかったもので)桐野利秋が主人公だというのに、「西郷どんは西南戦争で負けちゃう」ということぐらいしかわかっていない私でも十分ついていけましたから。これは、知っている歴史物語とオリジナル設定のつなぎ?が悪くて戸惑った「NOBUNAGA」との大きな違い。だからこそ、鹿児島弁のやりすぎが惜しかったな、と。もちろん鹿児島県の人が見たらまだまだぬるいかもしれないけど、方言を忠実に再現することが目的じゃないし……。むしろ、それがストーリー理解の妨げになっているのってもったいない。たとえ、作者兼演出家がもりあがっちゃっていても、外側の人(制作?)がそういうことアドバイスすればいいんじゃないかな、と思うんだけど……。
 あと、芝居で「おおおっ」と思ったのは軍人役の朝水りょう(いま見たらちゃんと役名もありました。壱城あずさ演じる山縣有朋の部下で田中文五郎)。精悍な男顔!で髭がお似合い。そしてあの廓のようなシーンでの開襟! すばらしい(笑)。あの開襟でファンをだいぶ増やしたことでしょう。あ、あと同期(96期)の拓斗れい君(桐野利秋の弟・中村貞役)もシュッとしたイケメンで……いやほんとイケメンが豊富です。星組。
 さらにさらに、芝居といえば、「この少年誰? 上手い」と思ったのがスリの太郎。新公ヒロインの小桜ほのかちゃんだったんですね、失礼しました。声がとても力強くて、少年役者としてはとてもよかったです。基本うまいと思うので、娘役で大きな役も見てみたいです……。ちょっと舞羽美海ちゃん系というか、元花組の愛純もえりちゃん系のお顔ですね。
 
 ショー「ロマンス」は……。ある意味クラッシックなスター、北翔海莉に合わせたんだろうけど、このへんの感じ方は年齢によるのかもしれなくて、私自身は全然若くない観客なんですが(ここまで言い訳長いです)、正直、ちょっと古くさく感じましたね……。特にプロローグ……。まあ後半はそうでもなかったですけど。「ロックン・ロール・エイジ」はそれぞれの衣装や鬘がいろいろで楽しかったし、電飾の扉というか枠みたいなのを使う「友情」(う、タイトルがダサいが)も好きでした。そんなに新興宗教っぽくなかったし(えーっと、退団公演にありがちなんですが、露出の多くない〔ときにユニセックスな〕〔しばしば白い〕衣装で、男役も娘役も同じ振りでトップさんを中心に踊るシーンってよくありますよね。あれ、新興宗教っぽくて、私好きじゃないんです)。
 で、まだまだ終わらない、星組下級生美形発見話ですが、2回目の観劇のショーの「ロック・ロール・エイジ」と黒燕尾で「ぶつくしい(あ、組違いですが)……これは誰?」と思ったのは、たぶん……湊瑠飛君。プログラムの写真だとくりくりお目目だけど、舞台ではもっとスッとしたお顔になっていました。メイクとか表情のつくり方がうまくなってきたのでは? ちょっと月城かなと君を彷彿。
 あ、あと今回は芝居、ショーを通じて、新公主演の天華えま君が目立ってましたね。スタイルよくて、女装がキュート(ローラースケートギャル、ね。うーん恥ずかしい役名)。芝居では会津の殿様松平容保をやっていて(ワンシーンだけだけど。そのほかバイトあり)、そのノーブルなところが似合ってました。同期の綾凰華君は、芝居の冒頭の三上卓(麻央侑希演じる犬養毅を襲撃)ではちょっと顔が見えづらかったのが残念。彼女はほかにも、紅ゆずる演じる衣波隼太郎の部下・須田良治をやっていて、けっこう人数の少ないシーンに出ていたりはするんだけど、これもやや印象が薄く、名前のある役は一つだけ、の天華君のほうが印象は強かったかな。星組が誇る98期の美形「華華」コンビ、ショーではあまり対では使われていないのか……と思ったら、最後のパレードでダブルトリオをやってましたね。
 あー、お芝居とショーの話がゴチャゴチャになってしまいましたが、私にとって、新しい発見の多い公演でした。って主な出演者の話ほとんど書いてないけど…(笑)。
 

いまさらNOBUNAGA

月組 東京宝塚劇場公演「NOBUNAGA<信長> -下天の夢-」「Forever LOVE!!」
 古い話ですみません。いまさらですが、一応書いておこうかな、と。実は一度書こうとしたときがあったのですが、ちょうど公演の千秋楽のころで、ファンがみんな千秋楽モードになっているときに辛口の感想とか書いてもな……と思ってやめたのでした。それ以降なんとなくタイミングを逸しており……。
 そりゃ退団作って特別だから、劇としてどーのこーの言うのは野暮なのかもしれない。でも、やっぱり退団であろうとお披露目であろうと気になることは気になるんですよね……。さらに最初に書いておくと、私は龍真咲くんのこと結構前から好きでした。だって初バウホール遠征は月組の「Young Bloods!!」(2006年。龍真咲主演)ですから。基本大劇場はどの組も見ているけど、「1789」は好きで何度も行ったし、そうそう「DRAGON NIGHT!!」も行きました。
 ついでに言うと、「NOBUNAGA」作・演出の大野先生の作品も結構好きです。過剰すぎてごちゃごちゃすることもあるけど、作品への思い入れは深いし、だいたい主人公が誠実で共感できる人物だよね。これは前にも書いたけど、プログラムの細かすぎる登場人物解説が特に好き(笑)。「NOBUNAGA」では、白雪さちかが演じた修道女マリアンナの解説がスゴイ。「古今東西の青少年諸君を妙に尼僧好きにしたであろう名著『ぽるとがる文』の筆者より、その役名をとった」……そうなんだ。青少年諸君は尼僧好き……なんだ。catface
……それはさておき、そんな私なのですが(あ、尼僧好きではないです)、この「NOBUNAGA」は、見終わって何かすっきりしなかった。一応2回見たんですが、どうも話が分からない。それは私の理解力不足なの? もうちょっと詳しく言うと理屈で「わからない」というよりも、流れについていけない。別に奇想天外とか、不条理とか予定調和をぶち壊すという意味で分かりにくいのではないと思う。非常に有名な信長という歴史上の人物を主人公にして、フィクションをつくっているのだけれど、どうも信長まわりの「誰もが知っている歴史」と「あまり知らない歴史」と「フィクション」がうまくつながっていなかったのがよくなかったのではないかしらん。例えば、ロルテスまわりのフィクションはまあよかったと思いました。最後のシーンも、ロルテスが信長を逃がして……というところはよかったと思う。だいたい義経=ジンギスカン説のように、歴史上の人物が実は死んでいなくてどこか別の土地に逃げて活躍して……という伝承はよくあるし。
 ロルテスぐらいぶっ飛んでいれば、「これは大野先生が作った話、フィクションね」とわかっていいのだけれど、信長と家臣団のところ、一回裏切ろうとして裏切らない、だけど本能寺に突入……の流れが何かよくわからなかった。浅井長政とお市の方とか、秀吉とねね、とか、明智光秀の本能寺の変とか、このへんの話はかなり有名だから、私たちは何が起きるか知っている、だから「最後は本能寺だよね。凪七瑠海が反旗を翻すんだよね」と思ってみているんだけど、何か中途半端に知らない話(家臣団がみんな裏切ろうとする)が出てくると、「あれ、あれ、こんな話あったっけ??あれれ……これ、オリジナルエピソード?」と思っているうちに、裏切りはあっけなくしぼみ、もう一度信長が力を得て、あ、そうなんだ……と思っていたら、いつの間にか本能寺に突入していた、という印象でした。この脚本では光秀はなんで本能寺の変を起こしたんでしょう?……妹の妻木を殺されたから? なんかピンとこなかったです。ついでにうと、私の場合、斉藤道三の娘である帰蝶との関係――仲がいいんだかよくないんだか――も、一応説明されたみたいだけど、あまりピンときませんでした。
 まあ、信長という、ちょっと変わりもので派手でカリスマ性があるリーダーを龍真咲が演じるという試みはうまくいっていたと思うんですけどね……。
 この作品で、もう一つ難点を言わせていただくと、龍真咲のセリフの抑揚がさらにひどくなっていて、いたことです。今回は時代劇でわざとらしいセリフ回しが多いせいか余計目立ったかな(「1789」は歌が多くてよかった……)。彼女の抑揚が変、というのは誰もが気づいていたことで、いまさら書くのもなんですが(しかも彼女はもう卒業してしまったし)、問題は、彼女にそのことを指摘して、改善させることができなかった(指摘はしたけどダメだったのかもしれないけど)歌劇団にある、と私は思います。演出家はそういうことが言えないのでしょうか。別に能力的に無理なことを言っているのではなくて、昔はあそこまで変じゃなかったんだから、できるはず。パフォーマンスを見せるカンパニーとしてさすがにこれは問題だと思うんですけど……。
 今後、宝塚を卒業した彼女が外部の舞台に立つときに、そこでは矯正されるのかな、と思いますが。というか、もしかすると「男役」のときに癖がついただけで、女役の場合はそんなに出ないのかもしれないけど。
 最後だけど、やっぱりそこは気になりました。残念でした。

October 10, 2016

エリザはロケットの衣装が……

宙組 東京宝塚劇場公演「エリザベート」
 いわずと知れた宝塚の名作。今回から演出に小柳さんの名前が入ったけど、それがどう影響しているのか……。
 ひとことでいうと、すごく納得したエリザベートでした。なんかキャストがみんなハマっていた、というか。えーっと、私はあまり今回の主要キャストに強い思い入れがないので、そのへんは割と冷静に見ちゃったところはあります。特にエリザベート。彼女は、割と自己中心的で、けっこう共感しにくい女性なんだな、ということが今回よくわかりました。演じている実咲凜音は、実力派ジェンヌ。歌に何の心配もないエリザっていいな…(しみじみ)。ただ、彼女は優等生タイプなんだけど、なんというか、親しみがわくタイプではない、といいますか……なのでけっこう冷たい感じに見えちゃうことが多いんですよね。でもって幸薄い役が似合う。それらの(他の作品ではマイナスになるような)特徴がまさにエリザベートにぴったり。あ、あと庶民キャラじゃないのも、この作品には合っていましたね。特に成人してからが。
 でもって、朝夏まなとは人間じゃない存在が似合うし、真風涼帆の、鷹揚な若き王様もドンピシャ。フランツって最近は歌ウマ別格系の役というイメージがあったけど、バリバリ路線の美男子がやっていいんだよね。だってエリザがポーッとなっちゃうんだもん。素敵なんだけど、エリザを愛しているんだけど、白馬の王子様なんだけど、残念、でいいんだね、とこれもストン、ときました。
 やっぱり宝塚流にいろいろ改変はしているけれど、基本的にはエリザベート中心で、エリザベートをめぐる二人の男の物語なのだという印象。そしてみんな幸せになれない、というすれ違い物語だし、トートとシシィの関係がちょっと特殊だからそんなにラブラブしていなかったけど、まあそれでいいんじゃない、と。
 そんなことを考えて見ていました。
 主要な役では真風涼帆は、歌がうまくなりましたね。フランツの歌ってけっこう難しいと思っていたのですが、割とふつうにこなしていて(実は難しくないのか、真風がすごいのか)。そして、上にも書きましたが、ちょっと優柔不断っぽくはありましたが、基本的には若くてかっこよくて優しい王様で、「ああ、この役はこういう白馬の王子様がタイプがやればこうなるんだ」と目からウロコでした。いや、初演の雪組が高嶺ふぶき、1998〜1999年の宙組では和央ようかがやっていたわけだから、本来はそうだったということなんだろうけど、私は舞台でエリザを見たのが2002年(東京は2003年)の花組からだったので、何か「別格でもいいからとにかく歌が上手い人がやる役」みたいに思ってしまっていたんですね。しかし、フランツはやっぱりいい男じゃなきゃ。それで、こんなに素敵そうな人だけどやっぱりダメ、というところがいいんだな、きっと。そういう意味でも、今回の真風フランツ、よかったです。
 ルキーニの愛月ひかるは……。アドリブが大変落ち着いていて、なかなかだな、と思いましたが、滑舌があまりよくないのと、ちょっと狂気が出ていなかったかな……。この役、宝塚では本当に難しいと思いますが、やや物足りない感じ。
 ルドルフは、澄輝さやと桜木みなとを見ました。澄輝さやとが……よかったですね。彼女の持ち味に合っていたところもあるのかな、すごく真面目にオーストリーのことを考えている皇太子でした。国のことを、共和制とか革命とかを真面目に考えていて、それゆえに失敗し追い詰められて死を選んだ、というところがはっきり伝わってきて、これはこれですごく納得のいくルドルフでした。母親を追い求めているとか、不幸な子供時代を過ごした、ということはあったけれど、病んでいるとかそういう感じはなく、すごくまっとうに成長してました。いやあの環境でこんなにいい青年に……という感じ。ただ、ちょっと真面目すぎたんでしょうが……。病んでいないぶん、悲劇的でした。私はこの役替わりのメンバーのなかではもともと澄輝さやとが好きで、しかし劇団が推しているのは最下の桜木みなとという状況のなかでの判官びいき的な心情がかなりあります。ありますが、それを差し引いてもよかったと思うんです。このルドルフ。こういう役がもっと早く回ってくれば、彼女のジェンヌ人生も違っていたのでしょうか? いや今だからこそのルドルフだったのかな……。
 桜木みなとのルドルフは……何が悪いということはないのですが、割とふつうの印象。予想の範囲内、と言いますか。澄輝さやとと比べるとより若い感じだったかな。少年っぽい感じは出ていたと思います。
 そのほか、いいな、と思ったのが、ヴィンディッシュ嬢の星吹彩翔。扇を交換したときに見せる無垢な笑顔がかわいくて……。エキセントリックなヴィンディッシュ嬢は、割と演技派の娘役がやることが多い役なんだけど、けっこう狂気が強調されることが多くて何か怖いシーンになっていることが多かったように思いうんですよね。でも、ヴィンディッシュ嬢のピュアなところ、子供のような心が丸顔童顔の星吹彩翔の笑顔に表現されていて、とてもいいシーンになっていたと思いました。心が洗われるというか。よかったよー。もんち。
 この公演で新たにチェックした下級生は、美形黒天使の潤奈すばる君(マダム・ヴォルフのコレクションで「鳥」やってたね)、あと侍従の一人、琥南まこと君。侍従は覚えてもらいやすい美味しい役だよね。下級生にとって(2005年の月組で侍従をやっていた明日海りお君を追いかけていた自分……)。
 あ、あと最近宙で気になる下級生といえば、穂稀せり君。第一印象は、スカステ(相続人の肖像の稽古場だか初日だかの映像……)で見たそのジェンヌらしくない頭身バランスにびっくりしたのですが(失礼)、彼女、相当の芸達者なんですよね。生ではほとんど見ていないのですが、スカステなどで見ていると、別箱(バウホール)や新公ではすでに専科さんまっしぐらでは? という安定ぶり。で、今回のエリザでは、短いけれどちょこちょこ歌い継ぎのところでソロがあったりしてけっこう活躍していました。親戚の男(正確に言うと「叔父」だそうで)とカフェの男で。あれ、プログラムによれば結婚式でも「若い侯爵」という役名があるからソロがあったのかな(残念、そこまで判別できず)。路線とは全く違った意味で、ですが、何か気になる存在です。もうちょっと学年上だったら重臣ズとかだったのかな。いや一気に新公でやったエリザパパとか? 個人的には3年後だったらツェップスなんかでもよかったかな、と思ったけど、ツェップスは路線系の役なのか……。まあ、いずれにしても、これからどんどん役付きが良くなっていくでしょうから、楽しみです。
 まあ、やっぱりエリザって役が多くて(娘役に大きい役が少ないという弱点はあるものの)、下級生にも少しずつソロがあったりして、そういう意味でもいい作品なんですね。
 あ、そうそう、思い入れそれほどないと言いつつ、気になっていた人いました。マダム・ヴォルフの伶美うらら。高い声が出ないという致命的欠陥があるんですが、マダム・ヴォルフのコレクション♪の歌はほとんど低くてOK、最後の「いただいてかえる、わ」の声は、愛月ひかるに助けられていたけど、それなりに出ていたような。歌に関しては、知らない人がプログラムで名前確認しちゃうほどの際立ったまずさはなかったと思います(王家のときは、観劇後にスマホで検索して「やっぱりみんな歌が問題と言っている」と納得している人を見ました)。たいそう美しいマダム・ヴォルフではありましたが、合っているかというとちょっとあれでも上品だったかな。しかし彼女がここで思いっきり下品にマダム・ヴォルフらしくやるのがいいのかどうか、というと、まあ彼女のジェンヌ人生を考えるとそうでもないような……。いや、彼女のジェンヌ人生にここからさらに打って出るチャンスがあるのかどうかよくわかりませんが……。個人的には大人のラブストーリーができる彼女にはぜひトップになってほしいんですけどね。トップになれば歌も宛書でキーを合わせれれば問題ない、と(劇団さん、頼みますよ!)。それにしても、マダム・ヴォルフのプログラムのスチール、美しすぎます……。
 話を戻すと、娘役で言えば、あとは純矢ちとせゾフィー。彼女ならある意味当然というか達者にやっていましたが、個人的にはなんか物足りなかったですね。もっと迫力あるゾフィーを期待していたのですが……あんまり怖くなかったです。そういう演出なのかな。私自身は、以前から「実咲凜音がトップのうちに宙でエリザやらないかな。そのときは、ゾフィーはぜひ純矢ちとせで」と言っていたほどだったんで、ちょっと思い入れが強すぎたのかもしれません。
 まったくダラダラと語ってきましたが、最後にフィナーレについて。
 タイトルにしちゃったから今更言わなくてもいいかもしれませんが……。
 いつも思うんですけど、あのロケットの衣装、なんとかなりませんかね。次回は変えてほしいな……。下品、というか。安っぽい。まあ敬礼の振りとかあるんで「兵隊さん」ベースは変えられないのかもしれないけれど……。毎度興ざめです。
 あー、今回のデュエットダンスの衣装は宝塚にしては珍しいカーテンみたいな柄だったけど、クラシカルでよかったですね。(と、いいところは褒める)
 
 
 

September 19, 2016

Melodiaな若者たち

花組 全国ツアー公演「仮面のロマネスク」「Melodia」-4

まったくタイトルとは関係ないんですが、最近このブログに来てくださった方の検索キーワードを調べると上位(っていうか1位)に「太い 花陽みら」と出てくるんですよね……。彼女の退団発表があったからですね。確かに「1789」で花陽みらが役替わりでソレーヌを演ったときのエントリ「花陽みらのソレーヌを観て」には、「太い」という単語もありますが、それが主眼じゃないんで! 好きだったんですよ。みくちゃん。まさかバウで退団とは。寂しいです。

さて、全国ツアーもあと3日。私が最後にみたのは「さいたま」だから、もうだいぶ前ですが、備忘録として生徒別感想。ショーが中心ですが芝居の話もあり。ごっちゃごちゃです。

<今回注目した下級生たち>
一之瀬航季……去年の「スターダム」に出ていたから名前と顔は知っていました。マイティの秘書?の役で下級生なのに(研2)芝居がうまくて驚いたものです。今回は芝居では貴族の一人(テチエンヌ公爵)だったけど、セリフは少しだからちょっともの足りなかったかな。ちなみに、プログラム(および公式HP)の写真はお化粧がひどくてほとんど別人。今はすっきり美形さんです。早くプログラムの写真変わるといいね……。で、今回ちょっと驚いたのは、ショー。ダンスが……なんというかなめらかで独特の動きで目立つんです。動きがほかの人たちと違う。すごく身体能力が高い!という上手さではなく(身体能力が低いと言っているのではなく)、ニュアンスがすてき!なんです。ダンスに表情があるというのか。特にダウンタウンジャズの場面、ちなつちゃん見つつもかなり気になりました。それで、スペインの場面なども注意して見てましたが、表情もキレイです。ちょっと色気があって。惜しむらくは身長があまり高くないこと……と思っていたのですが、公式見ると、173cmとある。ええええー。本当かな。全身のバランスのせいで低く見えるだけかしら。とにかく、これから下級生の場面でも楽しみが増えました。路線まっしぐらと思われる聖乃あすかと同期、というのがちょっと不幸かもしれませんが……。
帆純まひろ……男役らしい顔だちだし、華もあり、スタイルもよくて路線スターっぽいスターさん。スペインでも若手6人口とかに入っていたかな。あとは、ロケットで側転を披露していますよね。確か大劇場のときもアクロバティックな振りをやる生徒がいたけど、大劇のときから彼女がやっていたのかな……(ですよね。きっと)。今研4。一期下には聖乃あすかがいて、セットで若手路線として抜擢中という感じですが、私は彼女のほうが正統派男役スターっぽいとは思います。ふつうにいったらそのうち新公主役が来るでしょう。これからが楽しみ。
聖乃あすか……前からすでに注目されていたようですが、私が舞台でちゃんと認識できるようになったのは「ミーマイ」から。でも本公演では本当にモブ(貴族の男とか)。新公のジャッキー&ジェラルドは見ていないので、今回の「仮面のロマネスク」で初めてお芝居している彼女をちゃんと観ました。で、Melodiaではなんと鳳月杏が本公演でやっていたスペインの女に抜擢。その第一印象は「あれ、足の長さが……?」だったのですが、これはもちろん、本公演の鳳月杏ほど長くない、というだけなので、彼女の足が特に短いということはありません(笑)。適度に力強く(男役による女役らしく)きれいに出ることができていたと思います(ただし、あの衣装安っぽくてあまりいいとは思わないんですけどね……。本公演のときからの不満)。で、かつらは二種類あったそうなんですが、私はストレートしか見れず残念。素顔美人だけど、メイクも上手いですよね(素顔美人あるあるで、メイクダウンってのがよくあるんで)。ただ、スカステのトークコーナーを見ていて気づいたのですが、彼女、肩幅が狭い、というかなで肩なのかな、どうも肩、首、顔のバランスがあまりよくないんですよね(顔が大きく、首が太く見える)。あと、リーゼントにしたときの頭の形もあんまりよくないような気が(これは何がいけないのか?)。なので、基本美形さんですが、場面によって美しさにちょっとムラがあるのが残念。で、私の一押しは「黄金の旋律」です。肩の張ったお衣裳で、かつ海賊風バンダナ(?)とロングヘアの鬘のバランスがよかったようで、とてもスタイルよく見えました。というか、キレイすぎて、最初「あれ、じゅりあ姉さんのほかにも女海賊(じゃなくてコンキスタドール女ですけど……)いたっけ?」と一瞬思ってしまったほど。彼女はちょっとお顔が優しい感じなので余計ね……。彼女はこの場面、本公演でも入っていましたが、全ツは人数が減ったせいもあって、かなりじっくり見ることができました。今から見る方、おすすめです!!
(ここで一休み)
花組は95期のすぐ下の路線男役がちょっと弱い感じ。「ミーマイ」で優波慧(96期・研7)と綺城ひか理(97期・研6)が主演を分け合ったし、矢吹世奈(97期)、飛龍つかさ(98期)もいるけれど、「正統派路線」という感じとはちょっと違うような……。そこでいうと、この帆純まひろ(99期)、聖乃あすか(100期)は、まっすぐな華があって、正統派路線男役きたー!というわかりやすさがあります。個性派もいいけれど(どっちかというと典型的なタカラジェンヌをやや逸脱した個性派に注目して愛でるのが好き)、やはり王道スター的な人もいないとね。あ、99期には今回もバウで活躍しているという亜蓮冬馬くんもいて目が離せないんですけど……。

<前から知っていたけど、いよいよ正念場な人たち>
優波慧……芝居ではアゾランという路線若手男役のやる役。確か初演は安蘭けい、再演は凪七瑠海でしたよね。この役、けっこう難しいと思いました。演技力は要求されると思いますが、宝塚の正統派男役が演じるにはちょっと軽くてヒネた感じなんですよね。台本通りまじめにやるとあまりかっこよく見えないというか。こういうとき路線男役としてはどういう演じ方をすべきなのか、難しいところではないでしょうか。安蘭けいはもともと真っ白い王子様キャラじゃなかったからまあよかったような記憶がありますが。で、優波慧の場合はやや地味になっちゃったかな。彼女の達者さは伝わりましたが。まあ、ただのさわやか好青年では役の意味が違ってきますからね。演出家の指示もあるだろうけど、もう少しちゃらいプレーボーイ風に作るとか?(勝手なこと言ってますが)
ショーではロケットボーイじゃなくて、ロケット導入?役。フィナーレの幕開きで目立ちます。ここはもう少し華が出たらよかったかな(本公演が水美舞斗だしね)。彼女は輪郭がまるで男役になるために生まれてきたようなところがあって(「Ernest in Love」のハンドバッグのメイドでも、ちゃんと女装感が出ていた)恵まれているとは思うんですけど。もしかすると、ちょっと影のある安蘭けい路線が狙いどころ?
矢吹世奈……Melodiaロケットで大活躍。ロケットってかわいらしいことが多いけれど、彼女のダンスのせいもあり、全体的により本公演よりアクロバティックになっていたというか、男役色の強い大人なロケットになっていました。羽根を背負った衣装もシックでかっこいいし、このロケット好きです。でもって、彼女にはスペインのところでもちょっとソロ歌がありました。かつて抜擢子ルドルフの歌を聴いて、「なぜ彼女が?」と思ったのですが、今回は歌もふつうに歌えていて、さすが成績上位、なんでもできるんだな、と認識を改めました。っていうか子ルドルフの歌が難しすぎるのか?(今回、宙組のまどかちゃんで、初めてまともな子ルドの歌を聞いたような気がする)
最後に……芝居で、メルトゥイユ夫人のツバメ、ベルロッシュをやっていましたが、これはちょっとキャラ違いでしたね。ここは番手を無視しして華だけはある下級生とかにやてってもらったらメルトゥイユの火遊び感が出てよかったのでは(しかし、誰?)。
(そういう意味で、再演の鳳翔大はぴったりでしたね……)

ショー全体の話をちょっとすると、私、変な芝居仕立ての少人数の場面とかがなくて、とにかく舞台に人があふれて歌い踊る中村一徳先生のショーはもともと好きなんです。たぶん選曲の適度な古さ(昭和感)もちょうど合うのだと思う(笑)。特に今回は、普段ショーでテンションが下がることの多いシーンに好きな場面が多かったような。ロケットとか、娘役の「all of me」、それからやたら恐ろし気なアレンジ?の「マイ・ファニー・バレンタイン」(ソロの高峰潤と音くり寿もイイ)で、ツンデレな振り付けのデュエット・ダンスも好きですね。「My favorite things」の黒燕尾がかなり好きなのはもちろんなんですけど。
 
ところで、身長の疑問パート2。芝居で、鳳月杏のジェルクール伯爵には部下が2人いて、それを高峰潤(99期)と芹尚英(101期)がやっているんですが(ソロ歌もちょこっとあり)、3人ならんでいるところを見たら、なんか鳳月杏より2人の方が大きく見えたんですよ。ところが公式身長を見ると、鳳月172㎝、高峰172㎝、芹尚170㎝……。あれれ。さきほどの一之瀬航季173㎝に続き、まったく解せない。
 
<軽んじているわけではないのです。娘役のみなさん>
最後に、娘役をまとめて書くと、春妃うららは、ミーマイ新公をスカステでちらっと見てけっこううまいじゃん、と思ったけれど、「仮面のロマネスク」ではやっぱりやや棒読みテイストだった……(源氏物語のときからあまり進歩がない?)。かわいいんだけどね。メイド仲間の雛リリカのほうがうまかったような。あと、芝居の途中で「貴族の娘」として「ミモザの香の……」とソロ歌った夏葉ことり。非常にオーソドックスな宝塚らしい美声でした。ああいう人もいないといけないよね(しかし、このままだとタキさんコースなのかな……)。メイクとスタイルをがんばってほしいです。あ、あと下級生(研2)だからまだまだこれからだと思うけど、表情ももう少し工夫してほしいかな(ニッコーと笑うだけでなく)。
ああ、芝居でセシルという大役の音くり寿ちゃんについて書いてなかった。いまさら私があれこれ言うこともないのですが(いや、誰に対してもあれこれ言う必要は全くないのだけど)、贅沢を言えば、もう少し表情のつくり方とかに工夫をしてほしいような。あと、割と強弱がない、というか。もう少し抜くところは抜いてほしい……。実力があるので、メイクがさらにうまくなって情感が出てきたら怖いものなしか。

以上です。うー。この公演、やたら書いてしまった。

September 16, 2016

鳳月杏はどこまで行くのだろう?

花組 全国ツアー公演「仮面のロマネスク」「Melodia」-3
 
まずは懺悔から
実は、全国ツアーって実はそんなにいいイメージなかったんです。そもそもそんなに行ったことなくて……。チケット取りづらいというのが一番の理由ですが、わりと直近にやった本公演の再演が多いので、見られなくてもそれほど悔しくないというか……。本公演でやった演目を本公演より少ない人数、(ときに)簡素化した舞台装置、少ない階段、銀橋のないステージでやるわけだからちょっと寂しいな、と思ったことも。
それが……今回の「仮面のロマネスク」「Melodia」でわたくしは全国ツアーの醍醐味がやっとわかったような気がします(遅いよ!)。
えーっと、そもそも、今回のお芝居「仮面のロマネスク」が、最近同じ組でやった演目というわけではなかったし、今の花組トップコンビの新たな一面を見ることもできたので、それだけでもお得感はありました。「Ernest」「ミーマイ」などの「ハッピーミュージカル」に正直飽きていたこともあったし(笑)。
だけど、私が言いたいのはそこじゃなくて(はやく言いなよ)……。「ショーです! 何と申しましても、ショー・Melodiaです!」(「ローマの休日」のアン王女の「ローマです。何と申しましても、ローマです!」のつもり。組違いですが)
ここから本題。
Melodiaは、前の前の大劇場公演(芝居は「新源氏物語」)のショー(一部変更あり)。
全国ツアーはふつうトップコンビが出るから、この2人の役付きには変化がない。で、それ以外のジェンヌさんたちは人数が減った分役付きが少しずつ上がる。でも、そこには濃淡があって、すごく上がる人とちょっとだけ上がる人とあまり変わらない人がいる。
たとえて言うなら、番手のついている人は一人ずつ、そのほかの組子は何人かずつグループで段差のあるステージに乗っていて、全体の人数が減った分、上の段に上がれる人もいるけど、前と同じ高さの段にいる人もいる。ただ、同じ段でも乗っている人数は前より減るから、明らかに責任は増すし、目立ちやすくなる、といいますか……。役付きってスロープじゃないんですよね。段々になっている。

でもって、今回の全ツMelodiaの場合、若手男役で一つ上の段に上がれたのは、優波慧くんと、矢吹世奈くん、それから帆純まひろくんと聖乃あすかくんかな。この4人は「仮面のロマネスク」のほうでもちゃんと役がついていましたけど。で、もっと上のほうでかなり大きな段差を上がったのが、鳳月杏、ちなつちゃんだったというわけです。(ここまで長っ)

彼女は大劇場公演のときは「男役4~6番目ぐらい?」(男役3番手に次ぐ路線男役たち)のステージにいたのですが(あと2人は瀬戸かずやと鳳真由。……うーん、プログラム的には水美舞斗もこのグループかもしれないけど、まあちょっとほかの3人とは差があったと思うので今回ははずさせてください)、今回鳳月杏が上がったのが、柚香光が乗っていた男役3番手ステージだったので、大劇場のときとの差はすごく大きかった。だから全ツでは彼女の見え方が全然違いました。たぶん向うからの景色も違ったでしょうね。
このたとえ話なんなん?
えーと、平たく言うと、大劇場の柚香光のパートは、特に誰かと分け合うということはなく、ほぼそのまま鳳月杏にスライドしていた(……という理解でいいですよね)ということです。大劇場のMelodiaのディスクを持っているわけではないので、おぼろげな記憶に基づいていますが。
ちなみに、本公演4番目だった瀬戸かずやが演っていた「黄金郷」の「王」の役を今回やったのはなんと高翔組長でしたね。これはちょっと驚き。

てなわけで、鳳月杏史上(笑)、出番出血大サービス状態だったんですよ(涙)。プロローグでも、キキちゃん(芹香斗亜)がスポット浴びて上手に登場して歌った後、下手でスポット浴びて登場するし(あの「こっちにスターもう一人来まっせー」と誰でもわかる演出がうれしい)、しびれたのは、スペインの冒頭、ひとり板付いて後姿でポーズを決めて登場するところ。とにかく歌が多いし……。いやー、3番手ってなんて見やすいんでしょう。位置はいいし長く歌っているし。おまけに遮るものもない(まあ、最近は最前列にいることが多いから、さすがに前に誰かがいることはなかったか)。さらに、全ツで加わった場面の一つがなんと、トップから3番手まで3人の客席降り! えー!! たった3人の客席降りにちなつちゃんが入っているなんて……。実を言えば、2階席、3階席からはほとんど見えなかったけど、許す。それからいきなり飛びますが、黒燕尾のあとも変更があって、なんと男役一人残って娘役従えて(でしたよね)、歌い出す。あれを最初に見た時は「ええええ! まだゼロ番場面あるんですか。聞いてない!」という感じでした。いや、初日じゃなかったんで聞いていたかもしれなけど、心の準備ができてなくて。

あー、ここでふつうの感想をちょっと。この新しくなった場面の歌「Lover, Come back to me」(通称ラバカン?)、曲自体はけっこう好きなんですけど、宝塚の選曲としてどうかな(アレンジ?がけっこうジャズ風だし)。あとでキキちゃんが歌うサビのところはまだいいのですが、冒頭でちなつちゃんが歌うところはテンポが速すぎて特に向いていない気が。私、宝塚の場合、歌は、ジャズっぽいものより歌い上げ系つまりバラードで割と朗々と歌うほうが合うと思うんですよね。
それにしても、ちなつちゃんが「ショーの三番手」をやっているのを見ることができて、幸せでした。素直に。これぐらいの番手が実は一番おいしいのかもしれないな、とか思ったりして。
 
そんなショーのなかで、私が一番堪能したのは……実は黒燕尾なんです。
今回いろんな鳳月杏を堪能することができたゆえに、私はやっぱり彼女の黒燕尾が一番好きだということがよくわかりました。なんというのでしょう。抑制の美学といいますか……。無駄なくメリハリの効いた手足の動き、あの冷たい表情……そしてポイントポイントで見せる挑むようなニヤリ! オペラグラスでがっつり見ることができて、もう思い残すことはござらん……いやいや、まだまだ(笑)。特にあの曲(「My Favorite Things」)と振り付け(平澤智)はしゃれていて好き。おまけに今回歌詞が英語になって(みりお君ご苦労さまデス)、楽曲差し替えを免れるだろうと言われているんですよね。ありがたや。もちろん、「3番手」扱いのちなつちゃん、立ち位置は大変いいし、燕尾はキラキラスパンコールの飾り付き、というまたこれも出血大サービス状態。
(ちなみに黒燕尾のメイン3人入りはこの間の大劇場「ミーマイ」でなぜか経験しているんですよね。あれも、今思うとちょっと不思議ではありました。直前に瀬戸かずや(4番目?)が芯の場面があり、直後にデュエットダンスがあるからといって、2番手芹香斗亜が芯で、両脇が3番手柚香光と5番目ぐらい?の鳳月杏というのはかなり珍しいのでは? まあ両脇の2人がジャッキー役者だったという共通項はあるけど)

黒燕尾以外の場面でも、彼女はあまり笑わない。あからさまな「ドヤ顔」もしない。でも表情がとても美しいんですよね。今回、ショーで踊っているときの表情って大事なんだな、ということがよくわかりました。つまり、下級生をちらちら見ていると、表情が単調だったり、あるいはどのシーンでもただニコっと笑っている男役がけっこういるんですね。たぶん、本人たちにとってはきちんと踊ることが大切なんだろうけど、正直、私にはダンスの差はそれほどあるとは思えない(素人なもんで)。でも、表情の差ってけっこうわかりやすいと思うんですよね。どうしてもダンスに注力しがちなんだろうけど、表情にもっと気を遣ったら、男役はファンが増えると思うな(笑)。けっこうもったいないと思いました。ちなみにピックアップされていない下級生のなかでは、私は一之瀬航季君の表情がとてもいいと思います。というかあの色気はなかなか。
あ、脱線してしまいました。ちなつちゃんに話戻ります。

最後にフィナーレ羽根問題。
えーっと、私が観劇する前に初日のツイッターなどをあさっていたので、3番手羽根(と呼んでいいんですかね。小さい羽根)しかも雉羽根付きということは一応頭に入っていました。しかし、私もともとあまり羽根の大小を気にしたことがなかったので(まだまだ青いヅカファン)、初めて観劇したときには、階段降りの順番は意識したものの、「ああ、そういえば羽根ね。確かに雉羽根もあるわ」ぐらいにしか思っていませんでした。そもそも、ショーのフィナーレ一人降りってジャッキー(ミーマイBパターン)除けば初めて? 「ミーマイ」はかなり特別だし(階段降りも銀橋の並び順も配役重視)、今回はあくまで全ツだけど、ね。
とはいえ、さすがに気になって、見た後でちょっとだけ過去の事例をお勉強しました。彼女の今の位置付けが正直よくわからないのですが(特に前の大劇場作品「ミーマイ」は番手がはっきりしていなかったから)、3番目に彼女が降りるにしても、必ずしも羽根がついてなくてもよかったはずだったし(ましてや雉羽根をや)、それなのに3番手羽根プラス雉羽根とはこれまた出血大サービス(?)。よかったね、と素直に祝福したい。しかし、そもそも全ツの羽根って基準があってないようなものみたいだし、あまり一喜一憂するのもどうか……と自分を抑えております(うーん、どうどう←鼻息荒い馬にささやくようにお願いします)。
いったい鳳月杏はどこまで行くのでしょう……。
一ファンとしては、常に新しい姿を見せてくれる彼女をただ追いかけていくだけなんですが。

September 11, 2016

"危険な関係"の人々

花組 全国ツアー公演「仮面のロマネスク」「Melodia」-2
 
「仮面のロマネスク」出演者箇条書き編
 
明日海りお(ヴァルモン)……前項でだいたい書きましたが、品があるから何をやってもいやらしくならないのがいいですね。あと、細かいところで言えば、ヴァルモンのかつらはなぜかラーメンというかワカメ風という伝統があったようですが、みりお君はあまりワカメっぽくないふつうのウェーブでよかった。ただ、最後の軍服がブカブカだったのが気になりました。梅田で見たときは「今からでも少し詰められないのかな」などと考えてしまいましたよ。特に袖が気になりましたが、袖口が別布になっているから詰めにくいのかな、とか考えちゃったり。だって二の腕のところとか袖がペコンとへこんでいるんですもの。パンツもかなりゆったりめですよね。最近細身がはやっているから余計ブカブカ感あり……。
      
花乃まりあ(メルトゥイユ夫人)……こちらも前項でだいたい書きましたが、賢くて残忍、でも実は情も深い奥方様が似合います。深紅のドレスの「お友達はいやだ」ソングでの、片手を前に出して相手(ヴァルモン)を制するポーズが、なんかものすごく印象的(たぶんこの振りは前からあったんでしょうけど)。力強いからかな。ちょっと癖のある声だと思いますが、その声も今回は落ち着きのある女性、ということであまり違和感なかったですね。歌はちょっと高い声が弱かったかもしれないけど、地声のところはよかったと思います。(追記:彼女のころ「色気」があるとつぶやいている方がいらっしゃっていて、「なるほど、彼女のメルトゥイユがいいのはそのせいか」とちょっと目から鱗。確かに、彼女にはちょっとコケティッシュなところがあって、そのせいで典型的な「宝塚の娘役」っぽい役が似合わないと言われるのかな、と思うけど、このメルトゥイユにはむしろいい効果を生んでいるのでは)
   
芹香斗亜(ダンスニー)……ああ、この役ってこういうことだったのか、と思いました。キキちゃんのちょっとヘタレのおぼっちゃま感がぴったり。初演で轟悠、再演で北翔海莉がやっていますが、今回の芹香斗亜が3人のなかでは一番はまり役なのでは。いや、この役難しいと思うんです。ちょっと損な役回りというか。ヘタをするとただのかっこ悪い役に見えてしまう。その点、キキちゃんのその持ち味で、からかわれてもあまりいたたまれない感じにならず、いやーな感じが薄まったのではないかと。
 さらにいえば、最後に、メルトゥイユ邸でヴァルモンに踏み込まれ、真実の愛に目覚めるときは、もっとかっこよく、メルトゥイユを振って颯爽とセシルへの愛を語ったら男が上がってもっとよかったんじゃないかな、と思いましたがいかがでしょう。つまり、途中まではダンス二ーは2人に遊ばれているわけですが、最後には彼がヴァルモン&メルトゥイユに勝った、というところをはっきり見せた方がいいのではないかと。やはり今のままだとまだちょっと情けない役に見えるので。
(それにしても、初演の轟悠サマはどう考えてもニンじゃないよな……。それも修行のうちだったのでしょうか?)
 
鳳月杏(ジェルクール)……この役、こんなに出番少なかったんでしたっけ。知ってはいたつもりでしたが、初回にけっこう呆然……(笑)。渋い軍人、ちょっと年上でシニカルな遊び人、という役はぴったりでした。メッシュもすてき。というか意外と宝塚でメッシュってあまり見ないような気がするんですがそうでもないですか? ああ、もちろんお髭も素敵です。まあ出番が少ないのはしょうがないとして、個人的には、もう少しいけすかない感じを出してもよかったのかな、と。あるいは女に手が早い感じとか。メルトゥイユが恋人にするほどのイイ男で、彼女の恨みを買うほどのひどい奴なんだから……。もちろん基本的には久々のちょっと黒くて大人の役、大変うれしく堪能させていただいたんですけどね。しかし、よく考えると花組に来てからはこの手の役は初めてか……!
(でもって、彼女に関してはショーでの位置がとんでもなく良くなっていて、そっちのほうが重要と言えば重要です。その話はいずれ)
 
トゥールベル夫人(仙名彩世)……彼女がちゃんとよろめかないと、この話が進んでいかないところがあるから、この役、重要度で言ったら男役2番手のダンス二ーより上ですよね。トップコンビの次。配役を聞いたときは、彼女がトゥールベル夫人ってちょっとニンじゃないかな、と思ったけれど、彼女はやはり何をやらせても上手い。当然のことながらミーマイのマリアからは若返っていたし、美しかった。非常に真面目で堅そうなところが強く出ていたのが、彼女らしさかな。修道院の学級委員(そんなものあるのか知りませんが)でそのまま嫁に行った堅い女性が初めての経験に動揺する、という感じ。ただ、ダンスがうますぎて(?)、ちょっとぶんぶん踊りすぎ? と思うところがありましたが(フラれたあとの幻想ダンスのところとか)、あれはそういう演出なんでしょうか……。
 ただ、たぶんこの役は深窓の令嬢がそのまま成長したような、一見か弱い女性として演じるのが王道じゃないかな、と思うので、別の娘役がやったところも見てみたいな、と思いました。今の花組だとだれなのかな……。庶民キャラと思われているような気がしますがミーマイのマリアでも健闘した桜咲彩花? あるいは城妃美伶かな?
  
そのほか全国ツアーで活躍する下級生たち……
 
若手で目立ったのは、三馬鹿トリオとも呼ばれる(笑)、召使い3人組のうちの男役2人、研4の帆純まひろ、研3の聖乃あすか。もはや若手とは言えないけど若々しい研9の華雅りりかも加えた3人組は、やや古臭いベタなお笑い担当(しかもご当地アドリブもあり)。なかなか下級生には難しいかな、というところではありますが、さわやかにがんばっていましたね。帆純まひろ、聖乃あすかの2人はショーでも大活躍なわけですが、芝居のこの「三馬鹿トリオ」のシーンは、全国のみなさんに「花組若手スター候補」を紹介する場面ということなのかな(だからちょっと古臭くても我慢しろ、というわけではないでしょうが)。2人とも美形だから、将来楽しみですね。聖乃くんはちょっとまだセリフの声が通らないかな。その点では一年上の帆純君のほうが口跡がよかったかも。
それから、冒頭の夜会のシーンで貴族を演じる若手男役が歌い継ぐところがありましたが、けっこうみんな上手かったような(だいたい一人ぐらいビミョーな人がいるもんじゃないですか)。いままで私が知らなかった下級生を挙げると……セリフ、歌ともに安定していて「おお? これだれ?」と思ったのは、澄月菜音くんかな。あと、ほんのワンフレーズだけだったけど千幸あき君の歌が上手いのはよくわかりました。
 そうそう、翼杏寿くんもセリフ明瞭だし、存在感がありました。これから別箱の芝居で活躍しそう(もちろん新公も)。それから、「スターダム」で芝居上手だとは認識していたけど、一之瀬航季くん! セリフは少ししかありませんでしたが、メイク顔が男役らしくしっかりしているし(ちょっとみわっちこと愛音羽麗さん系の美形)、表情がキレイ。華があって眼をひきますね。
そういうわけで、全国ツアーは、本公演と比べて人数が少ない分、役付き等に変動があって、生徒たちの意外な面を発見したり、大劇場ではセリフもなかった下級生を発見したりする楽しみがあるんですよね。(と次の項、「鳳月杏はどこまで行くのだろう」(あくまで仮題)への布石を打つ)

September 05, 2016

初演の呪縛は解けた?

花組 全国ツアー公演「仮面のロマネスク」「Melodia」-1
 全国ツアーのスタート、梅田芸術劇場公演に行ってきました。
「仮面のロマネスク」いいですね。1997年の初演が伝説になっていて(私は映像でしか見ていません)、2012年の宙組は、祐飛くんの鬼畜っぷりと(キャラはぴったり)、すみ花ちゃんの(キャラは正反対だがそんなのものともしない)演技力にしびれてた記憶がありましたが、今回は、もう少しフラットに、「これ、いい演目だな。ぜひこれからも宝塚で上演してほしい」と思いました。
 明日海りおは、かわいいイメージが強いかもしれないけれど、「春の雪」もそうだったように、こういうこじらせ貴公子が似合いますね。そして声がいい。低くてよく通る声が本当に二枚目! どちらかというと少年のようなかわいらしいお顔なのに、あの低い声。彼女はまさに男役になるために生まれたきたのかもしれない……とシミジミ思いました。割と朗々と歌うところが多かったからかな。この作品ちょっと古風で劇的な音楽がまた素敵ですよね。
 彼女の演じるヴァルモンは、女をもて遊ぶとんでもない男ではあるんですが、「彼も面倒な貴族社会のなかで、時代の波にもまれながら、彼なりに必死に泳いできたんだな」と思わせるものがあったので、嫌な感じはなかったです。最後にはちゃんと罰を受け、仮面を脱ぎ捨てて彼なりに義を通す、といういい場面もありますしね(このへんは柴田先生が原作から大幅改変したところですかね)。演じる明日海りおの貴公子キャラのせいもあるでしょうが。何をやっても下品にならないといいますか。彼女はこういう少し時代がかった作品が似合いますよね。
 そして花乃まりあ。彼女のメルトゥイユが……期待以上によかった。この役って初演の花總まり様が伝説化しすぎていたような気がするんですよ。いや、彼女のメルトゥイユは本当に気高く賢く美しく冷たく……素晴らしかったと思います。しかし、エリザベートと同様、メルトゥイユだって演じる娘役によっていろいろあっていいわけなんだし……ということで、今回のメルトゥイユを見て、もうお花様の呪縛から抜けだしてもいいってことだよね、と思いました。花乃まりあのメルトゥイユは、なんというか、地に足がついているメルトゥイユでした。そしてちょっと貫禄のある、なんとなく、ヴァルモンよりは少し年上かな、という感じがしました。経験豊富そうな……。ああ、でも決して上品でないとかそういうことではありません。美しい貴族のご婦人でした。ドレスも似合っていたと思います(特に濃い色の)。デコルテもきれい。髪型もよかったし……。彼女は庶民キャラの人と思われていたようにも思いますが、決してそんなことはなかった、と。このメルトゥイユが、貴族とはいえただのお嬢様ではなく、運命を自分で切り開いていく、芯のある女性だったから彼女に合っていたという面はあるかもしれません。
 この二人、確かにやっていることはひどいけれど、この作品を通して、ちゃんと彼らが貴族社会の中で、仮面を被って生きていかざるを得なかった、という悲しさが伝わってくるんですよね。二人とも傷つくのが怖い人一倍ピュアな人間だし。だから主人公たちに感情移入できる。うーん、すばらしい作品だな。やはり主人公に感情移入できないとね。いまさら言うことでもないですが、柴田先生偉大なり。
 さらに言えば、さきほど書いたように音楽もいいし、仮面舞踏会のシーンなんてとても象徴的で美しいし……。
 初演から15年も再演されなかったのは、やっぱり「不道徳」(原作のラクロ「危険な関係」は発表後発禁になっているそうで)というか、ちょっとお子様向きではない話だからかな……。しかし、子供はわからないなりに雰囲気を楽しんでいただくということで、これからもぜひ再演してほしい作品だな、と思いました。なんというか、いま劇場で鑑賞するのにじゅうぶん耐えうる美学があると思います。古典ですが古くささは……少なくとも主人公二人の心理描写等では感じませんでした。
 初演の呪縛が解けてみれば、この作品、誰がやっても大丈夫とは言いませんが、すごく役者を選ぶかというとそうでもないのでは? 主演男役はこれで新しい扉が開きそうだし、主演娘役は強い女性が演じられればいけるんじゃないかな……。
(とはいえ、宝塚初心者が見ることも多い全国ツアーに向いているかというとちょっと微妙かな。大劇場でもいいけど、そうするとちょっと役が少ないのだろうか……。全ツ規模では、今回下級生まで役がついていて、なんて役が多くてすばらしい作品だ、と思ったけど。と、すると梅芸とか中日向きですかね?)
 みりおくんも、「Ernest in Love」「Me and My Girl」とハッピーミュージカルが続いたけれど、今度は一変、というようなことをどこかで言っていたと思いますが、確かに、ここでぐっとアダルトな作品を選んでくれて(選んだのは劇団??)本当にファンとしては有り難い。そして、「金色の砂漠」が大変楽しみになりました。

August 09, 2016

アーヴィングはあれでいいのか?

雪組 赤坂ACTシアター 梅田芸術劇場大ホール公演「ローマの休日」-2

 でもって、ここからはちょっと辛口というか文句。ネタバレもあります。
 この作品、原作映画の良さにかなり助けられているな、というか、かなりよっかかっていると言ってもいい。だって観客が笑ったり感動したりしているところの大部分がもともと映画にあるシーンなんですよ。
 えーっと主に役の面から映画と宝塚版の違いを簡単に説明すると、映画は役が少ないというか、アン(咲妃みゆ)とジョー(早霧せいな)とアーヴィング(カメラマン。彩凪翔と月城かなとのダブルキャスト)以外はほとんど役がない。だから宝塚で上演するにあたり、役を増やして膨らませています。映画にはちらっとしか登場しない美容師は出番を大幅に増やす(マリオ。月城かなとと彩凪翔のダブル)。あとは……ジョーの上司である新聞社の支局長(鳳翔大)なんて映画には全く出てこなかったような気がしたけど、一応出てきたみたい。でもあんなに支局のシーンはたくさんなかったと思う。市場の人やらウェイター、警察官たちもちらっと出てきたかもしれないけど、あんなにセリフや芝居はたくさんなかったはず。そうそう、アーヴィングの恋人フランチェスカ(星乃あんり)は映画には出てこなかったような……違ったかな。
 で、観客が笑っていたところは、自己陶酔系美容師マリオがらみのところを抜かせば、ほとんどが原作にあったシーンでした。あと、私が何度見ても泣いてしまう記者会見のアン王女の「ローマです。ローマです」も映画からだし……。ああ、ただし、その前、アン王女が泊まっていた屋敷?(迎賓館?)に帰って、家臣たち(?)に「いえ、もう大丈夫です」的なことを言うところは映画とは違ったような気がする。あそこは咲妃みゆの演技に泣いたな……。うん。
 宝塚版になってすごく出番が増えた役の一つが支局長なんですが、それがあまりうまくいっていない。なかでも一番ひどいと思ったのが、アン王女と別れたジョーのアパートに支局長が一人でやってくるくだり。あれ、いらなくないですかね。三度目、四度目の観劇のときには、あのシーンになると早送りしたくなりました。だって、まず、アン王女の写真があるんじゃないかとかぎつけてきた支局長が写真の入った封筒に気づくと、ジョーは支局長にそれを渡してしまうんですよ(信じられないその1)。そしてジョーは、渡したあとで、「それはフランチェスカのヌード写真ですけどね」(大意)とウソを言ってそんなものどうでもいいようなそぶりをするんだけど、そう言われた支局長はなんと写真を封筒から出さずに返しちゃうんですよ(信じられないその2)。封筒には封もしてないのに。
 些細なことかもしれないけど、毎回そのシーンを見るたびにもやもやしていました。
 でもってさらに問題なのは(ここから先の話は私が月城かなとファンということをご理解の上お読みください)、2番手役のアーヴィング(カメラマン)がどうもしどころがない……(その代わり、3番手のマリオ(美容師)が振り切れたキャラで笑いがとれてかなり美味しいんですが)。これって、設計ミスなんじゃ?と思ったわけですよ。
 つまりですね。私は月城かなと君好きで、関東に住んでいます。まず「ローマの休日」で彩凪翔くんと月城くんが役替りをやると知らされた。役替りは公演期間の長い梅田劇場のみで、月城君は、中日劇場と赤坂ACTシアターで彩凪翔君のやるアーヴィング(カメラマン)の役をやると。彩凪君は月城君より上級生だし、組内番手も上だから、当然、アーヴィングは公演2番手役、月城君が東京でやるマリオ(美容師)が公演3番手役でしょう。だったらこれは2番手役をやる梅田芸術劇場に行くしかない! そう、遠征しなきゃ!
 で、「私のローマ本番は梅田だわ。8月だわ」と思っていたのですが、その前に、まず東京(赤坂ACT)で月城マリオを見たら、これが出番もかなり多く、しかも笑いがとれて美味しい役だったのはうれしい誤算でした。オーバーアクションのコミックキャラを生き生きと演じる月城かなと君、イケメンだけど、ちょっと気持ち悪いイタリア男を演じる月城君しかもwith髭!!最初は本人のキャラに合わない役で大丈夫かな、とも思ったのですが、やはりそこは芝居巧者。けっこう振り切れて演じていました。いやー、「るろ剣」の蒼紫様のあとに、こんな180度違う役が来て、よかった。というわけでマリオは大変よかったのですが、他方で、彩凪君がやっていたアーヴィングは出番多いけど、受け身演技が多いし、ちょっと存在感が薄いかも……と気づいたのです。むむ。やな予感。
 で、いよいよ梅芸Bパターンで遠征したわけです。そこで月城君演じるアーヴィングを見た結論。アーヴィング、やっぱり存在感薄い。描き込み不足。あれは本人たちのせいというより、やっぱり脚本と演出のせいなんじゃないかな。そりゃ、好きなジェンヌさんだから見ていれば楽しいですよ。なんといっても出番は多いし、無精ひげっぽいあごひげも素敵! 歌も、マリオのときのようなコミックソングではなく、割と正統派なものを堪能できるし。でも、やっぱりこの役、あまり美味しくないということに気づいてしまったのです。えー、なんで!? 2番手の役に役替りだからと勇んで遠征したのに!
 もしかして、2番手3番手と考えるのがおかしいのかな、そういう順番をとっぱらったところでの配役だったのかな、とも思いました。あるいは、敢えての月城かなとアゲなのか? でもね……。落ちついて見てみると、アーヴィング、出番は多いし、一応ソロで歌うところも2か所はある(あれ、3か所?)。深読みすることはなくて、やっぱり2番手役として作られていると思います。
 公演2番手が主演者の相棒だったら、もっと男同士の友情がっつりいってほしかった。アーヴィングはジョーがアンを愛してしまったということを、もっとはっきりと気づいたほうがよかったと思うし、そのあとでジョーにはっきり(「おまえ……まさかアーニャのことを」とか)言ったほうがよかったんじゃないかと。えーっと私の理解では、アーヴィングは支局長とアパートでゴチャゴチャやったあとにやっと気づいて、そのあと舞台に残って気づいたことそ示唆するような歌を一曲歌っていたような気がするんですが(4回目の観劇でやっと歌詞の意味をとって、そうなのかな、と)、違ったかな。
 →あ、プログラムにも、「アーヴィングはジョーが心から王女を愛していることを悟った」って書いてあった。うーん、そこははっきりセリフにしたほうがいいと思いました。そこで気障に慰めるとかさ。ジョーもカッコよく返していただいて。
 というわけで、残念なところがいろいろあるんですよ。アーヴィングに関しては彩凪翔くんも、お気の毒でした。いや、ナギショーはこっちが本役だから余計にね。
 あと、全体的に残念だったのは、もともと実力のある人特に芝居心のあるひとはそれなりにやっていたけど、苦手な部分のある人は割とそのまま出ちゃったように思えたところ。つまり、みゆちゃんとか月城くんとか、奏乃はると先輩とか久城あす君とか真條まから君とか、あ、あと陽向春輝くんもよかったと思うけど、例えば彩凪翔君は、「るろ剣」の武田観柳で場をさらい、殻を破ったか、と思わせるものがあったのに、なんかまた殻をかぶってしまったようなところがありました。あと、ちょっとドタバタが過ぎちゃった人も多かった。これは演出の問題なんだろうけど。たとえば真那春人の将軍。これもね……。せっかく見せ場があったけど(スパイたちと踊るところ)、ソロ歌が致命的によくなかった。彼女、歌はそんなに得意じゃないけど、せめてもう少し音程を上げたらなんとかなったのでは。それと、あのオーバーアクションな子供っぽい将軍の作りは……どうかと思いました。わたし、基本的にまなはるファンなんですよ。「凍てついた明日」のころから。しかし、ファンの私でもなんか残念だったです。
 たとえば、真條まから君のお医者さんが来てまなはるの将軍が注射針見て倒れるところ、まなはるの芝居と、真條くんの芝居のテイストが全然違った。真條君が非常に誠実そうなお医者さんを丁寧に演じている横で漫画のような動きをするまなはる。こういうのを見ていると、どういう演出意図なのかなと思ってしまいます。けっこう本人に任せている?
 彩凪翔君や真那春人君のうまくはまったお芝居を見たことがあるからこそ、なんとかできたはずだ、と思ってしまいました。あ、あと大ちゃん(鳳翔大)も。彼女が技術的にやや苦手なことの多いジェンヌだということは知っています。だけど、そうならそれで、もう少し良さを引き出して欠点をカバーする出し方があったんじゃないかな、と。
 そして、役の設定がどうなの、という意味では実は一番損をしていたのではないかと思うのは、ジョー・ブラッドレーを演じたチギちゃん(早霧せいな)かも。なんか、変に……皮肉屋といえばまだ聞こえがいいけど、小ずるい感じになっていませんでしたか。それ、違いません? ハリウッド映画のヒーローとして。しかも、アメリカに帰りたくて腐っている、今の生活に嫌気がさしているジャーナリスト、って設定、観客の共感得にくいのでは? 映画にもアメリカ帰りたい、というくだりはあったのかもしれませんが(思い出せないけど)、あそこまでしつこく「アメリカに帰る」を真顔で訴えてなかったと思います。最初はたいくつそうな王女の会見とか興味なかったけど、いざ王女が自分のアパートにいると知ったら、スクープを常にねらうジャーナリストとしての本能が蘇り、ってことでよかったんじゃないかな。私、チギちゃんはもともと好きです。最近だと「ルパン」も「星逢一夜」も「るろ剣」もすごくよかったと思うし、芝居はうまい人だと思う。そういう芝居の期待値の高さでいくと、今回のジョー・ブラッドレーはもの足りませんでしたね。 まあ、彼女が得意とするのは若者で、今回のようなちょっと渋いオジさんは挑戦だったのかもしれないけど。それにしても、役のつくり方が違う方向に行っているのではないか、と。それから、役作りと関係あるのかないのかわからないけれど、彼女のセリフ、抑揚が変で気になりました。特に疑問形で語尾があがるときとか、「アーヴィング」と呼びかけるときとか。どうなんですか。あれ。ちょっと「ルパン三世」入ってました。ルパンはアニメの(山田康雄の)声のイメージをある程度踏襲してのあの独特の口調だと思っていたんですが、なぜ、いまここで、ルパンの抑揚? (どうしてトップさんはセリフに抑揚がついてきちゃうの!?)
 チギちゃんの芝居にはかなり信頼を置いていただけに……。
 でも、同じ生徒さんでも、こうやって作品によってよかったり今一つだったりするのを目の当たりにすると(もちろん本人に合う合わないはあるとは思うけど)、やっぱり演出家の力って大きいんですね。(イケコ……)

August 08, 2016

「ローマの休日」はやっぱり名作!

雪組 赤坂ACTシアター 梅田芸術劇場大ホール公演「ローマの休日」-1

書くと言ってドン・ジュアンの出演者別感想書いていない……。うううう。い、いつか……。
同じ雪組の「ローマの休日」Aパターン、Bパターン見ました。これはこれでいろいろ考えるところが。
 
やっぱりなんといっても原作がいい。宝塚版の観客の多くが見ていて、おそらく好きだと思われる名作映画「ローマの休日」。その映画の良さがそのまま舞台にも出ている。そして映画を楽しんだ記憶が芝居の好印象にもつながっているよね。私たちは宝塚の舞台の「ローマの休日」を見ているけど、その後ろにオードリー・ヘップバーンが見える、というか。
ちょうど脚本家のダルトン・トランボが主人公の映画が公開されているけど、その彼の書いた「ローマの休日」の脚本(まあ、映画化されるときに手直しは入ったみたいですが)がよくできているってことに尽きますよね。脱走した王女と出会った人たち(おもにジョー)のとんちんかんなやりとりは微笑ましいし、最後の記者会見での「ローマです。ローマです」のシーンはわかっているけど毎回ぐっと来てしまう。そして、突然「記者の方とあいさつを」と言いだすところもしゃれている。このユーモア。
そして、咲妃みゆの演技。オードリー・ヘップバーンと彼女はかなり持ち味が違う。しかし、彼女が、アン王女の浮世離れしたところやかわいらしさ、そして成長ぶりをしっかりと演じたことで、映画の良さが舞台でも生きたと思う。彼女はオードリーじゃないんだから、なぞっていただけではあそこまでの感動はなかったと思う。やっぱりあの作品はアン王女がカギだよね。
 
そもそも、「ローマの休日」のようなちょっとクラシックな洋画って、現代から見ると「古き良き時代」というか、かなりおとぎ話っぽくて、例えば、今映画にしても時代錯誤にしか見えないんじゃないかと思うけど(えーっと確か一回再映画化されたけど全然ヒットしなかった記憶が)、宝塚はその点、ちょっと時代を超えているから(笑)、違和感がないというかけっこう親和性が高いと思う。
初めて宝塚見る人にも楽しめる作品になっていたんじゃないでしょうか。
 
しかし……。つづく。(今度こそ絶対つづく)

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